懐かしのトラッカーを思い出す。スクランブラースタイルのホンダ「CL250」
&GP / 2023年10月8日 7時0分
懐かしのトラッカーを思い出す。スクランブラースタイルのホンダ「CL250」
今年3月のモーターサイクルショーの舞台でお披露目され、大きな注目を集めたホンダの「CL250」。5月に発売されてからも、わずか1ヶ月で年間販売計画台数の半分にあたる3500台を受注するなど高い人気を集めています。近年のトレンドのひとつである“スクランブラー”スタイルが支持されるポイントですが、実際の乗り味に仕上がっているのか。実際に試乗して確かめてみました。
■スクランブラーの文脈に沿ったデザイン
「CL250」のベースとなっているのは、同じくホンダの人気モデルである「レブル250」。5年連続でこのクラスの販売台数No.1となっているモデルですが、エンジンやフレームなどはこの「レブル250」と共有しています。「CL250」はアップタイプのマフラーを採用するなど、未舗装路を走るスクランブラーのスタイルとなっているのが特徴です。
スクランブラーとは、かつてオフロード専用モデルがなかった時代に、ロードモデルをベースにオフロード向けにアレンジされたマシンのこと。アップタイプのマフラーや幅広のハンドル、フロントフォークを飛び石などから守る蛇腹タイプのフォークガードなどが特徴で、「CL250」の装備はスクランブラーの文脈に沿ったものです。
ホイール径はフロント19インチ、リア17インチで、ベースである「レブル250」に比べて大径化され、凹凸の多い路面に対応しています。装着されるタイヤも未舗装路にも対応できるタイプのもの。最低地上高も155mmと「レブル250」よりも20mm以上高められており、それに伴ってシート高も790mmとレブルより100mm高くなっています。
エンジンは水冷の単気筒DOHC。最高出力は24PS、最大トルクは23Nmで、低回転から高回転域までフラットなトルクを発生し、扱いやすい特性となっているのは「レブル250」と同様です。アシスト&スリッパークラッチも装備され、軽い操作感のクラッチレバーも扱いやすさに寄与しています。
ヘッドライトは小ぶりの丸型でクラシカルなデザイン。LEDを採用しているため、明るさは十分でモダンなイメージとも融合しています。
メーターも丸型ですが、こちらも表示はデジタルでシフトインジケーターなどを1つに集約。ただ、残念ながらタコメーターは装備されていません。
■トラッカーブーム世代にも乗ってもらいたいマシン
実際に車体にまたがってみると、790mmというシート高の数値から想像するより足付き性は良好。車重が172kgと軽めでスリムなことから、片足で支えても不安感はありません。幅の広いハンドルも手を伸ばした位置にグリップがあり、自然とリラックスしたライディングポジションがとれます。
エンジンは低回転域からトルクフルで、扱いやすいだけでなく出足の加速はスペック値から想像するより俊敏です。車体が軽量なこともあって、街中だけでなくワインディングでもキビキビした走りが楽しめます。排気音も元気が良く、高い位置に排気口があることもあって走行中は歯切れの良いサウンドが耳に届き、気分を盛り上げてくれます。
高速道路を走っても、車体は非常に安定していて100km/h程度の巡航であれば全く不安はありません。この辺りは排気量が倍ある兄弟モデルの「CL500」と車体を共有していることのメリットでしょう。峠道でも車体剛性がエンジンパワーに勝っているため、安心してペースを上げられます。
ちょっとした未舗装路にも持ち込んでみましたが、砂利敷きの林道くらいなら大きな不安なく走破することができました。大きめのホイール径にホイールベース、そして幅広のハンドルのおかげで荒れた路面でも安定して走行できます。トルクフルな単気筒エンジンもオフロード走行との相性が良いように感じました。
とはいえ、このマシンの魅力が一番味わえるのはオンロード。スクランブラー的なルックスではありますが、乗ってみると街乗りやツーリングでの快適性と軽快さが光ります。乗っていて思い出したのは、2000年代の“トラッカー”ブームの頃に人気だったホンダ「FTR」やヤマハ「TW200」といったマシン。スリムで軽量な車体に、幅の広いハンドルを装備し、オフロードなど走らなくても街乗りが楽しいバイクでした。その時代を知るライダーなら、このマシンの魅力が理解しやすいはず。気負わずに乗れる手軽さに、「こういうバイクがほしかった」と感じるライダーは多いはずです。
>> ホンダ「CL250」
<取材・文/増谷茂樹>
増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。
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