【日産 フェアレディZ試乗】スポーツカーの真髄ここにあり!古典的だが走る愉しさ満点
&GP / 2017年3月5日 11時0分
【日産 フェアレディZ試乗】スポーツカーの真髄ここにあり!古典的だが走る愉しさ満点
「今の愛車は4人乗れる上に、スポーティなところが気に入っている」と思っていました。でも、あるきっかけで「何かが違う…。コレでいいのか?」と感じるようになってしまったのです。そのきっかけとなったのは「フェアレディZ ニスモ」でのロングドライブ。
「そうそう、スポーツカーってこうだよね!」
その時の感想を書いてしまえば、このひと言。焼けぼっくいに火がついた、忘れていた何かを思い出した、というのが正しいのかもしれません。
生粋のスポーツカー好き…、とは申しませんが、クルマ好きの心をつかむ“何か”をフェアレディZに感じたのです。そこであらためて、フェアレディZ ニスモと、同「バージョンST」の2台を街へと連れ出し、その魅力を探ってきました。
■シートに収まった瞬間、胸の高鳴りを感じたニスモ仕様
フェアレディZは、1969年に初代S30型がデビューを飾った、日本で最も長い歴史を有するスポーツカー。4世代目のZ32型が2000年に販売終了となり、5世代目のZ33型がデビューするまでの間、1年半ほどの空白期間がありましたが、見事に復活を果たしました。
そして、現行型となる6世代目Z34型へのフルモデルチェンジが行われたのは2008年末のことですから、すでに8年以上の年月が経過しています。そろそろ次期型の声も聞こえてきますし、モデル末期に差し掛かっているのも事実でしょう。
日本ではスポーツカー受難の時代といわれて久しい昨今ですが、国産車のラインナップを眺めてみれば、マツダ「ロードスター」、トヨタ「86」、スバル「BRZ」、ホンダ「NSX」に「S660」などなど、Z34のデビュー以降、多くのモデルが登場しています。そういえば、レクサス「LFA」という超弩級のモデルもありましたし、Z34に先んじて発売された日産「GT-R」は、世界的なスーパーカーとして現在も一線級のパフォーマンスを誇ります。
もちろん、これら最新のスポーツカーはクルマとして全くスキのない完成度を誇りますし、パワーの大小こそあれ、乗れば素晴らしい動力性能や運動性能を味わうことができます。街中でもワインディングロードでも、高速道路だって「ん! 運転が上手くなったんじゃないか?」っていう具合に。
一方、フェアレディZ ニスモの第一印象は、あまりよろしくなかった、というのが本音です。
Z ニスモは、2014年のマイナーチェンジにより、他のニスモシリーズにも採用されているデザインアイデンティティ、つまり、バンパーやサイドスカートに配される赤いアクセント、LEDハイパーデイライトなどが追加されたほか、エアロパーツやホイールデザインの変更を受けています。
また、シートも専用チューンが施された、シェイプの深いレカロ社製のスポーツタイプが標準となりました。このタイトなシートに収まり、人工スエードの“アルカンターラ”が配されたステアリングを握った瞬間、ちょっとマズいことになったな、と思うと同時に、胸の高鳴りを強く感じました。
エンジンを始動すべく、クラッチペダルに足を載せると、カッチリと明らかな踏み応え。意を決してスタートボタンと押すと、専用チューンが施され、355馬力を発生する3969ccV型6気筒自然吸気“VQ37VHR”エンジンが「ボンッ!」という低い爆音を伴って目を覚まします。日産のV型エンジンであるVQシリーズは長い歴史があり、サルーンやSUVにも搭載されていますが、この時、VQ37の二面性といいますか、内にもうひとつのキャラクターを秘めていることに気づきました。
そして、ストロークが短く、ズシッとした手応えを感じるシフトレバーを1速へ。これまた相応の重さを持つステアリングを切りつつ、パーキングから動き出します。まだ水温が低く、2000回転程度ではなんとも眠い反応を見せるVQ37を温めつつ、市街地を移動して高速道路へと上がります。
右足にちょっとだけ力を込め、3速、4速、5速…とシフトアップ。低回転域では金属的でメカニカルな音を奏でるVQ37ですが、大排気量の自然吸気エンジンらしく、淀みなく、必要なパワーが右足の動きひとつで手に入ります。さらに、シフトダウンから強めにアクセルを踏み込んだ時の咆哮、スピードの伸びは、まさに快感といえるでしょう。
Z34型フェアレディZの6速マニュアルギヤボックスには、シフトダウン時にアクセル操作を行わなくても、最適なエンジン回転数に合わせてくれる“シンクロレブコントロール”機能が備わります。クルマが勝手に“ヒール&トゥ”のヒール、すなわち、アクセル操作を行ってくれるので、ドライバーはブレーキとクラッチ操作に専念すればいい、というワケです。
実は当初、シンクロレブコントロールには懐疑的でしたが、ギクシャクするどころか絶妙な回転数にアジャストしてくれる様子を体験すると「あぁ、プロドライバーはこういうタイミングと回転数で変速するんだろうな…」と納得。何しろ、日産のテストドライバー氏いわく「この変速は私よりも上手い。私の30年を返せ!」と涙したくらいのシステムなのだそうです。
とはいえ、ドライバーをサポートしてくれる目新しいメカニズムは、このシンクロレブコントロールくらい。ブレーキ圧やエンジン出力を制御して車両の姿勢が不安定になるのを防ぐ“VDC”や、電子制御で制動力の配分を調整する“EBD”など、一般的な電子デバイスこそ備わりますが、クルマそのものは、ストイックな大パワーFRスポーツカー、という仕立てになっています。
特にZ ニスモには、フロント245/40R19、リア285/35R19というタイヤが装着され、専用のサスペンションも備わります。市街地や高速道路を流していても、わだちではステアリングにズッシリとその感触を伝えてきますし、足まわりもかなり硬めの設定です。
とはいえ、十分な剛性が確保されたボディ、車体の振動や不快なノイズを抑える“パフォーマンスダンパー”の効果もあり、硬派な仕立てであることは間違いないものの、乗り心地は悪くありません。むしろ、コーナリング時や車線変更時など、ドライバーの意思をダイレクト、かつスムーズに反映してくれる動きは、重量級スポーツカーながら清々しくもあります。
惜しむらくは、私にこのZ ニスモを御するほどのウデがないことですが、それでも、ステアリングやシフト操作などドライビングに関わるすべての動作において、息がピタリとあった時の快感は、ほかではなかなか得がたいと思わせるものでした。
■バージョンSTはスポーツカーとGTのいいとこ取り
硬派なニスモと別れ、標準仕様の上位グレード=バージョンSTに乗り換えて真っ先に感じたのは「なんて朗らかなスポーツカーなんだ!」ということ。
インテリアも、本革とスエード調ファブリックによるコンビ仕立てのシートが装着されるなど、カジュアルでファッショナブルな雰囲気となります。
標準仕様のエンジンは最高出力336馬力ですから、もちろん十分すぎるほどパワフル。しかし、エンジンサウンドの音質、雑音をコントロールする“アクティブ・サウンド・コントロール”と“アクティブ・ノイズ・コントロール”(こちらはニスモ仕様にも標準装備)の効果や、控えめなエキゾーストサウンドもあって、全体的に穏やかに感じます。
ステアリングやシフトレバーをはじめとする操作系の手応えは、最新スポーツカーに比べればやはり重めの感触ではありますが、すべての操作に神経を研ぎ澄まして挑みたくなるZ ニスモとは異なり、ルーズでこそないものの、ゆとりを感じる設定となっています。
足まわりも硬めではありますが、市街地でもゴツゴツとした感触は一切なく、乗り心地もスポーツカーとしてはかなり快適なセッティングといえるでしょう。コーナリングもしかりで、軽快な身のこなしというよりも、ステアリングの動きにピタリと応える安定感が印象的でありました。
加えて、高速道路でのフラット感は、さすが3.5リッター級の大型戦闘機、といった貫禄を感じさせるもので、スポーツカーとGTのいいとこ取り、という仕立てといえば、そのキャラクターがお分かりいただけるのではないでしょうか。実際、日帰りで300kmほどのツーリングに出掛けましたが、「もう少し走りたいな」と思えるほどの快適性を備えています。
実はZ34型フェアレディZ、開発時はもちろん、マイナーチェンジに際しても相当な走りこみを行ったと、開発ドライバー氏が胸を張るモデルなのです。もちろん、Z34型以降に誕生した最新スポーツカーに比べれば、熟成を重ねてはいても、メカニズムやスペックは時代遅れに映るかもしれません。しかし、クルマとのコミュニケーション、つまり、ステアリング操作やシフトチェンジ、加速・減速の感触などのダイレクトで自然な感触は、現在でもなおトップクラスにあると思います。
Z34型フェアレディZには「シフトチェンジがピタリと決まった!」、「思いどおりにコーナーを曲がれた!!」という、スポーツカーならではのベーシックな楽しみがしっかりと残されています。レベルこそ違えど、Z ニスモもバージョンSTも、ドライビングという行為としっかり向き合えば、スポーツカーならではの快感を得ることができます。
私が愛車に感じた違和感というのは、クルマを自分の意思で操りたいのに、クルマが勝手に手助けしてくれる“スポーティ”カーの気遣いのせい、だったのかもしれません。たまに失敗するからこそ、シフトチェンジひとつとってもピタリと決まれば楽しいのです。少しでも上手く走りたい、キレイに走りたいのに、思いどおりにならない至らなさ。そんな、ちょっとしたフェアレディZからの挑発に、まんまと乗ってしまったのかもしれませんが…。
ドライバーの意思を汲むかのごとく、あらゆるサポートを行う電子デバイス満載の最新スポーツカーとは異なり、フェアレディZは「クルマをこういう風に操りたい」という明確な意思が必要なクルマでもあります。つまり、万人に向けて「楽しいですよ」とオススメできるかと聞かれれば「相性次第」と答えるべきクルマかもしれません。
Fairlady=淑女というには、いささか気難しいと感じられるかもしれませんが、ドライビングの楽しさ、そして、スポーツカーにご興味をお持ちなら、ぜひ一度アタックしてみる価値のある相手だと思います。
<SPECIFICATIONS>
☆ニスモ
ボディサイズ:L4330×W1870×H1315mm
車両重量:1540kg
駆動方式:FR
トランスミッション:6速MT
エンジン:3696cc V型6気筒 DOHC
最高出力:355馬力/7400回転
最大トルク:38.1kg-m/5200回転
価格:618万5160円
<SPECIFICATIONS>
☆バージョンST
ボディサイズ:L4260×W1845×H1315mm
車両重量:1540kg
駆動方式:FR
トランスミッション:6速MT
エンジン:3696cc V型6気筒 DOHC
最高出力:336馬力/7000回転
最大トルク:37.2kg-m/5200回転
価格:499万6080円
(文&写真/村田尚之)
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