長距離ツーリングに自動変速は必須!? BMWのアドベンチャーバイクも自動変速機構を採用
&GP / 2024年11月3日 7時0分
長距離ツーリングに自動変速は必須!? BMWのアドベンチャーバイクも自動変速機構を採用
このところ、バイクの世界で大きなトレンドとなっているのが自動変速機構です。ホンダの「DCT」でメジャーな存在となった機構ですが、そのホンダが今年になって「Eクラッチ」というクラッチ操作を自動化するシステムを製品化。ヤマハも「Y-AMT」という自動変速機構をリリースしています。
そして9月にはBMWがアドベンチャーマシンの王者である「R 1300 GS Adventure」をリニューアル。「オートメイテッド・シフト・アシスタント(ASA)」という自動変速機構を搭載したモデルが選べるようになりました。その実車を見ることができたので、他社の機構との違いも含めてリポートします。
■アドベンチャーマシンの王者らしい仕上がり
「R 1300 GS Adventure」は、先だって発売された「R 1300 GS」の兄弟モデルという位置付け。ただ、今回のモデルから両者のさらなる差別化が図られていて、バリエーションモデルというよりは完全に別モデルという扱いになっています。最も大きな違いは30Lという大容量のタンクです。航続距離は路面状況などにも寄りますが500kmを超えると思われ、大陸を横断するようなアドベンチャーツーリングにふさわしいマシンです。
搭載されるエンジンは空水冷の水平対向2気筒。排気量は1300ccで145PS/7750rpmの最高出力と149Nm/6500rpmの最大トルクを発揮します。完全新設計で、先代モデルより圧倒的にコンパクトになっていますが、それでも左右に張り出したシリンダーはBMWのボクサーエンジンならではの迫力があります。
サスペンションは、フロントにEVOテレレバー、リアにEVOパラレバーと呼ばれるBMW独自の機構を採用。一般的なテレスコピックタイプのフロントフォークに比べるとピッチングの動きが抑えられ、路面追従性や快適性も高いといわれるものです。
リアは片持ち式のスイングアームで、シャフトドライブの組み合わせ。長距離の過酷なツーリングでもメンテナンスの頻度が少なく済むのもメリットで、アドベンチャーマシンらしい装備といえるでしょう。新型ではアダプティブ車高制御が装備されていて、停車時は走行時に比べて20〜30mm車高が下がるようになっています。
デザイン上の大きなポイントとなっているのは、新しく採用されたマトリクス・デザインのフルLEDヘッドライト。「R 1300 GS Adventure」は補助ヘッドライトも標準装備されています。
■自動変速機構も選べる
「ASA」搭載車は、左手側にクラッチレバーがなく、大型AT免許で乗ることができます。ホンダの「Eクラッチ」にはクラッチレバーがあり、MT免許でなければ乗れない(「DCT」はAT免許で乗れる)ので、その点が大きな違い。
また、ヤマハの「Y-AMT」は、左足側にシフトレバーがありませんが、BMWの「ASA」にはシフトレバーがあり、左足を使ったマニュアル変速操作も可能になっています。ボタンによる変速ではなく、左足のレバーを残しているのは、ライダーが慣れた操作で行えるようにするためとのこと。このあたり、各社の考え方の違いが出ていて面白いですね。
変速操作にはクリック感のようなものが残されていて、従来の変速に近い感覚ですが、実際の操作はモーターとアクチュエーターによって行われていて、レバーはいわばスイッチです。クラッチとシフトのアクチュエーター追加による重量増は約2.9kgに抑えられているとのこと。シフト操作はライダーが行うMモードと、自動で変速されるDモードが選べ、変速タイミングなどはライドモードに連動して変わる設計です。
「R 1300 GS Adventure」は過酷なオフロードでの走破性にも定評があるモデルですが、エンストの心配がなくなるため、オフロードでの快適性も向上しているとか。オフロードを走っているとクラッチ操作に向ける意識はオンロードに比べるとかなり大きくなりますから、それを意識する必要がなくなれば、かなり疲労低減には効果がありそうです。
実際「R 1300 GS Adventure」の注文はすでにかなり入っているとのことですが、かなりの割合を「ASA」搭載モデルが占めているとのこと。どんなフィーリングに仕上がっているのか、早く乗ってみたいところです。
>> BMW Motorrad「R 1300 GS Adventure」
<取材・文/増谷茂樹>
増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。
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