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ジオラマに着手!海面は塗るというより海を“描く”イメージで【達人のプラモ術<ハーバータグボート>】

&GP / 2024年10月26日 7時0分

ジオラマに着手!海面は塗るというより海を“描く”イメージで【達人のプラモ術<ハーバータグボート>】

ジオラマに着手!海面は塗るというより海を“描く”イメージで【達人のプラモ術<ハーバータグボート>】

【達人のプラモ術】
ドイツレベル
「1/108 ハーバータグボート」

05/06

ハーバータグボートのビンテージボックスジオラマの製作も第5回となりました。今回はモデリングペーストを使った海面の製作を進めて、海をいくタグボートの波頭や波のカタチを作り彩色よって仕上げていきます。(全6回の5回目/1回目2回目3回目4回目

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTube
モデルアート公式チャンネル」
などでもレビューを配信中。

 

■モデリングペーストを盛り上げて波を作る

モデリングペーストは粘度が高く、ペインティングナイフやヘラを使って塗布したあと盛り上げたり削るといった加工ができ、乾燥時の収縮や事後変形もほとんどないテクスチャー素材です。

ただし前回も書きましたが、一度に厚塗りをしてしまうと乾燥にとても時間がかかってしまいます。

効率よく製作を進めるならば、一度の盛り付けはモデリングペーストの厚みを5mm程度に抑え、塗布→乾燥→塗布→乾燥といった具合に塗り重ねてカタチを作っていきます。

波頭などを盛り上げて作る場合でも、一度に厚塗りしてしまうとモデリングペーストが崩れてしまうので、思うように波のカタチが作れません。

作例では、5mm程度モデリングペ―ストを塗布、指で触って表面が硬くなる状態まで乾燥(常温で30分前後)させて2度目の塗り重ね。部位によっては3~4回と重ねることで波頭などを製作しています。塗布していない状態で、水を含ませた平筆でモデリングペーストの表面を均すことで、滑らかな水面(表面)を作ることもできます。

▲スタイロフォームのベースにモデリングペーストを薄く(厚さ3mm程度)塗り広げて乾燥させたのち、船体を接着して艦舷まわりにもモデリングペーストを盛り付け、隙間を埋めた状態。このまま24時間乾燥させている。前回も書いたスポンジケーキにクリームを塗り広げるイメージ

▲モデリングペーストを塗り重ねて、ベース全体の大まかな波のカタチや船首が切り裂く海面の盛り上がりを作っていく

▲面舵(おもかじ)旋回中という設定なので、船体が傾き、右舷側は水面スレスレの状態。艦弦にかぶる波をイメージしてモデリングペースト盛り付けていく

▲船首が水面を割って生じる船首波は、ボックスアートや実際の船の写真などを参考に、左右に波が大きく盛り上がったようになるようヘラなどを使いカタチを作っていく

▲船尾側はスクリューが水面をかき乱している状態を再現。5mm程度モデリングペーストを盛り上げ、泡立つ水面をイメージしながらヘラなどでペーストの表面に表情をつけていく

 

■海は塗装ではなく色を塗り重ねて描いていく

波のカタチができたら、丸一日乾燥させます。乾燥後に不自然な部分をデザインナイフやヤスリを使って削る、あるいは追加でモデリングペーストを盛るなどして細部を仕上げたら、いよいよ海面を塗装していきます。

さて塗装と書きましたが、海の色の再現はなかなかに難しいです。

単に青色をスプレーで塗ればOKというワケにはいきません。場所や季節、天気でも海の色は変わりますよね。以前製作したUボートのジオラマは、嵐の北太平洋ということで、暗い青灰色で海面を仕上げました。冬の日本海は暗い…。一方、南太平洋といったら鮮やかな青といったイメージですよね。

ちなみに日本の伝統色では、海の色を海松色と表現しており、英語名ではオリーブ・グリーンと訳される渋い色です。具体的には海藻が浮かぶ茶味と黒色をおびた深い黄緑色…。つまるところ青や緑といった単純な色ではなく、複雑に重なり合った色を表しています。

何が言いたいかといえば、ジオラマの海も色を重ねることで深みや質感を表現していきましょうということです。強いて言えば、ジオラマの海は塗るのではなく、描くといったところです。なので海面の着色は筆塗りがおこないつつエアブラシを隠し味に使って仕上げていきます。

 

■海の色は西海岸のイメージで

今回製作のハーバータグボートはアメリカはロサンゼルス港で使われているということなので、じゃあ太平洋のカリフォルニア…ウエストコースト(なんか80年代)なのねということで、青味の強い海のイメージで色を重ねています。とは言うものの、海の色に決まりはないので、自分の思う色で仕上げればいいと思います。

先にも書いたように海面は基本筆塗り。今回はラッカー系塗料を使用しています。ベースのモデリングペーストは塗料を選ばないので、水性アクリル塗料、絵画用のアクリルガッシュなども使用できます。

青系の色で塗装後に白を使い波頭や艦舷、スクリューで泡立つ水面のハイライトを塗装していきます。この際ベタで白を塗るのではなく、ドライブラシ技法を使い、モデリングペーストで製作した波の凸部分にのみ白を乗せていくことで波らしさを強調します。

▲海面はまずベースとなる青(タミヤラッカーLP6 ピュアブルー)を平筆で全体に塗っていく

▲ピュアブルーの上から海の透明度を表現するため海面の凹部分や波の根元などに影色となる黒をエアブラシでランダムに入れていく

▲さらに海の透明感を表現するために、「LP-81調色用ブルー」(青の顔料のみで調色された白を含まない透明感ある青)を重ねて、それが乾かない内にMr.カラーの「C138クリアーグリーン」をランダムに乗せて、ブレンディングしていく

▼ブレンディング

ブレンディングは、塗装面上で塗料を混ぜながら(ブレンドしながら)塗るという意味。本来は画面上で色を混ぜてグラデーションや陰影に変化をつける油絵の技法。近年プラモデルモデルの塗装でも良く使われる塗装テクニックのひとつ

ーBEFOREー

▲青系色で筆塗りをした海面

ーAFTERー

▲ドライブラシで波頭に白を塗った状態。ハイライトを入れることでより波らしさを強調している

▲艦弦から船尾のスクリューで泡立つ部分に白を塗った状態。先を急いだため、海面に塗った青が溶け出してしまっているが、乾燥後にさらに白でドライブラシをかけることでより白波らしくなる

▼ドライブラシ

ドライブラシは、筆に含ませた塗料をウエスなどで拭き取って、筆がほとんど乾いた状態にして擦りつけるようにパーツの凸部分色を乗せていく塗装技法をいう。主にモールドを強調したい時に使われる技法で、基本べースの色よりも明るい色を使用する。筆は毛の腰が強いものを使うとやりやすい

 

■船首の波を増量する

ここまで波の塗装を進めたところで、どうも船首に白波に迫力が足りないなぁと感じたので、モデリングペーストを追加して船首から艦弦にかけて波をボリュームアップしました。当然ながら追加したモデリングペーストが乾燥するまで塗装はストップです。

その間に船体の艤装を仕上げます。前回、艦弦に取り付けられている衝突防止用のロープがあまりカッコ良くないので使わないと書きました。実は今風に衝突防止用のタイヤを吊るそうと考えていたのですが、カーモデルのジャンクパーツを探してもどうにもちょうどよいサイズのタイヤが見つからず断念。結局本来のパーツを取り付けています。

▲モデリングペーストを追加して船首波をボリュームアップ。竹串やヘラを使い波が前から後ろへと流れるイメージで盛りあげていく

▲船首の波を増量したことで、タグボートの力強さ画より強調された。奥側の海面はまだ白を使ってのドライブラシで波頭を入れていない。ドライブラシで波頭を強調した手前側海面と比べるとのっぺりと見えてしまう

▲横須賀で見たタグボート。船首にずらりと取り付けられたタイヤがいかにもタグボートらしいのでコレだ!と思ったのだが…

▲船首の波が乾くまでの時間でフィギュアの塗装も進める

 

■次回完成!

というわけで今回はここまで。船体は3人のフィギュアを除いて完成しました、あと前後のマストに張り線を入れなくてはいけないのですが、作業中に破損する可能性があるので、海面の色塗りを含めてボックスの蓋なども組みなおした時点で張っていきます。

ライトの点灯テストでも暖色系の明かりが良い感じで、イメージ通りの仕上がりに。また海面を青く塗ったことで、ぐっと海のジオラマらしくなりました、

次回細部の仕上げと、思いついたアイデアを落とし込んで完成を目指します。お楽しみに!

▲ライトを点灯した状態。あえて擦りガラス状にした明かりが良い感じだ。ボリュームアップした船首の波は乾燥後にさらに色を糊仕上げていく

>> [連載]達人のプラモ術

<製作・写真・文/長谷川迷人>

 

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