日本に誕生した「ルート66」のアメリカンダイナー【狭小秘密基地拝見!】
&GP / 2024年2月28日 20時0分
![日本に誕生した「ルート66」のアメリカンダイナー【狭小秘密基地拝見!】](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/goodspress/goodspress_585814_0-small.jpg)
日本に誕生した「ルート66」のアメリカンダイナー【狭小秘密基地拝見!】
【狭小秘密基地拝見!】
千葉県木更津市に存在するアメリカ、それが石川 泰さんが建てた秘密基地だ。ハーレーをきっかけにアメリカンカルチャーにどっぷりハマった男のガレージ&カフェは、狭小とは言えないがこだわりに溢れていた。
* * *
石川泰さん
2019年に千葉県木更津市内にカフェ「ARIZONA ROUTE66」を開業。同店のマス UTE66」を開業。同店のマスターとしてコーヒーの焙煎や調理も手がけるかたわら、「White Horse Dental Office」で歯科医師としての顔を持つ。アメリカでルート66を走破した経験もある
都内からアクアライン経由で約60km、買い物客で賑わうアウトレットを尻目に木更津市内の住宅街をしばらく走ると、ルート66の看板とともに1軒のガレージ付きのカフェが現れる。まるで周辺のアスファルトから切り離されたかのように、敷地内はアリゾナの大地を彷彿とさせる乾いた砂利が広がってサボテンが点在している。
カフェ店主の石川泰さんが木更津市内に土地を購入したのは、いまから7年前のこと。都内の自宅から程よく離れた場所に、複数のクルマとバイクを保管できるガレージを立てようと土地を探していたのだという。
そして同時に長年憧れていたカフェ経営も始めたいと、店舗も併設することに。ハーレーに乗り始めたことをきっかけにアメリカンカルチャーにハマり、ルート66を走破した経験を持つ石川さん。目指したのはもちろんルート66沿いに佇むアメリカンダイナーのような空間だ。
▲ジレラの三輪スクーター・フォコ(中央のバイク)は、同ブランドの創業100周年記念の特別モデル。「将来ハーレーに乗れなくなったらこっちに乗る予定です」。そして45歳のときにリターンライダーとして購入した1999年式ハーレー・ローライダー(手前のバイク)。石川さんがルート66にハマるきっかけとなった思い出深い1台だ
「店舗にもガレージにも譲れないこだわりがありすぎて、途中でメーカーを変えたりと完成までに一年半を要しました。でも苦労の甲斐あって外観も内装も自分の理想を形にすることができたんです」
アメリカ・リフトマスター社のオーバースライダーを開けると、石川さんと同じ年生まれの1955年式のシボレー3200と1966年式の日産・プリンス スカイラインGT-A、そしてハーレーのバイクとイタリアンスクーターがずらりと顔を並べている。
「このスカイラインは親父が40年乗ってきたものを受け継ぎました。シボレーは3年ほど前に縁あって購入して以来、うちのカフェのアイコン的な存在です。この2台は古いこともあって故障も多いので、普段の移動はフォード・マスタング(2015年式)がメインです」
▲父が40年間大切に乗っていたというスカイラインGT-Aは、購入当時の希少なナンバープレートをあえてそのまま引き継いでいる
▲お客さんの紹介がきっかけで購入したシボレー3200は、すっかりお店のアイコン的存在に。たまに故障はするものの、今でも現役で走行する
内装にはルート66の標識を冠したタペストリーやブリキの看板があちこちにディスプレイされている。これらの雑貨の数々は、石川さんが実際にルート66のロードトリップの道中で買い求めてきたものだ。
「ルート66にまつわるものは、つい反射的に買ってしまって。そのうちカフェのお客さまが『これマスターのガレージに似合うんじゃない?』なんていろいろ雑貨を持ち込んでくれるように。おかげさまで飾る場所がだいぶ限られてきました(笑)」
常連客とカフェマスターがクルマとバイク談義に耽るガレージ。そこはまるでこだわりの自家焙煎コーヒーのように、味わい深い大人の秘密基地なのだ。
▲ルート66の標識はガレージのあちこちにディスプレイされている。またお気に入りのヘルメットには「ROUTE66」のペイントを施したものも
▲棚には大量のミニカーをディスプレイ。ハーレーのバイクのほか、ベスパやPTクルーザーなどかつて所有していた愛車の思い出が垣間見える
■バイク&クルマ好きが集まる小さなアメリカ
石川さんが、満を持して開いたカフェの内観がこちら。
店名の「ARIZONA ROUTE66」は、彼が実際に何度かルート66を走っているうちに、特に心惹かれたのがアリゾナ州だったことに由来する。カフェ店舗の設計を依頼する際に、石川さんはルート66を特集した雑誌に掲載されていたダイナーの写真を見せて「こんなイメージに憧れている」と伝えていたのだという。ところがカフェを開業してから数年後、ひょんなことからその写真のダイナーの所在地が偶然にもアリゾナ州ウィリアムズという街だったと知る。
▲カフェの外観が忠実に再現された絵は、同じくルート66を愛するイラストレーター・GAO西川氏によるもの
「そのダイナーがどこにあるのか、当時は知りませんでした。ルート66は8つの州をまたいでいて全長が3700km以上もあるのに、たまたま店名にしたアリゾナ州にあったことに運命を感じましたね」
バッファロースカルが見下ろす吹き抜けの店内には、石川さんが長年買い集めてきたアメリカ雑貨が至るところに飾られている。カウンターの上には大きな一つ星のアリゾナ州旗。店主のルート66愛とこだわりに満ちた空間に、自家焙煎コーヒーの豊かな香りが立ち上る。
▲店内にもたくさんのミニカーをディスプレイ。シボレー3200に乗るようになったことをきっかけに、ピックアップトラック関連のグッズも増加中だ
そしてもうひとつ石川さんがどうしても実現したかったのが、壁一面に誂えた書棚だという。
「私はよく言うとモノ持ちがいい、悪く言うとモノが捨てられない性分なんです。この書棚には、これまで愛読してきた趣味の雑誌や書籍を揃えました。バイクやクルマ、アメリカンカルチャーが好きなお客さまに手に取ってもらって、昔を懐かしんでもらいたいですね」
古いものでは石川さんが高校時代に購読していた、53年前のバイク雑誌も並んでいるというから驚きだ。
▲知り合いの店から譲り受けたジュークボックスは、修理の末に現在も現役で稼働中。100円で2曲セレクトできる
現在は週末のみの営業ながら、コーヒー豆を自家焙煎したり、ハンバーガーのパテやスープなどの軽食もすべて一人で手作りしているというこだわりぶり。手先が器用で研究熱心なところは、都内で歯科医師として長年働いてきたキャリアが関係しているのかもしれない。
「歯科医と患者さんという関係ではあまりプライベートなことを話さないし、長年通っていただいても親しくなることはありませんでした。でもカフェのマスターとお客さまなら、初対面でも趣味のバイクやクルマの話で盛り上がれますし、仲良くなれるのがうれしいですね」
そんなマスターとの会話を楽しみに、次の週末も木更津の「小さなアメリカ」には、アメ車やバイクが集まるのだ。
ARIZONA ROUTE66
住所:千葉県木更津市真舟3-4-2
営業日時:土・日のみ(12:00〜21:00)
木更津市内の住宅地にありながら、ルート66のロードトリップ気分が味わえるカフェ。石川さんが歯のメンテナンスを手がける「White Horse Dental Office」も併設している
▼店内には石川さんが買い集めた雑貨がいっぱい
テンガロンハット、トグル付きバッグ、ガンホルダーなどの雑貨はアメリカでルート66を旅しながら買い集めたもので、カウボーイの質流れ品だという。手彫りで複雑な装飾が施されたサドルもアメリカで購入。このサドルの購入を機に石川さんも趣味で乗馬を始めるように。
※2024年2月6日発売「GoodsPress」3月号66-69ページの記事をもとに構成しています
<取材・文/中田美幸 撮影/山岡和正>
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