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読書と食欲の秋!名作「食エッセイ」5冊のメニューを作ってみた!

&GP / 2016年10月11日 22時0分

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読書と食欲の秋!名作「食エッセイ」5冊のメニューを作ってみた!

食欲の秋! そして読書の秋!

欲張りにも両方の秋をいっぺんに楽しんでみよう…というわけで、食に関するエッセイの名著5冊をご紹介するとともに、その中で筆者が「食べてみたい!」と思ったメニューを実際につくって食べてレポートします。

ただし、材料は手に入りやすいもので代替したり、作り方も詳述されていない部分は想像で補っており、かなり筆者の主観が入っております。

徹底再現ではなく、食べてみたかったから似た感じでつくってみた……そんな風に読んでいただければ幸いです。

■読み継がれる日本の食のあり方 辰巳浜子『料理歳時記』

 

日本の家庭食のバイブル的一冊。食べることが好きなすべての人に、ぜひオススメしたい本です。

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著者の辰巳浜子は、明治37年生まれ、日本の料理研究家の草分け的な存在です。とはいえ、著者自身はあくまで「主婦」としての立場で料理を紹介していました。

『料理歳時記』には、昔の山の手の奥様たちはこうだったのかしら…と感じさせる、軽妙ながら気位の高い語り口で、マダム辰巳の食卓が描かれています。

著者の少女時代の東京の食の情景や、企業人の夫に随行して暮らした土地土地の美味しいもの、鎌倉に移り住み自ら畑を耕す中で見つけた四季の味……日本の美味しいものがこれでもか!と詰まっている一冊です。

ちなみに著者は日本を代表する料理家である辰巳芳子氏のお母さんでもあります。

書中で辰巳浜子は「明治も百年、味も遠くなりました」と、どこかカラリとつぶやいていますが、そこからさらに40余年。こういった良書が刊行され続けているおかげで、大切な味が残っています。

この本の中からつくって食べてみたのは「茄子の丸揚げ」です。

日々美味しくなってくる秋の茄子を、丸ごと油で揚げるシンプルな料理。

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ポイントは、茄子の皮が爆ぜないように事前に竹串でぶすぶす穴を開けておくこと。

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間抜けなことに油が少ししかありませんでしたが、茄子の半分程度の高さの油でも約2〜3分で中までトロトロの揚げ茄子ができました。

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生姜醤油で食べると、茄子のきめ細やかさと油の美味しさが相まって、本当に素晴らしい!

秋の茄子を最も美味しく食べる方法の1つなのではないでしょうか。

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《参考文献・引用元》
辰巳浜子、2002年(改版)、『料理歳時記』中央公論新社
http://www.chuko.co.jp/bunko/2002/09/204093.html

 


■牡蠣の巨匠が面白い!『牡蠣礼讃』

 

さあ、秋! 月の名前にもRが入って、今シーズンもたくさん牡蠣を食べるぞ!!

……でも、このRの話って本当に正しいの?

そんな好奇心の強い牡蠣好きに、ぜひ読んでほしいのがこちらの『牡蠣礼讃』。

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著者の畠山重篤氏は、牡蠣養殖の第一人者にしてエッセイスト、NPO法人・森は海の恋人の代表であり、京都大学フィールド科学教育センター社会連携教授もつとめる、牡蠣のスーパースターです。

『牡蠣礼讃』は、牡蠣の現場を誰よりも知り、また牡蠣に大きな愛情を注ぎ続ける著者の世界を少し垣間見ることのできる名著です。

前述の「Rの月」の話にも関連する牡蠣のライフサイクルや、養殖場の四季。

日本の牡蠣を英雄たちの物語。

はるかアメリカまで縦横無尽に駆け回る牡蠣をめぐる旅。

さらには松尾芭蕉の足跡と牡蠣の産地の関連を探る、まるでミステリーのような章も。

まだまだたくさん、とにもかくにも牡蠣、牡蠣、牡蠣に次ぐ牡蠣!

牡蠣に恋する皆様、宮城の牡蠣のピークは3月だそうです。ぜひトップシーズンに向けてこの『牡蠣礼讃』を読みながらウォームアップしましょう!

つくってみたのは「オイスターショット」。著者の畠山氏がアメリカの牡蠣を訪ねる旅で出会う、なんとも洒落たカクテルです。

牡蠣を数粒グラスに入れたら、そこにトマトジュースとウォッカを注ぎスパイスをふりかけ、一気にグイッとあおりましょう。

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書中では、畠山氏の父上が愛したというアメリカ西海岸の牡蠣「オリンピアオイスター」でつくられるのですが、あいにく入手するのはなかなか困難。筆者は、日本のマガキで気分だけ味わいました。

ウォッカ多めが美味しい!

舌先から胸までカッと火がつき、トマトの酸味の後に牡蠣の旨味と塩気が残ります。牡蠣単体で食べるときの濃密な味わいとはまた違う、「海の味」そのもののような純粋さです。

昨今ではオイスターショット、あるいはオイスターシューターの名前で日本でも普及し始めているので、お酒が得意な人は是非試してみてください。

《参考文献・引用元》
畠山重篤、2006年、『牡蠣礼讃』文藝春秋
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784166605422

 


■名作シリーズの副読本『池波正太郎・鬼平料理帳』

 

食に関する読み物を語るとき絶対外せないビッグネーム、池波正太郎。

『鬼平犯科帳』や『剣客商売』といった時代小説のシリーズには、数々の料理が登場し、登場人物の心情までをその食卓に映しだします。

また『食卓の情景』『むかしの味』といった食の随筆は、日本のグルマン必携の書ともなっています。

しかし今回紹介するのは、池波正太郎の著書ではありません。『池波正太郎・鬼平料理帳』は熱狂的池波ファンである文筆家の佐藤隆介氏が編んだ「鬼平シリーズの副読本」。

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鬼平犯科帳から美味いものの名シーンを抜き出し解説が添えられ、実際に食べてみての感想、あるいはそこから江戸料理についての考察が展開されたりと、池波作品を読むのとはまた違う面白さ、興味深さを味わうことができます。

今回は鬼平犯科帳の中には"出てこない"料理をつくってみました。

編者が鬼平シリーズの中の「柿の味醂かけ」という料理を主題に、柿という食材の魅力や江戸の柿料理を幾つか紹介している項。

その中で編者が実際に食べてみて「酒の肴としては悪くなかった」としている江戸料理「柿の海苔たたき」をつくってみました。

作り方はシンプルで、柿を包丁の背でたたき、揉み海苔と合わせ、お酢だけでのばします。

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海苔は火取った浅草海苔とのことでしたが、モノホンの「アサクサノリ」となると絶滅危惧I類の激レア食品なので、ここは普通の焼き海苔を一度炙って入れることに。

コリコリと跳ねる柿をなんとかペースト状にして、揉み海苔と合わせて、お酢でのばし、いざ冷酒とともに食べてみると……

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美味しい!

不思議な食べ物です。柿の甘みと磯の香りが、お酢の酸味で絶妙につながります。果実感は意外に少なく、ホヤやナマコなどの海の珍味からクセをなくしたような透明感のある味わいでした。

酢豚のパイナップルなど、いわゆる「しょっぱいフルーツ」が苦手な人でもイケそう。食前に、1杯のお酒とこんな小鉢を出したらかなりの手練れと言われそうです。

《参考文献・引用元》
佐藤隆介 編、1984年『池波正太郎・鬼平料理帳』文藝春秋
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/1671423400000000000E

 


■"キノコハンター"の知られざる情熱『マイコフィリア きのこ愛好症~知られざるキノコの不思議世界~』

 

日本の秋のお楽しみといえばキノコ!

ニューヨークタイムズ紙でも絶賛されたというキノコエッセイ『マイコフィリア きのこ愛好症~知られざるキノコの不思議世界~』は日本では今年1月に刊行されたばかりの、新しい名著です。

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著者のEugenia Bone(ユージニア・ボーン)はアメリカで活躍するフードライター。キノコの魅力にとりつかれた彼女は、キノコハンターの世界に分け入り、各地のキノコ狩りや学会を訪ね歩きます。

書中には知られざるキノコや菌類の生態、アメリカの"キノコハンター"文化、キノコにまつわる最新技術や催幻覚性キノコについてetc.、とにかくこの本を読まなければ一生知らなかったかもしれないキノコの妖しくも面白い世界が広がっています。

つくってみたのは著者が「素朴ながらも癖になる」というキノコと茄子のディップです。

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書中ではキノコ狩りに出かけた先でつくられる料理で、実際は野生のアンズタケやイグチ、ポルチーニなどを使うものと思われますが、あいにくどれも日本では超高級あるいは激レア。

それでもあまりに美味しそうだったので、椎茸(旨味が強いので)とブラウンマッシュルーム(西洋っぽさをプラス)でつくってみました。

キノコと茄子をあぶってすりつぶすとのことで、グリルパンを使って油なしで焼きました。

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すり鉢で当たり、レモン・塩・ニンニク少々で味付け。

弾力あるキノコをすりつぶすのはなかなか大変だったので、ブレンダーやミキサーをお持ちの場合はぜひそちらを。

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食べてみると、とにかく旨味が濃い!

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動物性のタンパク質や油は一切使っていないにも関わらず、深く濃厚な味わいです。これはキノコをあぶって、水分を飛ばして味を濃縮しているからかもしれません。

家にあったブルーチーズとともにバゲットに乗せてみたら、ワインが止まりませんでした。

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もちろん蠱惑的なアンズタケやアメリカのナスビを使ったものとは全く違う味でしょうが、これはこれで大変美味しい!

《参考文献・引用元》
Eugenia Bone(ユージニア・ボーン)著、吹春俊光 監修、佐藤幸治・田中涼子 訳、2016年『マイコフィリア きのこ愛好症』パイ インターナショナル
http://pie.co.jp/search/detail.php?ID=4405

 


■昔の人は超破天荒!『華やかな食物誌』

 

最後に少し毛色の違う1冊を。

『華やかな食物誌』は、異端の世界をエレガントな美学とともに語り尽くした巨人、澁澤龍彥の随筆です。

思想に美術、毒薬、美女……随筆では様々な題材を扱った澁澤が「食」にスポットライトを当てています。

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古代ローマやフランスの宮廷の貴族達や、フランス革命の頃に型破りな宴会の数々で人々の度肝をぬいたグリモ・ド・ラ・レニエールなど、様々な美食家たちの食卓を紹介しています。

おおよそ現代の日本では考えられないような、超アバンギャルドな食欲の鬼たちの奇行に思わず笑ってしまうような場面も多く、とても興味深い内容です。

せっかくなのでご馳走をつくってみようとは思ったのですが、とにかく食材がとんでもない。

「駱駝の踵」やら「大山鼠の細切り」とか「青海亀」とか……さすがにこれは通販でも買えそうにない!

ということで、材料が最も手近にありそうなものとして「スペインの赤ピーマン入りの卵のプディング」を作成してみました。

16世紀、トスカーナ大公フランチェスコが食中食後を問わず大量に食べていたという一品。レシピが書いてあるわけではないので、「こんな感じかな?」という想像の産物ですが。

卵と赤ピーマンは必須。あとは風味づけに玉ねぎ、にんにく、生クリームを使うことにしました。

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野菜類は全てオーブンでじっくり焼いて、すり鉢でペーストに。

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ペーストを溶き卵と生クリーム少々とともによく混ぜ合わせ塩胡椒で味付けし、油を塗った耐熱容器に入れます。天板に水をひいたオーブンで220度15分!

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こんなのができました!

もちろんトスカーナ大公フランチェスコが食べた「スペインの赤ピーマン入りの卵のプディング」とは違うものでしょうが、結構美味しい。

パプリカの甘みと香りがきいたなめらかオムレツ。そんな感じです。サラダでも添えれば、カフェランチ風の何かになるかもしれない予感がします。

めくるめくようなゴージャスな料理から、正体不明の妖しいものまで様々な食べ物が出てくる『華やかな食物誌』。

想像力全開で、中世の貴人や奇人の食卓を楽しんでみてはいかがでしょうか?

《参考文献・引用元》
澁澤龍彦、1989年、『華やかな食物誌』河出書房新社
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309402475/


 

読書と食を両方楽しめる「食エッセイ」。たくさんの名著があるので、ぜひ読んだり、つくってみたり、食べてみたりしてはいかがでしょうか?

 


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(文/くぼきひろこ

くぼきひろこ/ライター くぼきひろこ/ライター

美食・カルチャー・ライフスタイル・クルマ・ゴルフ・巷の美女etc……対象は様々に、雑誌・ウェブサイト等の各種媒体にて活動中のフリーライター。「人の仕事のすべて。そして、その仕事から生み出されるすべてのモノゴトが面白い!」と津々浦々の興味津々で取材・執筆を行う。

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