【ボルボ V60 ポールスター試乗】サーキット直結ワゴン。その走りは想像を超えていた!
&GP / 2016年9月16日 20時0分
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【ボルボ V60 ポールスター試乗】サーキット直結ワゴン。その走りは想像を超えていた!
ボルボといえば、「四角くて、とにかく頑丈で、まあ、運転がさして楽しいわけではないけれど…」といったフレーズが定番でしたが、それもすっかり“昔語り”になってしまったようです。
何しろ今のボルボときたら、ニューモデルの日本導入に当たり、箱根ターンパイクを借り切って「存分にスポーツ走行を堪能してください!」と企画するくらいですから…。
そんな箱根でドライブしたのは、最新の限定モデル「S60ポールスター」と「V60ポールスター」。
ポールスターといえばご存じの方も多いかと思いますが、現在ボルボが展開するハイパフォーマンスブランド。BMWの「M」や、メルセデス・ベンツの「AMG」と同じようなポジションといえば、より分かりやすいでしょうか。
今回上陸したS60/V60ポールスターは、ポールスターの技術陣がエンジン、足まわりほかをトータルで仕上げた、入魂のコンプリートモデル。そりゃ、試乗会にも気合いが入るというものです!
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■インテリアは大人向けの上質な仕立て
北欧随一のハンサムカーを用いた60系のスペシャルバージョンは、従来の3リッター直6ターボ(350馬力/51.0kg-m)に代わり、今回から、新世代の2リッター直4“Drive-E”ユニットを搭載します。
ターボチャージャーの大型化、スーパーチャージャーの強化、吸排気系のチューンに、コンロッド、カムまで変更してハイブースト化を実現。最高出力367馬力(T6 AWD Rデザイン比で61馬力アップ)、最大トルク47.9kg-m(同7.1kg-mアップ)を得ています。
エンジンアウトプットの増大に合わせ、燃料ポンプも大容量化しするという抜け目のなさ…と聞くと、燃費が心配になるかもしれませんが、カタログ燃費は、S60ポールスターが12.2(同13.6)km/L、V60ポールスターが11.2(同12.8)km/Lですから、まずまず許容範囲に収めています。
新しいエンジンは、アイシン製の8速ATと組み合わされ、4輪を駆動します。FF(前輪駆動)をベースとしたAWDシステムは、電子制御多版クラッチを用いて、後輪へ常にわずかなトルクを流すことで応答性を上げています。当然ながら、駆動力の前後配分にも、ポールスターのスパイスが利いています。より積極的に後輪にトルクを送ることで、さらにスポーティな走りを狙っているのです。
そのほか、ソフトウェアチューンが得意なポールスターらしく、ステアリングの電動アシストも変更され、また、ドライブモードには、通常の「SPORT」に加え、「SPORT+」が設定されました。
価格は、S60ポールスターが839万円。V60ポールスターが859万円です。日本への割り当て台数は、セダンのS60ポールスターがわずか35台(青10台、白7台、黒18台)。ワゴンのV60ポールスターが65台(青20台、白15台、黒30台)。両車合わせても100台となります。
さっそく、V60ポールスターに乗ってみましょう。フロントバンパー下部のリップスポイラーやリアバンパー下部のディフューザー、そして、大型のルーフエンドスポイラーがスポーツモデルであることを強調します。これらのパーツはすべて、ボルボの風洞を使って開発されたものだそうで、ワゴンのルーフスポイラーは、Rデザインのそれより、22kg大きいダウンフォースを得られるのだとか。
ドアを開ければ、ヌバックとレザーを用いたコンビネーションシートが待っています。座面、背もたれとも、しっかりしたサイドサポートを備えていますが、サイズ自体には余裕があって、恰幅のいい人が厚着して乗っても大丈夫そうです。インテリアは、全体に黒とシルバーでまとめられたスポーティなもので、ポールスターらしい、淡いブルーがアクセントカラーとして使われます。
S60/V60ポールスターは、いうまでもなく足まわりにも手が入れられており、Rデザイン比でスプリングは80%、スタビライザーは同じく15%も強化されています。「さぞやハードだろうな」と覚悟して走り始めたのですが、意外や、ゴツゴツ感は皆無。むしろ「滑らか!」と形容できる乗り心地です。
専用デザインの20インチアルミホイールに巻かれるタイヤは、高いスポーツ性能がジマンのミシュラン「パイロットスーパースポーツ」。245/35R20と、薄く大きな径のタイヤです。絶対的にはやや硬めながら、ひと昔前では考えられなかったスムーズな乗り味を提供してくれます。
車体の揺動を抑えるショックアブソーバーは、ポールスターとオーリンズが共同開発したもの。贅沢なデュアルフロータイプで、路面の小さな凹凸をいなす機能を備えます。真円性の高いミシュランタイヤと併せ、効果的に路面からのノイズを除去します。
貸し切りのクローズドコースでいざ、スロットルペダルを床まで踏み込みフラットアウトを試してみると、1速で約50km/h、2速で約90km/h、3速で早くも約140km/hに達します。タコメーターの針は、1速→2速の時は4800回転、2速→3速の時は4600回転と、キレイにトルクバンド(3100〜5100回転)に落ち、息つく暇もなくスペシャルワゴンを加速させます。
資料によると、V60ポールスターの0-100km/h加速は4.8秒(S60ポールスターは4.7秒)。これは、6気筒時代に比べ、0.2秒速い数値です!
ブレーキは、フロントに強力な6ピストンキャリパーが奢られました。ベンチレーテッドディスクは、スリット入り。十分なストッピングパワーが得られます。
ドライブモードを「SPORT+」に設定すると、ギヤチェンジがこれまで以上に素早くなり、シフトダウンでは華やかなエグゾーストノートが弾けます。コーナリング中は、しっかりギヤをホールドしてくれるのもいいですね。
少しばかり調子に乗ってトバすと、路面が悪いセクションではさすがにボディが跳ねることも。それでも「ドコに行っちゃうの!?」と不安になることがないのは、安定感あるAWDシステムのおかげでしょう。「やはりサーキットが出自だからな」と、ニヤリとする余裕さえあります。
■豪州を皮切りに今では世界中に展開
ポールスターは、ボルボ車をベースにしたレースカーを制作するモータースポーツチーム。1996年に、自身もレースに参加していたクリスチャン・ダールによって設立されました。当初からボルボと密に協力していて、ポールスターは、自身のファクトリーを持つ必要がなかったほど。なんと“ファブレス”チューナーだったんですね!
ポールスターの名を冠したモデルは、2014年にオーストラリアで100台が販売されたのを皮切りに、3年後には47カ国、1500台をセールスするまでに拡大しています。
日本では、ポールスターモデルがリリースされる前から、ボルボ公認の、いわゆるCPUチューンとして「ポールスター・パフォーマンス・パッケージ」が販売されてきました。同社の首脳によると、日本は「大排気量への信仰がなく」「ターボエンジンにも馴染みが深いので」「ポールスターモデルが受け入れられやすい」とのこと。もしかしたら、日本人は「限定モデルに弱い」というのも、重要なポイントとして挙げられるかも!?
世界的に伸び悩みがささやかれる自動車業界において、パフォーマンスカーは、急速に発展しているセグメントです。2015年には、ボルボがポールスターのパフォーマンス部門とネーミングを買収し、いよいよ本格的にハイパフォーマンスカー市場に乗り出してきました。
一方、ポールスターのレーシング部門は、買収を機に「シアン・レーシング」と名前を変え、これまでどおり、ボルボのモータースポーツ活動に従事しています。2016年には「ポールスター・シアン・レーシング」として、“ハコ”のレースの最高峰「FIA WTCC(世界ツーリングカー選手権)」に参戦。ツインリンクもてぎで開催された先の第9戦日本ラウンドでは、ネストール・シロラミ駆る「ボルボS60」が5位、テッド・ビョークの7位を獲得しました。
白熱したレースを観戦しながら、「最近のボルボのレースカーはカッコいいねぇ。かつての240ターボは“フライング・ブリック”と呼ばれてな…」と、昔語りした人が、いたとかいないとか…。
<SPECIFICATIONS>
☆V60ポールスター
ボディサイズ:L4635×W1865×H1480mm
車重:1790kg
駆動方式:4WD
エンジン:1968cc 直列4気筒 DOHC ターボ&スーパーチャージド
トランスミッション:8AT
最高出力:367馬力/6000回転
最大トルク:47.9kg-m/3100〜5100回転
価格:859万円
(文&写真/ダン・アオキ)
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