【比較試乗】GT-R 対 Zニスモ…日産スポーツカーの両雄、それぞれの個性を問う
&GP / 2017年4月22日 12時0分
【比較試乗】GT-R 対 Zニスモ…日産スポーツカーの両雄、それぞれの個性を問う
クルマ好きが集まると「日本車ってスポーツモデルが少ないし、メーカーも元気ないよね…」という話になることがあります。
「うんうん…」なんて、つられそうになりますが、そこで必ずツッコミを入れることになるのです。「ちょっと待て。トヨタも『86』やマツダ『ロードスター』、日産の『GT-R』や『フェアレディZ』もあるだろ?」と。
GT-Rといえば、今や世界的なスーパーカー・リーグのエース級メンバーですし、フェアレディZといえば、日本で最も長い歴史を有するスポーツカーです。もちろん、誰も忘れてはいないでしょうし、先ほどのような会話の意図はといえば「もっといろんなスポーツカーがあればいいのにね…」というところでしょう。
とはいえ、日産のスポーツカーラインナップには、排気量3.5リッター超、かつ、300馬力から500馬力級のスポーツモデルが2車種もあるのです。冷静に考えてみると、これってかなりすごいコトなのでは? そこで今回は、GT-RとフェアレディZを乗り比べてみました。
ドライブに連れ出したのは、2017年モデルの「GT-R プレミアムエディション」、そして「フェアレディZ ニスモ」の2台です。GT-Rはラグジュアリー指向のグレード、Zはホットなスポーツモデルという選択ですが、いかがでしょう? なかなか悩ましい組み合わせだと思いませんか?
そこでまずは、両モデルの主要スペックを確認しましょう。
●GT-R プレミアムエディション
排気量:3799cc(ターボ過給)
最高出力:570馬力/最大トルク:65.0kg-m
車両重量:1770kg
パワーウエイトレシオ:3.105kg/馬力
●フェアレディZ ニスモ
排気量:3696cc(自然吸気)
最高出力:355馬力/最大トルク:38.1kg-m
車両重量:1540kg
パワーウエイトレシオ:4.338kg/馬力
こうして数値だけを見てみると、パフォーマンスにはかなりの違いがあるように思えます。そして多くの方が、直線ではGT-Rが爆発的な加速力を見せ、Zを一気に引き離す…というイメージをお持ちになるのではないでしょうか? しかし、その想像は半分当たりで、半分ハズレといったところです。とはいえ乗り比べるまでは、私も同じようなイメージでした。
ちなみに、海外向けのオフィシャルデータによると、GT-Rの0-100km/h加速は2.8秒。対するZ ニスモは5.2秒と、確かにタイムに開きがあるのは事実です。Zの名誉のために申し上げますが、数字からもお分かりのとおり、遅いというワケではありません。
ただし面白いことに、一般道や高速道路で乗り比べると、Z ニスモはGT-Rよりも“加速感”を強く感じるのです。その理由のひとつは、ギヤボックスにあるのでは? と思います。そう、GT-Rは電光石火の変速が可能なデュアルクラッチミッション、一方のZは、伝統的なHゲートの6速マニュアルギヤボックスです。
GT-Rは圧倒的な加速を実現しつつも、その伸びがシームレスゆえ、日本の法定速度程度では“激しさ”を感じるほどではありません。しかし、Zは変速時にアクセルを戻す→変速→再加速という、自らの意思で行う一連の動作、そして、それに伴って生じる加速Gの変化により、スピード感を感じやすいということなのです。
そして、こうした違いは、コーナリングやブレーキングはもちろん、ドライビングに関するあらゆる部分で、同じような違いを見せつけます。すなわち「最先端のテクノロジーが支える絶対的な高性能」と「伝統的な手法で研ぎ澄ました機械を操る楽しさ」という、クルマ好きにとってはなんとも悩ましい選択を、あらゆるシーンで問いかけてくるのです。
例えばワインディングロード。GT-Rであれば「あのコーナーをいとも簡単にクリアできた」という感動や驚きを味わうことができます。対するZ ニスモでは、ステアリング操作や変速操作が自分の想像どおりにピタリと決まれば、例えようのない爽快感や達成感を得ることができることでしょう。
では、同じ日産車でありながら、エンブレム以外に両車の共通点を見つけることはできないのか? といえば、そんなことはありません。
ともにスポーツモデルとしては、国内外を問わず、高級な部類に属する車種です。ちなみに、GT-Rは1170万5040円、Z ニスモは618万5160円というプライスタグを掲げています。その価格から想像するとおり、クルマ全体のセッティングはもちろん、細部の作り込みや装備品に至るまで妥協はなく、しっかりとしたポリシーが感じられます。
インテリアを見ても、好みの差こそあれ「このクラスになるとツッコミどころはないな…」と、天邪鬼な気持ちも消えてしまいます。シートなども、GT-Rは落ち着いたツヤとしっとりした触り心地のセミアニリン仕上げのレザーシートですが、縫製をはじめ細部の仕立てはなかなか上質。
Z ニスモはというと、専用チューニングのレカロ製セミバケットシートが備わりますが、これが見た目以上にがっしり、シェイプも深く「全く大人げないな」と、思わずニヤリとしてしまいます。
シートの機能や性能はもちろん、こうした装備品のセレクトやチューニングも、クルマのキャラクターを引き立てる上で重要な役割を担っているのは間違いないでしょう。何しろ、オレンジメタリックのボディにタン(というよりオレンジ)レザーなんていうキザなコーディネートが許されるのも、GT-Rだからだな、と思いますし、Z ニスモも伝統ある大人向けスポーツカーなのに、とぼやきつつも、高い敷居をまたいで体をガッチリとホールドするシートに収まると、開発陣の本気っぷりが伝わってきて、やっぱり口元が緩んでしまうのです。
そして、こうしたコダワリがあるからこそ、クルマ全体に本物ならではの趣やたたずまいが漂うのでは? と思います。例えば、高級リゾートホテルや名門ゴルフクラブのエントランスに置いてサマになる日本車って、思いのほか少ないと思うのですが、GT-RやZ ニスモなら「これぞ、日本のスポーツカーです!」と胸を張って停められますし、そんなシチュエーションにもピタリと収まります。
この2台、乗り味は大きく異なりますが、ドライバーに少なからぬ感動を与えてくれるスポーツカーであることは事実。また、車種固有の味わいが希薄になりつつある昨今、キャラクターの違いがしっかり残っているということも、スポーツカー好きとしてはうれしい限りです。
さらにもうひとつ。GT-Rはスペック偏重なクルマ作りによって誕生した無味乾燥で暴力的なクルマではなく、グランツーリズモとしてのジェントルさを宿しているいうこと。そして、Zは名ばかりのスポーツカーではなく、ドライバーに挑んでくるかのようなホットな一面がある、といったことを身をもって体験できたのが、今回の乗り比べで得た大きな収穫でした。
<SPECIFICATIONS>
☆GT-R プレミアムエディション
ボディサイズ:L4710×W1895×H1370mm
車重:1770kg
駆動方式:4WD
エンジン:3799cc V型6気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:6AT(デュアルクラッチ式)
最高出力:570馬力/6800回転
最大トルク:65.0kg-m/3300〜5800回転
価格:1170万5040円
<SPECIFICATIONS>
☆フェアレディZ ニスモ
ボディサイズ:L4330×W1870×H1315mm
車両重量:1540kg
駆動方式:FR
エンジン:3696cc V型6気筒 DOHC
最高出力:355馬力/7400回転
最大トルク:38.1kg-m/5200回転
トランスミッション:6速MT
価格:618万5160円
(文/村田尚之 写真/村田尚之、日産自動車)
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