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【オトナの社会科見学】日産GT-Rの精緻さは人の“手ワザ”から生まれていた!

&GP / 2017年4月8日 11時0分

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【オトナの社会科見学】日産GT-Rの精緻さは人の“手ワザ”から生まれていた!

日産「GT-R」で出掛けるロングドライブ…。そんな、なんとも心躍る時間を過ごしてきました。数百キロを共にする相棒が、日本が世界に誇るスポーツカーの頂点ともなれば、ウキウキしないはずなどありません。

今回、GT-Rでロングドライブに出掛けた理由はといえば、短時間の試乗では見えてこない、スポーツモデルの真価を探りたい、というのがひとつ。そしてもうひとつ、GT-Rの生まれ故郷である日産自動車の栃木工場を訪ね、製造ラインを見学させてもらおう、と考えたからです。

実は以前、2017年モデルのGT-Rについて取材した際「GT-Rはゆっくり走っても、その価値をお分かりいただけるはずです」という話を、開発に携わるテストドライバーの方からうかがいました。その言葉を聞いて、内心ホッとしたのです。何しろ、GT-Rに関連する話題を検索すれば“最高速度300km/h”、“市販車開発の聖地・ニュルブルクリンクのラップタイムが7分09秒”といった、速さにまつわることばかりなのですから。

最新GT-Rのスペックシートには、最高出力570馬力、最大トルク65.0kg-mという数字が並んでいます。そのパワーを生かすことができるのは、サーキットなどのクローズドコースのみ、楽しめるのも腕利きのドライバーだけ、なのでしょうか…。その辺りを“並みのウデ”しかない筆者が公道で確かめてみたい…、そんな思いもありました。

それでは「ロードカーとしての使い勝手はどうか?」、「飛ばしていない時はどんなクルマか?」といった疑問をチェックすべく、GT-Rの生まれ故郷を訪ねる“グランドツーリング”へと出掛けましょう。

“アルティメイトシャイニーオレンジ”に塗られた「GT-R プレミアムエディション」を受け取ります。

ドアパネルに埋め込まれた格納式のドアノブを引くと“カコッ”と弾けるようにドアが開きますが、その音は高級車的な重厚さとは異なり、開閉も重さを感じることはありません。

しかし、シートに収まり、ドアを閉める瞬間、手に伝わってくる剛性感は“このクルマは特別なのだ”と教えてくれるようです。ドアとラッチの正確無比な噛み合い、ドアシールの密着感など、些細なことではありますが、その感触と車内の密閉感から「やはり300km/h級の高性能車は違うな」と感じさせられました。

ひと呼吸置き、スタータースイッチを押してエンジンを始動させますが、いにしえのスーパーカーのように、特殊な儀式など必要ありません。一瞬、ドンッとばかりに低めの雄たけびを上げますが、最高出力570馬力の3.8リッターV6ツインターボは、ラフな振動など感じさせることなく、アイドリングを開始します。

準備を済ませ、ゲート式シフトレバーで、自動変速モードである“A”を選んでパーキングから走り出します。と、ここまでの運転操作は、一般的な乗用車と全く同じ。そうして大通りに出ると、オレンジメタリックのGT-Rはやはり人目を惹くようで、信号待ちの時など明らかに人の視線を感じます。

走り出して数分後、高速道路へと上がりアクセルペダルに力を加えると、即座にエンジンから重厚で金属的なV6サウンドと、リアシート周辺から“カチャン”、“カタッ”とトランスアクスル構造のギヤボックスが発する音が聞こえてきます。

とはいえ、こうした作動音が、同乗者との会話やオーディオの音を邪魔するようなことはありません。むしろ、クルマが発するこうしたリニアな反応は、まるでクルマの鼓動のようです。以前のGT-Rは、エンジンやギヤボックスなどから、少なからず“ガチャガチャ”とメカニカルな音が聞こえていたのですが、’17年モデルではそうした各部の作動音から雑味が取り除かれ、音量も抑えられています。

東北自動車道に入ると、再びテストドライバー氏の話を思い出しました。サスペンションにはモード切り換え機能が備わっていますが、高速道路でのそれは「ぜひコンフォートモードにして走って欲しいんです」というひと言。今こそ絶好のチャンスとばかり、スイッチをノーマルからコンフォートに切り換えます。

本音をいうと「そんなに違いはないだろうし、果たして、そもそも違いが分かるのか?」と思っていたのですが、高架の継ぎ目の段差や路面補修の目地段差を通過すると、違いは歴然! “トン”、“コトッ”とタイヤが音を発しますが、シートやフロアに振動が伝わることはありません。

もともと、ノーマルモードでの乗り心地も、オーバー500馬力級のスポーツカーとしては最高レベルの快適さではありますが、コンフォートモードはさらに一枚上手、という感触です。音はすれども、不快な振動や衝撃はなく、しかし、ステアリングの感触や反応、車両の安定性が悪化することもありません。サルーン的なゆったり感とは異なりますが、市街地から高速道路をひたひたと巡航するためのモード、としては最適だと思います。

ちなみに、100km/h巡航時のエンジン回転数は、6速で2100回転ほど。望めば一瞬で200km/hを超えることも可能なGT-Rですが、流れる景色を楽しみながら、かすかに聞こえるVR38DETTの硬質なビートをじっくり堪能します。風切り音などの雑音もなく、路面の変化や横風といった外乱にもビクともしない直進性などを体験し「GT-Rってクルージングにも向いているんだな」と感心しきりだったのであります。

「コイツならどこまででも走っていけそうだ」と思った矢先ではありますが、ゴールは訪れるもの。神奈川県の横浜から休憩をはさみつつ約3時間。GT-Rの生まれ故郷、栃木工場に到着です。

現在、日産自動車の国内主力工場は、全国に6カ所あります。エンジン製造を手掛けるいわき工場と横浜工場。車両の組み立てを担当する追浜工場、日産車体湘南工場、日産自動車九州、そして、GT-Rの故郷である栃木工場という陣容です。

栃木工場は、約293万㎡という敷地面積を誇る国内最大の工場であり、年間約25万台という生産能力を有しています。1968年の操業開始時は鋳造部品の製造を担っていましたが、’71年に車両の組み立て工場が完成。現在は、海外向けインフィニティブランドの中大型車、そして「フーガ」や「スカイライン」、「フェアレディZ」といった国内向けの高級車・スポーツカーを製造します。さらに栃木工場内には、1周6.5kmという巨大なテストコースも併設されているなど、とにかく広大です。

そんな栃木工場で、GT-RはフェアレディZなどと同じ製造ライン、つまり、複数の車種が流れる“混流生産”方式で作られています。工場内には、部品を積んだ無人運搬機がひっきりなしに行き交っており、必要な場所に必要な部品を随時届けています。これを止めてしまうと生産ラインに影響が及ぶため、見学前には注意事項の説明を入念に受けたのですが、それもそのハズ。車体のアッセンブリーラインだけで全長900m。必要な部品が届かないからちょっと取りに行く…、なんてワケにはいかないのでした。

さて、製造ラインを見ると、約6m間隔でフェアレディZやスカイラインがコンベア上をゆっくりと進んでいきます。現在はこのラインだけで、1日約210台がラインオフしていますが、GT-Rは輸出用を合わせても、平均して1日数台というペースなのだとか。1000万円級の高額車ですから飛ぶように売れる、ということはないのですが、GT-Rの組み立てにはこだわりが詰まっており、その分、手間も掛かるため、最大でも1日20台程度の生産が限界だといいます。

ご存知の方も多いかと思いますが、GT-Rのエンジンは“匠”と呼ばれる4名の職人が手で組み立てています。“最先端の電子装備を満載した最新スポーツカー”と聞くと、すべてオートメーション化された無人工場での組み立てを想像してしまいますが、こちら栃木工場のラインも、内外装をはじめ、エンジンやギヤボックス、サスペンションの装着まで、想像よりもはるかに多くの“人の手”による作業が行われています。

もちろん、重量物を持ち上げる、パーツを締め付ける、など、人の動きをサポートする最先端のロボットが随所に配置されていますが、肝心の“組み付け”や“調整”は、ほぼ人の手による作業といった印象です。例えば、ショックアブソーバーや足まわり部品などは、ロボットアームの補助により持ち上げる力は要りませんが、周囲のパーツに注意を払いながら、人の手で装着されていきます。その際、指定の位置に寸分のズレもなくピタリと収める様子は、まさにお見事。職人ワザという言葉がピッタリでした。

組み立ては外装や内装、エンジンなど、パートごとにまとめられており、工程ごとに入念なチェックを受けるほか、組み立て完了後も検査の数々が続きます。このように、出荷までに幾度となくチェックをくり返すことで、GT-Rが工業製品として高い精度と品質を実現しているのは事実。しかし、高品質なモノづくりの根本を支えているのは、匠の称号こそありませんが、寡黙にして冷静、正確にして精密に作業をこなす、栃木工場の“職人”たちであるのは間違いありません。

ロングドライブで感じた、飛ばさなくても感じることのできるクルマとしての出来の良さ。低速域での扱いやすさに代表される感触のチューニングやGT-Rならではの味わい。そして所有する悦び…、そうそう、ドアの開閉だけでも分かる高い精度感も、その一端でしょう。それらを生み出しているのは、少量生産を謳う欧州製のライバルにも全く劣ることのない、日産自動車 栃木工場のクラフトマンシップなのだ、と改めて実感したクルマ旅でした。

<SPECIFICATIONS>
☆プレミアムエディション
ボディサイズ:L4710×W1895×H1370mm
車重:1770kg
駆動方式:4WD
エンジン:3799cc V型6気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:6速AT(デュアルクラッチ式)
最高出力:570馬力/6800回転
最大トルク:65.0kg-m/3300〜5800回転
価格:1170万5040円

(文/村田尚之 写真/村田尚之、日産自動車)

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