撮影物の長さが測れる!Googleの新AR技術「Tango」が未来的
&GP / 2017年2月3日 7時0分
撮影物の長さが測れる!Googleの新AR技術「Tango」が未来的
「拡張現実:AR(Augmented Reality)」は、いまや身近な存在となりました。皆さんも、スマホのカメラ越しにキャラクターを映し出したり、人の顔をリアルタイムに変えたり、と何かしらのアプリで楽しんだ経験があるはずです。
現在、このARが進化中です。Googleが開発するテクノロジー「Tango」では、ARと現実の3Dデータがリンクします。つまり、今まで画面に表示されるだけだったキャラクターは、スマホの画面内で椅子に座り、階段を登れるようになるのです。
今回は、この「Tango」を世界で初めて搭載したレノボのファブレット「PHAB2 Pro」を実際に使ってみました。
■レノボ「PHAB2 Pro」ってどんな端末?
PHAB2 Proは2016年12月に発売されたレノボ製のファブレット。6.4インチのWQHDディスプレイを搭載し、普通のスマホと比べるとやや大きめです。
▲PHAB2 Pro
背面には、3つのカメラが付いています。一番上が1600万画素のRGBカメラ。つまり、普通のカメラです。真ん中は赤外線ベースで深度(対象物との距離)を測るカメラ。そして一番下が、モーショントラッキングカメラ。これは魚眼カメラになっていて、周囲の物体の移動方向などを測定します。
▲カメラの下には、指紋センサーも搭載。「Tango」のロゴも入っている
PHAB2 Proは、これら3つのカメラで得た情報を合わせることで、「Motion Tracking(運動)」、「AreaLearning(空間記憶)」、「Depth Perception(奥行認識)」を実現します。
ちなみに、レノボはTango開発における初期パートナー。PHAB2 Proは最初の端末ですが、Googleとしては、将来的にこの技術をAndroidに標準的に搭載する意向です。
■「Tango」のアプリをいくつか試してみた
さて、早速Tangoを使ってみました。今回、標準でインストールされていたアプリは「Lenovo VR Camera」と「Measure」のふたつ。
「Lenovo VR Camera」は、カメラ画面にVRのキャラクターを登場させられるカメラアプリ。従来のものと違うのは、現実にある物体に合わせて位置が表現されるということ。試しにネコを出現させてみましたが、机の上にちょこんと座っています。
▲「Lenovo VR Camera」の画面
また「Measure」はカメラで撮影した家具や部屋のサイズを測定できるアプリ。カメラで撮影するだけで、ざっくりとしたサイズが計測できます。下の例では1辺しか測定していませんが、複数の辺や面をまとめて計測可能です。
▲「Mesure」の画面。カメラで写すだけでサイズが計測できる
ほかにもPlayストアからTango対応アプリをインストールできます。今回は「Domino World」と「Ghostly Mansion」を試してみました。
「Domino World」はその名の通り、VRでドミノを楽しめるアプリです。机の上や床にドミノや仕掛けを置いて楽しめます。筆者の机の上でやったらこんな感じになりました。倒れ方の確認や、立て直しがスムーズに行えるのはVRならではです。
▲「Domino World」の画面
「Ghostly Mansion」は、”死者が自分の死んだ理由を探す” というストーリーで進んでいく脱出ゲーム。部屋に散らばった指定のアイテムを探していきます。実際にアイテムを見つけても、現実の部屋の中を歩いて近くまで行かないとゲットできません。
▲「Ghostly Game」の画面。実際に部屋の中を歩き回らないと、アイテムは取れません
ほかに、部屋の中に家具を表示させサイズ感やレイアウトを確認できるアプリなども用意されています。
■技術的な「Tango」のポイントとは
例えば、一般的な床掃除ロボットには「SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)」という技術が使われています。要するに、ロボット自身がどこにいるのかを把握しつつ、周囲の環境情報を同時にマッピングしていくシステムです。
一方、Tangoでベースになる技術は「VSLAM(Visual Simultaneous Localization and Mapping)」と呼ばれます。端末が動くと、動画像を解析して、写っている物体の特徴点を抽出します。それをリアルタイムで追跡し、物体との相対的な位置を見ながら位置情報を検出。これにより、壁や地面、物体を感知できるのです。
ちなみにPHAB2 Proでは、移動を9軸の「慣性計測装置(IMU)」が検出します。これをモーショントラッキングカメラで検出した情報で補正することで、解析の負荷を低減しているそうです。
■使うときに気を付けることは?
こうした測定は、特徴点が検出しづらい場所(つまり白い壁がずっと続くところや、薄暗いところ)では上手く動作しない場合もあります。また、光の変化が激しい環境や、移動スピードが速い環境も同様です。
加えて、奥行の検出には、赤外線が利用されています。赤外線の到達距離の関係により、4-5mの距離では高い精度で測定できますが、それ以上離れるとだんだん精度が落ちます。
■将来的にはGoogleマップとの連携も
Tangoには、空間データを保存する機能が実装されています。そして、すでに保存されている空間データと検出した現場がマッチする場合には、Tangoは保存された情報を利用して自身の位置を特定できます。
▲PHAB2 Pro背面のTangoのロゴ
将来的な利用方法としては、「GoogleマップでナビゲーションしていてGPSが途絶えると、Tangoに切り替わる」なんてことが可能です。現実と融合したナビゲ―ションも実現できるでしょう。地下鉄の案内や、店舗内での商品情報案内などへの活用が見込まれています。現在はシンガポールがパイロットシティとして位置づけられています。
2016年には、HUAWEI P9やiPhone 7 Plusなどダブルレンズを搭載する機種が流行しましたが、今後はトリプルレンズ搭載の端末が増えてくるかもしれません。
(取材・文/井上 晃)
いのうえあきら/ライター
スマートフォン関連の記事を中心に、スマートウォッチ、ウエアラブルデバイス、ロボットなど、多岐にわたる記事を雑誌やWebメディアへ寄稿。雑誌・ムックの編集にも携わる。モットーは「実際に触った・見た人だけが分かる情報を伝える」こと。編集プロダクション「ゴーズ」所属。
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