世界遺産の中世の街・プラハが「建築博物館」と呼ばれる理由とは
GOTRIP! / 2017年2月25日 5時30分
チェコの首都プラハ。かつて神聖ローマ帝国の都として栄えたこの街は、「百塔の街」「黄金の都」など、数々の異名をとっています。
プラハを形容する言葉のひとつが「建築博物館」。プラハには、ヨーロッパの歴史を彩ってきたさまざまな建築様式の建物が並んでいるというだけでなく、それぞれの建造物の質がきわめて高いからです。
プラハが「建築博物館」と称されるゆえんとなった、多彩で壮麗な建造物の数々をご紹介しましょう。
・ロマネスク様式(10世紀後半~13世紀)
ロマネスク建築が生まれたのは、建築資材が木造から石造りへと変化した時代。地域や宗派によって特徴はさまざまですが、後世の建造物に比べ、質実剛健な建物が多い傾向にあります。
代表的なプラハのロマネスク建築のひとつが、プラハ城内にある聖イジー教会。920年に木造で完成したプラハ最古の教会です。
火災に遭い、1142年に石造りの初期ロマネスク様式に改築されました。17世紀に初期バロック様式で増築されたために正面は華やかな姿をしていますが、内部はロマネスク様式らしいシンプルで力強い造りになっています。
・ゴシック様式(12世紀半ば~15世紀末)
ロマネスク様式に比べ、繊細さや装飾性が発展したゴシック様式の時代。飛梁の発明により壁は薄くなり、高い天井と大きな窓がつくられるようになりました。
プラハを代表するゴシック建築といえば、プラハ城の代名詞存在である、聖ヴィート大聖堂。
14世紀、カレル4世の命により、ロマネスク様式からゴシック様式に改築されました。最終的な完成を見るまでに着工から600年もかかったため、ルネッサンスやネオゴシックの要素も取り入れられています。
聖ヴィート大聖堂の内部には、アルフォンス・ムハ(ミュシャ)が手掛けた魅惑のステンドグラスが。
このような華やかなステンドグラス装飾が可能になったのも、ゴシック様式の時代からです。
旧市街広場に建つティーン教会も、代表的なゴシック建築。神秘的な印象の塔が特徴で、「これぞプラハ」という景観をつくっています。
・ルネッサンス様式(15~16世紀初め)
ルネッサンスは、イタリアで始まった古典古代文化の復興運動。曲線を用いた、シンプルでありながら華やかなデザインに特徴があります。
ルネッサンス期の特徴的な装飾技法が、スグラフィット装飾(だまし絵)。プラハでは、旧市庁舎の端の建物である「一分の家」にこの装飾が見られます。
離れて見ると凹凸があるように見える視覚効果によって、建物がより華やかに、立体的に見えるのです。
・バロック様式(17世紀初め~18世紀半ば)
イタリアのローマで誕生し、フランスで発展したのがバロック様式。楕円や曲線を多用する動きのあるデザインや、華美な装飾が特徴。
プラハでは、ロレッタ教会や聖ミクラーシュ教会をはじめ、市内の多くの教会がこの時期にバロック様式に建て替えられました。
マラー・ストラナ広場にある聖ミクラーシュ教会は、内装も圧巻の華やかさ。華麗なるバロックの世界にため息が漏れます。
・アールヌーヴォー様式(19世紀末~20世紀初め)
フランスで生まれた装飾美術で、従来の形式にとらわれない、花やつる草など植物の有機的で流れるようなフォルムを取り入れた装飾手法を指します。
プラハでアールヌーヴォーといえば、市民会館。1911年に完成した壮麗な建物で、チェコ人の民族意識を鼓舞する目的から、プラハでも屈指の豪華な建造物となりました。
建設当時は「景観を害する」との批判もありましたが、今ではプラハの人々の誇りとなっています。ガイドツアーで見学できる、ムハ(ミュシャ)が内装を手掛けた「市長の間」は必見。
ほかにも、ピカソの絵画で知られるキュビズム様式や、20世紀後半以降の機能主義を中心とする現代建築など、時代を代表する建造物が並ぶプラハの街は、歴史の移り変わりを映し出す鏡そのもの。
プラハを歩けば、多彩で美しい建造物の数々に、そしてそれらが織りなす街並みに、きっと魅了されるはずです。
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