【ベンツGLEクーペ試乗】洗練のクーペフォルムが高級SUVにプラスした新たな価値とは?
&GP / 2016年12月18日 11時0分
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【ベンツGLEクーペ試乗】洗練のクーペフォルムが高級SUVにプラスした新たな価値とは?
新たにメルセデス・ベンツのラインナップに加わった「GLEクーペ」は、SUVとクーペのクロスオーバーモデルです。そう聞いて、スタイルや車格がすぐに思い浮かんだなら、かなり熱心なメルセデスファンだと思います。
何しろ、近年のメルセデスは、積極的に車種ラインナップの拡大を進めており、本流であるフォーマルなサルーン系モデルに加え、よりパーソナルでカジュアルなSUVや、スタイリッシュさを押し出したクーペモデルが続々とデビューしています。
では、GLEクーペはどのようなポジションにあるモデルなのでしょう? ベースは「Mクラス」の流れを汲む大型SUVとして2015年にデビューした「GLE」で、そこに、クーペと呼ぶにふさわしいスタイリッシュな内外装を与えたモデル、といったところでしょう。
と、アタマの中で整理しつつ、メルセデスAMG「GLE43 4マチック クーペ」と初対面となりましたが、驚いたのはその車体サイズ…、ではなく、見た目やネーミングから想像するよりも、はるかに上品な振る舞いでした。
■スタイリッシュなフォルムにふさわしい上質な走り
テールエンドに向かって緩やかな弧を描くルーフラインと、サイドウインドウのグラフィックが目を惹くGLEクーペ。ベースとなったGLEよりもルーフ部分を低く抑えたこと、AMGモデルでは前後とも22インチ(!)という大径ホイールを履くこともあり、美しくも力強いたたずまいを見せます。
実際の寸法はというと、全長4890mm、全幅2015mm、全高1720mmですから、都市部のパーキングに停めるのは躊躇しそうですが、最小回転半径は5.5mと、よく切れるステアリングの助けもあり、駐車場や路地から出るのに苦労を感じることはありません。また、駐車する際も、自車を真上から見ているかのようなトップビュー表示が可能な“360度カメラシステム”、縦列駐車・並列駐車時にステアリング操作などをサポートする“アクティブパーキングアシスト”も備わるので、少なくとも今回の試乗時に限っては、市街地で取り回しに苦労するようなシーンはありませんでした。
こうして勇躍、都市部の道路へと踏み出しましたが、まず驚いたのは静かなエンジンです。“AMG”というバッジを見ると、いかにも獰猛な性格で骨太なサウンドをとどろかせそうですが、2000回転で十分にこと足りる街中では、そのフィーリングは極めて紳士的。上品で控えめなサウンドを奏でます。また、電子制御9速ATも「今、変速しましたよ」という感触こそドライバーに伝えますが、同乗者に振動が伝わるようなことはありません。
実はこのGLE43 4マチック クーペに搭載されるのは、排気量2996ccのV6ツインターボエンジン。近年の潮流であるダウンサイジングターボで、最高出力367馬力、最大トルク53.0kg-mと、並みの4リッターエンジンを上回る性能の持ち主です。
ちなみに、100km/hで巡航する場合、エンジンの回転数は1450回転(9速)ほどで、市街地と高速道路をほぼ半々で走った時の燃費は8km/L強と、3リッタークラスのSUVと比較しても不満のないレベル。4リッタークラスの大型SUVとしてとらえれば、上出来といった感じでしょうか。
一方、2310kgという車両重量を見ると、ツインターボとはいえ3リッターでは力不足を感じるシーンもあるのでは? と感じられるかもしれません。しかし、そこはさすがのAMG。ステアリングやエンジン/トランスミッションの特性、さらには、エアコンやECOスタートストップ機能まで連動して切り替える“AMGダイナミックセレクト”を備えており、コンソールのダイヤルを操作するだけで、そのキャラクターが一変します。
「コンフォート」では、エンジン回転の上下や変速操作はもちろん、ステアリングのフィールも穏やか。例えば、小さな子供がいっしょでも気兼ねすることのない、高級サルーンとしての役目を果たしてくれます。しかし「スポーツ」「スポーツプラス」をセレクトすれば、ステアリングはグッと手ごたえが増し、思わずニヤリとしてしまうほどキビキビとしたエンジンの回転フィールとギヤチェンジを味わうことができるのです。
とはいえ、恥ずかしながらワインディングロードをグイグイと攻め込む、なんて腕前は持ち合わせていません。しかし、都内から郊外へと向かう高速道路ですら、明らかにその違いを感じとることができますし、エンジンも音量こそ控えめですが心躍るサウンドを聞かせてくれるのですから、メルセデス最新の電子制御、あっぱれといったところでしょう。
さて、インテリアはというと、試乗車には“designo(デジーノ)エクスクルーシブパッケージ”と呼ばれるオプションがセレクトされていました。しっとり柔らかなナッパレザーのシートは、ポーセレンと呼ばれる濃い目のアイボリー。さらに、シートのセンター部分やドアトリムにはダイヤ状のステッチがあしらわれており、なんとも豪奢な雰囲気です。
ちなみに、3リッターのディーゼルターボを積む「350d 4マチック クーペ」と「350d 4マチック クーペ スポーツ」、5.5リッターのV8ガソリンツインターボを積むメルセデスAMG「GLE 63S 4マチック クーペ」もレザーインテリアが標準となりますが、デジーノ仕様が選べるのはGLE43 4マチック クーペのみ。54万円のオプションですが、この艶やかさはGLEクーペのキャラクターにピッタリではないかと思います。
実用性は、カーブを描くルーフラインの影響もあり、ラゲッジルーム容量こそGLEに譲りますが、それでも5名乗車時で650L、リアシートを畳めば1720Lという容量を確保。定員乗車での小旅行でも、荷物を置くスペースに困るようなことはありません。
また、近年のメルセデスといえば、アクティブセーフティ(能動的安全性)とパッシブセーフティ(受動的安全性)を合わせた統合安全性“インテリジェントドライブ”に力を入れているのはご存知の方も多いと思います。
GLEクーペも、最適な車間距離を自動でキープする“ディストロニックプラス”、飛び出しを検知してブレーキをアシストする“ブレーキアシストプラス”、疲労や不注意による車線逸脱を防止する“アクティブレーンキーピングアシスト”など、“レーダーセーフティパッケージ”と呼ばれる最新電子デバイスが標準で備わります。オーナーズマニュアルを開くと、こうした安全装備や支援機能についての解説に多くのページが割かれていることに驚きますが、運転時の疲労軽減にも役立つので、オーナーの方はしっかりと目をとおしておくことをお勧めします。
さて、今回の試乗車GLE43 4マチック クーペの価格は1200万円。“お手頃ですよ”と気軽にお勧めできる価格ではありませんが、メルセデスのラインナップ全体を見渡すと、1000万円〜1300万円というのは、「E550ワゴン」や「G350d」、「SL400」など、長きにわたる伝統を受け継ぐ魅力的なモデルが集中するボリュームゾーンでもあるのです。
「Eクラス」の実用性、「Gクラス」の走破性、「SL」の美しさとパフォーマンス…。そのすべてを1台で、という“全部盛り”モデルなど、かつては存在しませんでした。しかし、そうしたリクエストにしっかり応える辺りは、21世紀のメルセデス。信頼性や安全性は譲れないし、走りにだって興味がある。さらには、人とは違う華やかさや艶やかさも欲しいという方にとって、GLE43 4マチック クーペは最善の選択といえるのではないでしょうか。
<SPECIFICATIONS>
☆GLE43 4マチック クーペ
ボディサイズ:L4890×W2015×H1720mm
車重:2310kg
駆動方式:4WD
エンジン:2996cc V型6気筒 DOHC ツインターボ
最高出力:367馬力/5500~6000回転
最大トルク:53.0kg-m/2000~4000回転
トランスミッション:9AT
価格:1200万円
(文&写真/村田尚之)
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