ボルボのBEV「EX30」は、シンプルなグッドデザインとナチュラルな感覚で乗れる走り心地
&GP / 2023年11月12日 21時0分
ボルボのBEV「EX30」は、シンプルなグッドデザインとナチュラルな感覚で乗れる走り心地
EVはだんだん身近な存在になりつつあるようです。好例が、ボルボ「EX30」。全長4.2mで全高1.55mのサイズといい、乗り味といい、使いやすさに感心させられるクルマなのです。
最初、2023年6月にミラノでお披露目され、日本にも8月とけっこう早いタイミングで登場。世界的に納車はまだとのことですが、私は10月にひと足先にバルセロナで試乗の機会をもらいました。
■シンプルだけれど力強いスタイリング
▲キックアップしたベルトライン(ウインドウ下のライン)と上についたテールランプで背髙感があるものの全高は1550mm
▲バッテリーが搭載されているのでテールゲートの下の見切り線はちょっと高め
魅力のひとつはスタイリング。シンプルだけれど力強いデザインです。なかでも特徴的なのはフロントマスクで、エンジン車のような大きなグリルはありません。
それでも、いわゆる「アイアンマーク」エンブレムと、「トールハンマー」と呼ばれるT字を横にした輪郭のヘッドランプという、従来のボルボ車に共通のアイコンは活かされています。
リアのコンビネーションランプも、一部のボルボ車で採用されているコの字型のモチーフ。前からでも後ろからでも、見る人が見れば、ボルボ車とわかるのでは。
▲「トールハンマー」と名づけられたヘッドランプは四角いピクセルを強調したようなデザインになった
実際、私がバルセロナをドライブしたところ、“おっ!”という顔でEX30を見つめる周囲のドライバーが何人もいました。シンプルで、ある意味、地味なルックスですが、けっこう目立ってました。
つまりグッドデザインなのでしょう。連想したのは、ボルボの生まれ故郷スウェーデンでなく、ドイツの電気製品「ブラウン」のデザインです。
とくに1960年代から70年代にかけてのブラウンの製品は、シンプルだけれど、それゆえにものすごく目を惹くデザイン。美とはなにかを考え抜いていた感があります。
スウェーデンのデザインも、もちろん、なかなかです。とくに日用品は、障がいを持った人でも使いやすく、かつ、身近に置いておくだけで生活が楽しくなるような明るさが、私の好きな点です。
最近では、伝統的な工芸品を要素を取り込んだデザインも多いようです。造型しかり、素材の質感を活かすコンセプトしかり。その点では、EX30にも共通点が見てとれます。
▲「シングルモーター」は後輪駆動でスムーズな走りが印象的
▲ボルボのエンブレムは健在
■用途別のラインナップと走り心地
▲角がついたようなステアリングホイールの形状がユニーク(写真の内装は「ブリーズ」)
EX30は、なによりクルマですから、造型も大事ですが、走りの質が重視されるプロダクトです。その点でも、いいレベルに達していると思いました。
私が感心しているのは、ラインナップです。
廉価版のバッテリーを使って市街地を中心に使う人向けの「シングルモーター」があり、高速移動も多い人向けのパワフルなバッテリーの「シングルモーター・エクステンデッドレンジ」があり、走りを重視するひと向けの「ツインモーター」があるというぐあい。
日本にはまずモーター1基をリアに搭載しての後輪駆動「シングルモーター・エクステンデッドレンジ」が導入されるので、私はこのモデルを中心に試乗しました。
ひと言でいって、スムーズ。過剰もなく不足もない、といった感じで、加速性はいいし、ハンドルを操舵したときのクルマの動きは気持ちいいし、乗り心地も快適。そして静かでした。
バルセロナ周辺の高速道路では交通の流れをリードできるし(最高速は180kmに設定されていますが、さすがにそこまでは…)、丘陵地帯のゆるやかなワインディングロードを走るのも、期待以上に楽しい体験でした。
「可能な限り、何も意識せずにドライブできるクルマにしたかったんです」。現地で話を聞いた、スウェーデン本社からきた開発担当者は、そう語っていました。その言葉どおりの出来だと私も同感。
サイズを小さめにしたのは、市街地での扱いやすさ、とボルボでは説明しています。いまは、大型SUVのEX90の登場が控えているし、その先には現行のXC60の後継にあたるようなモデルも出てくるかもしれません。
▲大型モニタースクリーン以外は、ウインドウのスイッチと、変速機とウインカー/ワイパーのレバーがあるのみ
▲ハーマンカードンの「サウンドバー」がダッシュボード奥にそなわりなかなか迫力のある再生音を聞かせてくれる
■ナチュラルな感覚で乗れるBEV
▲コラムから生えた変速機は扱いやすい
▲カップホルダーは引き出し式でその下にフタ付きスマホチャージャー
EX30は、ホイールベースも2.65mと比較的コンパクトですが、エンジンも燃料タンクも持たないためパッケージングがすぐれていて、後席に175cmの人が2人座っていられます。
なので、日本で使うのにも、よさそうです。満充電での走行可能距離は560km(WLTC)とボルボカージャパンでは発表しています。
高出力の急速充電器を使った場合、バッテリー残量10%から80%まで充電するのに要する時間は26.5分と発表されています。90kWとかだと、もう少し時間がかかるでしょう。
でもバッテリー残量が20%を切ると、充電をうながすサインとチャージングステーションの地図が出ると、発表時の本国のリリースにはあります。ぎりぎりまで充電しないというのも勇気の要ることなので、この警告のお世話になることはないかもしれませんが、ちょっとした安心材料です。
ボルボEX30に乗ると、海外ではこんなにナチュラルな感覚で乗れるBEVが登場してる事実に、改めて驚かさせるのです。
▲床面はほぼフラットで、後席も充分なスペースが確保されている
▲室内にあるドアのオープナーハンドルはシンプルで魅力的なデザイン
▲ボルボ車中最小のカーボンフットプリント温暖化ガス排出量)
▲荷室は70リッタークラスのスーツケース2つ搭載可能
【Specifications】
Volvo EX30 Single Motor Extended Range
全長×全幅×全高:4235×1835×1550mm
ホイールベース:2650mm
車重:1790kg
動力:電気モーター1基
駆動:後輪駆動
最高出力:200kW
最大トルク:343Nm
バッテリー:リチウムイオン 69kWh
巡航距離:560km
価格:559万円
>> ボルボ EX30
<文/小川フミオ、写真/ボルボカージャパン>
オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中
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