【ルノー メガーヌRS試乗】「サヨナラ」が惜しい!ドライバーの血がたぎる熱きホットハッチ
&GP / 2017年5月21日 8時0分
【ルノー メガーヌRS試乗】「サヨナラ」が惜しい!ドライバーの血がたぎる熱きホットハッチ
コンパクトなハッチバックの車体にハイパワーなエンジンを搭載し、キビキビとした走りを楽しめるモデルを“ホットハッチ”と呼びますが、ルノーの「メガーヌ RS(ルノー・スポール) 273」は、今では数少なくなったそんなカテゴリーの代表的な存在。
かつては“FF世界最速”の称号を誇ったフランス製ホットハッチも、ついに現地では生産が終了。今回、その有終の美を飾るべく上陸した限定車「メガーヌ RS 273 ファイナルエディション」をドライブすることができましたので、進化の足跡を振り返りながら、一時代を築いた走りの魅力を改めてレポートしたいと思います。
メガーヌ RS 273は、3世代目となるメガーヌをベースに、F1マシンなども手掛けるルノー・スポール社が開発したモデル。前身である2世代目のメガーヌ RSから、2リッターターボエンジンや、トルクステアを抑制するダブルアクスルストラット式のフロントサスペンション、ヘリカルLSDやブレンボ製のブレーキなどの技術を受け継いでいます。
そのメカニカルな技術を2世代目よりも低重心かつ空力性能に優れ、剛性も高い3世代目メガーヌのボディに搭載しただけでなく、電子制御スロットルや車両各部に搭載されたセンサーを統合してコントロールする“RSモニター”や“RSダイナミックマネジメント”などの電子制御技術も搭載。メカニカルと電子制御の融合を実現し、エンジンパワーも273馬力に高められたその走行性能は、まさに最終進化型と呼ぶにふさわしい仕上がりとなっています。
2009年の初登場以来、3世代目のメガーヌ RSは数々の記録によってその実力を証明し続けてきました。2011年には、ドイツ・ニュルブルクリンクの北コースで、当時の“市販FF車最速”となるタイムを記録し、2014年にはさらにそのタイムを更新。8分を切る7分54秒36という記録は、従来のFF車の常識を塗り替える歴史的なものでした。
日本においても、2013年に鈴鹿サーキットで市販FF車では実質的に最速となるタイムをたたき出し、2014年にはさらにその記録を5秒以上短縮する2分28秒465を記録しています。
今回ドライブしたのは、そうした輝かしい歴史の有終の美を飾るべくリリースされた特別仕様車メガーヌ RS 273 ファイナルエディションに、アクラポヴィッチ製のチタンマフラーや、マルケジーニの軽量鍛造アロイホイールを装備した、まさに特別な1台の「メガーヌ RS 273 パックスポール」(限定20台)。ボディサイドのシルバーのデカールや、ルノー・スポールのテストドライバー、ロラン・ウルゴン氏のサイン入りシリアルナンバープレートも、パックスポーツ専用のディテールです。
さて、試乗とまいりましょう。ホールド性の高いレカロ社製のシートに滑り込むと、目の前にはスポーツモデルらしい良好な視界が広がり、レッドゾーンが上方に位置するタコメーターがドライバーの気分を高めてくれます。
スムーズな操作感の6速MTのシフトノブを操作して走り出すと、街中ではサーキットで“FF最速”を競ったマシンとは思えないほど、良好な乗り心地を体感できます。RSダイナミックマネジメントと呼ばれる電子制御機構(ESC)により、3つのモードが選べますが、「ノーマル」モードでは過激なレスポンスが抑えられ、エンジンの回転を抑えて走る限り、乗りにくさを感じることはありません。もちろん、このモードでも少しアクセルを踏み込んで回転数を上げれば、周囲のクルマを軽く置き去りにすることくらい、朝飯前です。
高速道路に入り、モードを「スポーツ」に切り替えると、チタン製スポーツマフラーからはき出される排気音はさらに野太くなり、アクセルをオフにすると「パンッ、パンッ」というアフターファイヤーの音も耳に入ってきて、気分をさらに高めてくれます。ちなみにこのマフラー、音の演出だけにとどまらず、ノーマルのそれと比べて4kg軽く仕上がっているなど、機能性の高いパーツとなっています。
アクセルレスポンスは鋭くなり、軽くペダルに足を載せただけで、シートバックに背中が押し付けられるような強力な加速で、車体を前へと進めます。ハンドルを切った状態でアクセルを踏み込むとトルクステアも顔を出し、このマシンが一時代を築いたスポーツモデルであることを思い出させてくれます。
足回りはガチガチに固められているわけではなく、普通に流して走る分には、硬さを感じることもなく良好な乗り心地。少しペースを上げて荷重をかけてやると、その分だけタイヤを地面に押し付ける力が増していくようなフィーリングで、ハイパワーなFF車にありがちなアンダーステアなど感じさせることなく、グイグイと曲がってくれます。パックスポーツに採用されたホイールは、ノーマルのそれと比べて1本当たり3.3kgも軽量ですが、これも、軽快なフットワークの一因となっている印象です。
走行中は、電子制御がドライブをアシストしてはくれますが、クルマまかせでいつの間にか速く走れていたという感覚ではなく、自分で明確に操っているというフィーリングが伝わってきます。最近のクルマでは少なくなったこうした感覚は、文句なく楽しいですね! ちょっとアクセルを踏み込めるシーンを見付けて30分間もドライブすれば、額や手のひらにじんわりと汗がにじみ「スポーツドライブを楽しんだ!」という実感とともに、体内の血液の温度が2、3℃上がったかのような感覚が味わえます。
残念ながらこのパックスポール、限定数の20台をすでに完売したとのことですが、メガーヌ RS 273 ファイナルエディションは、まだ少しだけ国内在庫が残っている模様です。最速FFの最終進化型、その熱い走りを味わうなら、今が最後のチャンスです!
<SPECIFICATIONS>
☆RS 273 パックスポール
ボディサイズ:L4320×W1850×H1435mm
車重:1420kg
駆動方式:FF
エンジン:1998cc 直列4気筒DOHC ターボ
トランスミッション:6速MT
最高出力:273馬力/5500回転
最大トルク:36.7kg-m/3000回転
価格:419万円(参考価格)
(文/増谷茂樹 写真/&GP編集部)
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