先代からどこが変わった?フルモデルチェンジした新型スズキ「スペーシア」は王者にどこまで迫れるか?
&GP / 2023年11月11日 21時0分
先代からどこが変わった?フルモデルチェンジした新型スズキ「スペーシア」は王者にどこまで迫れるか?
2023年11月9日、軽スーパーハイトワゴンの人気モデルのひとつであるスズキ スペーシアが3代目にフルモデルチェンジしました。発売は2023年11月22日からスタートします。
2023年10月にフルモデルチェンジした、軽スーパーハイトワゴンの絶対王者であるホンダ N-BOX、マイナーチェンジで先進的な顔つきになった日産 ルークス、老舗ブランドの名を冠してヒットしている三菱 デリカミニ、そして王道的存在であるダイハツ タント。強豪がひしめく軽スーパーハイトワゴンの中で、新型スペーシアはどのように存在感を出していくのか。
フルモデルチェンジで大きく変わった部分を中心に、チェックしていきましょう。
■先代に似ているけれど、キープコンセプトではない!
『わくわく満載! 自由に使える安心・快適スペーシア』というコンセプトで開発された新型スペーシア。デザインのモチーフは大容量のコンテナ。ここにはもっと自由に、もっと使いやすくという想いが込められていると言います。先代が愛着のあるスーツケースをモチーフにしていたので、それ以上に多くのものを積んで出かけられるタフな存在という意味合いもあるのでしょう。
見た目はヒットした先代のイメージをかなり踏襲…と思いきや、エクステリアデザインを担当した方に話を伺うと、キープコンセプトでデザインしたものではないと言います。
「新型スペーシアは我々がイメージした“LIFE PRO”=暮らしを自由に自分らしく楽しんでいる方々に向けて、スペーシアで思い切り楽しんでもらいたいと考えながらデザインしています」
確かにボディサイドに力強く入るキャラクターラインやコンテナをイメージしたビート形状、ボディ同色になった太いDピラーなど、細部に力強さを感じさせるデザインが取り入れられています。
特にそれを感じるのがリアスタイル。新型スペーシアのプラットフォームは先代でも採用されていたHEARTECTを踏襲しているので基本的なサイズは変わらないものの、ルーフ幅が先代より広がったことで、どっしり感が増しています。
一方、スペーシア カスタムはイメージが大きく変わりました。印象深いのはクロームデリート化されたLEDヘッドライト。ライトが大型のメッキ&ブラックグリルの中に溶け込むようなデザインにより、先代が持っていた押し出し感ではなく上質なイメージが与えられています。リアコンビネーションランプはクリアな表面レンズの中に厚肉インナーレンズを設置。夜にライトを点灯したときに華やかな雰囲気になるようデザインされています。
ボディカラーはスペーシアに新色のミモザイエローパールメタリックとトーニーブラウンを追加。スペーシアはモノトーン8色、2トーン4色、スペーシア カスタムはモノトーン7色、2トーン4色が用意されます。
2トーン仕様はルーフだけでなくDピラーも上半分が2トーンになっています。境目にはシルバーデカールでアクセントをつけて、2トーンの雰囲気を盛り上げます。スペーシアのホイールキャップはモノトーン車がシルバー塗装なのに対し、2トーン仕様はベージュとシルバーの2トーンになります。
さりげない変更点は、今回からスペーシアとスペーシア カスタムのエンブレムが新しくなったこと。スペーシアはコンテナに貼り付けたタグプレートをイメージしたデザインで車名を抜き文字にしています。そのため、ボディカラーによってロゴの色が変わるようになっています。スペーシア カスタムは楽器ブランドのロゴのような遊び心があるものに変更されました。
インテリアは先代から大きく変わりました。先代は助手席前にスーツケースをモチーフにした大型のアッパーボックスが設置されましたが、新型はアッパーボックスを廃止してビッグオープントレーを採用。これまで以上に使いやすいデザインとなっています。インパネやドア部分は抑揚のある造形で高級な雰囲気にデザインされています。インテリアカラーはスペーシアがブラウン×カフェラテでナチュラルなイメージに、スペーシア カスタムはボルドー×ブラックでホテルのラウンジのような華やかさを演出しています。
■リアシートに快適性を高める新機構を搭載!
新型スペーシアで大きく進化した部分が後席のユーティリティです。マルチユースフラップと名付けられた可動式のリアシート座面により、長距離ドライブ時に膝裏をサポートする『レッグサポートモード』、脚を伸ばしてゆったりとリラックスできる『オットマンモード』、座面に載せた荷物が落下するのを防止する『荷物ストッパーモード』にアレンジすることができます。
「市場調査をしてみると、お客様から『後ろの席に置いた荷物が落ちる』という意見が多くありました。それを解決しようというところからスタートしています。そしてこの機能を発展させればもっと快適なクルマになると、レッグサポートモードやオットマンモードを開発しました」
スズキには「バケツ」と呼ばれる助手席座面下に設置した取り出し可能な収納という大ヒット機能があります。「マルチユースフラップはバケツに匹敵する機能になるはず」と話を伺った担当者は胸を張りました。
フロントシート背面にはタブレットも置くことができる大型のパーソナルテーブルを設置。テーブル面にはタブレットやスマートフォンが車体の揺れで倒れたり落下したりするのを防ぐ溝がつけられています。先代でも好評だったエアコン使用時の前後の温度差を軽減するスリムサーキュレーターはフラップの形状を変更して一層静かに作動するようになりました。
先代にも搭載されたパワースライドドアの予約ロック機構はリモコン操作に加え、フロントドアおよびバックドアのリクエストスイッチでも操作できるようになりました。スペーシアはスライドドア開口部のステップ地上高がクラスNo.1の低さを誇ります。そんなスライドドアの乗降性をさらに高めるために新形状の乗降グリップを設置。小さな子供から年配の方まで、一層乗り降りしやすくなりました。
■速度抑制や停止保持が追加されたACC
先進安全装備も大きく進化。先代はステレオカメラで前方を監視するデュアルカメラブレーキサポートを搭載していたのに対し、新型はミリ波レーダーと単眼カメラで前方を監視するデュアルセンサーブレーキサポートIIに進化。
そしてスズキの軽で初めて電動パーキングブレーキを搭載したことで、アダプティブクルーズコントロール(ACC)が全車速で追従可能になりました。さらにカーブ手前でカメラがカーブを認識して手前で減速したり、車線変更時に自動で加減速を行う機能も追加されています。ACC作動時は車線の中央付近を維持するようにステアリング操作を支援する機能も追加されました。
ドライバーは運転中もさまざまなスイッチを操作します。そこで新型スペーシアはスイッチ類や装備の配置を見直し、スムーズな操作を可能にしました。いざというときのための機能だけでなく、日常的な操作の中にも使いやすさを盛り込むことで、安全運転ができるようになっています。
パワートレーンは全グレードにマイルドハイブリッドシステムを搭載。効率化と軽量化による燃費向上を実現したCVTや低転がり抵抗タイヤの採用により、幅広い速度域での実燃費が向上しているのも見逃せません。
新型スペーシアが登場したことで、軽スーパーハイトワゴン市場は新たな覇権争いが始まりそうです。さまざまな魅力が詰まったスペーシアが王者であるN-BOXシリーズにどこまでくらいついていくか要注目です!
【Specifications】
● スペーシア HYBRID X(2WD/4WD)
全長×全幅×全高:3395×1475×1785mm
ホイールベース:2460mm
車重:880kg/930kg
駆動:2WD/4WD
最高出力:36kW(エンジン)、1.9kW(モーター)
最大トルク:58N・m(エンジン)、40N・m(モーター)
動力用バッテリー:リチウムイオン
WLTCモード燃費:23.9km/L(2WD車)
価格:170万5000円〜(2WD)、182万4900円〜(4WD)
● スペーシア カスタムHYBRID XS(2WD/4WD)
全長×全幅×全高:3395×1475×1785mm
ホイールベース:2460mm
車重:910kg/960kg
駆動:2WD/4WD
最高出力:36kW(エンジン)、1.9kW(モーター)
最大トルク:58N・m(エンジン)、40N・m(モーター)
動力用バッテリー:リチウムイオン
WLTCモード燃費:23.9km/L(2WD車)
価格:199万5400円〜(2WD)、211万5300円〜(4WD)
>> スズキ スペーシア
<取材・文/高橋 満(ブリッジマン)>
高橋 満|求人誌、中古車雑誌の編集部を経て、1999年からフリーの編集者/ライターとして活動。自動車、音楽、アウトドアなどジャンルを問わず執筆。人物インタビューも得意としている。コンテンツ制作会社「ブリッジマン」の代表として、さまざまな企業のPRも担当。
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