【日本人が知らないニッポン】小田原の梅が彩る古の武術「流鏑馬」
GOTRIP! / 2017年2月14日 16時30分
JR御殿場線下曽我駅の近くに、曽我梅林という場所が存在します。
毎年2月から3月にかけ、ここでは『小田原梅まつり』が開催されます。ちょうどこの時期が、小田原での梅の見頃です。
咲き誇る梅の花を背に、地響きのような蹄の音が聞こえてきました。大きな弓を持った騎馬武者が、こちらに向かってきます。
このイベントの恒例行事、武田流馬上弓術です。
・和弓は世界随一
流鏑馬と呼ばれているこの武術は、世界で最も長大な弓を使用します。
和弓は極めて特異な形状です。握りを中心にした上下が非対称で、一見とてもバランスが悪そうです。ですが弓道の達人に言わせれば、「これが最もバランスの取れた上下比率」とのこと。また、下が短いため馬上弓としても利用することができます。
そういえば、モンゴルや中央アジアの騎馬弓兵が持っている弓はいずれも短弓です。
14世紀から15世紀にかけてのヨーロッパで繰り広げられた百年戦争では、イングランド軍がロングボウという2m級の長弓を活用しました。ロングボウの運用方法は、何十人という数で横一列に並んでひたすら連射するというもの。ですが馬上での使用は想定されていません。だから上下比率はまったく同じです。
つまり「馬に乗った状態での運用」と「弓の長大化」は、本来矛盾する要素なのです。それを両立させた和弓は、世界戦争史上他に例のない兵器でもあります。
・武道は神事
流鏑馬は、弓術競技のみを指すものではありません。
日本の武道は、神事としての要素を含んでいます。我々の国の文化行事は、すべて宗教的儀式と一体であることを忘れてはいけません。日本人は「無神論者」を自称する人が多いですが、それでも各地で行われる伝統行事を廃止しようという声は皆無です。ということは、日本人も何かしらの宗教を信じているということになります。
たとえば、アメリカを含めた西洋社会では「白か黒か」「敵対するふたつの陣営のどちらが絶対正義か」という水と油の対決ばかり続いてきました。キリスト教とイスラム教、カトリックとプロテスタント、イギリスとフランス、西側と東側。どれも「相手を根絶やしにするまで戦う」という発想の対決です。
だから欧米の「無神論者」は容赦がありません。アメリカの生物学者リチャード・ドーキンス博士のように、少しでも宗教色が見える行事や催事は迷わず非難の対象にします。これは結局、「異教徒を根絶やしにしなければならない」という昔ながらの宗教的発想から1mmもはみ出していないという証拠なのですが。
日本の場合、そうした発想とは無縁だからこそ古来からの行事が脈々と受け継がれてきました。弓を使った戦争はもう起きませんが、だからといって弓術を捨てることはありません。むしろ「古の伝統行事にこそ精神性がある」と、日本人の大多数が認めています。
・来月も小田原で流鏑馬
武道が神事である以上、「いくつ的を射抜いた」ということはあまり大きな意味を持ちません。
点数を超越した精神性、それこそが武道の目的です。だからこそ「流鏑馬」と呼ばれるものの中には礼法も含まれています。競争相手に対して非難ではなく、敬意で接するための戒律です。そこに「相手を根絶やしにする」という考えが入り込む余地は、寸分もありません。
もし流鏑馬から礼法を排除すれば、それはもはや神事ではなくなります。そして神事でなくなった流鏑馬は、ただの射的に成り下がってしまうでしょう。
「日本の財産」とも表現すべき流鏑馬ですが、3月5日(日)に小田原城址公園で『小田原城馬上弓くらべ大会』が催されます。これは全国の射手が集まる「流鏑馬オリンピック」のようなイベントで、和種馬の保存継承を一般にPRするという性質も有しています。
武士の魂は、風習とともに今も我々の国に根付いています。大迫力の流鏑馬を、ぜひ一度目の当たりにしてはいかがでしょうか。
Post: GoTrip! http://gotrip.jp/ 旅に行きたくなるメディア
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
【疲れにくい、怪我しにくい、介護しやすい!】 日常の動作をラクにする「古武術」の知恵 7/24発売
PR TIMES / 2024年7月23日 16時45分
-
【fence&art】小田原ダイヤ街にて、工事期間中の仮囲いをキャンバスに3Dアート企画『小田原忍者ストリート~とびだす風魔忍者~』を開催!
PR TIMES / 2024年7月17日 10時0分
-
宇和海を舞台に木造船が速さ競う 180年前から伝わる伝統「和舟競漕」
南海放送NEWS / 2024年7月16日 18時0分
-
モンゴル夏の祭典、ナーダム開幕 相撲や弓術の選手らが熱戦
共同通信 / 2024年7月11日 19時40分
-
第23回「小田原食と緑の交流推進協議会」総会開催 5議案全会一致で可決〔神奈川〕
PR TIMES / 2024年7月1日 19時45分
ランキング
-
1恋人としては良いけど… 男性が「結婚をためらう女性」の特徴とは
ananweb / 2024年7月27日 20時15分
-
2これは今すぐ試したい!岡山県が提唱する、驚くほど簡単で綺麗な桃の切り方とは。≪実際にやってみた≫
東京バーゲンマニア / 2024年7月27日 19時9分
-
3出会った男性は100人以上…「婚活中毒」な35歳女性。目当ての男性から避けられる“残念な理由”は
女子SPA! / 2024年7月27日 15時47分
-
4女性から自然と「好かれる/嫌われる男性」に共通している“6つの特徴”
日刊SPA! / 2024年7月28日 8時52分
-
5老眼も眼精疲労もこれで防衛できる…眼科医直伝どんなに忙しい人でも毎日続けられる"両目の自己回復習慣"
プレジデントオンライン / 2024年7月27日 10時15分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)