イベリア半島にあるのにイギリス領、ジブラルタルってどんなとこ?
GOTRIP! / 2018年1月5日 6時30分
イベリア半島の南東端に位置するジブラルタル。地図を見ればまるでスペインの一部かのように見えますが、ここはれっきとしたイギリス領。
1713年のユトレヒト条約の取り決めによってイギリスに統治権が与えられて以来、現在もイギリス領としてイギリス軍が駐留しています。
日本ではあまり馴染みがないものの、本国から離れたイギリス領というだけでなく、ヨーロッパ唯一の猿の生息地として、あるいは「ヨーロッパで最も危険」といわれる空港を有する地として、その特異性が際立つジブラルタル。
いったいどんなところなのか、実際に行って確かめてみました。
・ジブラルタル基本知識
わずか6.5キロ平方メートルの面積に、およそ3万人の人々が暮らすジブラルタル。北は中立地帯を挟んでスペインと国境を接し、南はジブラルタル海峡を挟んでアフリカ大陸に面する交通の要衝です。
住民のうち、もっとも多いのがイギリス系で27パーセント、次いでスペイン系が24パーセント、イタリア系やポルトガル系もそれぞれ19、11パーセントと高い割合を占めています。
通貨はジブラルタルポンド。レートはイギリスポンドと同じで、イギリスポンドをジブラルタルで使うことも可能。ユーロ圏からの観光客が多いため、たいていの場所でユーロでの支払いも受け付けています。
300年以上にわたってイギリスが統治を続けているジブラルタルですが、スペインは現在も返還を求めており、その帰属問題が解決したわけではありません。
ジブラルタルへは、スペインから徒歩で国境を超えるのが一般的。また、イギリス本国からは空路で直接ジブラルタル入りすることができるほか、クルーズ船の寄港地としても人気を集めています。
・随所にイギリスの香りを感じる街並み
イギリス領だけあって、赤い2階建てバス「ダブルデッカー」が走り、赤い電話ボックスや郵便ポストが並ぶ街並みにはイギリスの香りが漂います。通りの名前をとってみても、「ウィンストン・チャーチル通り」などイギリス感満点。
フィッシュアンドチップスなどのイギリス名物を食べさせるお店や、イギリス風のパブ、イギリス発のスーパーやコーヒーチェーンもあり、ここがイギリス領であることを強く主張しています。
その一方で、白と黄色の南欧風の建物があったり、モロッコでよく見かけるような個人経営の小さな日用品店があったりと、イギリス本国に比べるとどこか垢抜けない雑多な印象もあり、ここが文化の交差点であることを実感させます。
イギリス領とはいっても、スペインと国境を接し、短いところではわずか14キロほどしかないジブラルタル海峡を挟んでアフリカ大陸と向かい合うジブラルタルは、やはり本国とは違っているのです。
・観光客にはタバコとお酒が人気
自由港であるジブラルタルでは免税価格で買い物ができるため、街なかには時計や貴金属、香水や有名ブランドのブティックが並んでいます。
そんななかでも特に人だかりを集めていたのが、タバコとお酒の専門店。珍しいタバコやお酒が安く買えるというのは、愛好者にはたまらないのでしょうね。
・ジブラルタルの象徴「ザ・ロック」
ジブラルタルの象徴が、街のあちこちから見える切り立った岩山、ターリクの山。711年にこの地に侵入したアラブの首長ターリク・イブン・ザイードが「ターリクの山」と名付け、それがなまってジブラルタルになったのだとか。
英語では「ザ・ロック」と呼ばれ、ジブラルタルの代名詞として親しまれています。ザ・ロックの山頂からは、天気の良い日にはジブラルタル海峡の向こうにアフリカ大陸を望む絶景を楽しむことができます。
・ヨーロッパで唯一の野生の猿
ザ・ロックは、ヨーロッパで唯一の野生の猿の生息地としても知られています。猿は9世紀にアラブ人がアフリカから持ち込んだといわれており、「岩山に猿がいるかぎりイギリスの統治が続く」という言い伝えもあります。
ザ・ロックの猿たちはイギリス軍によって保護されていて、第二次世界大戦中に物資不足で猿が激減したときには、当時の首相チャーチルが直々にジブラルタルの猿の保護を命じたというエピソードも残っています。
標高426メートルへの山頂へはロープウェーが便利。展望台やその周辺には、もはやザ・ロックの主となった猿たちが我が物顔に歩き回っています。観光客に取り囲まれてもまったく動じる様子はなく、貫録十分。
人馴れした猿が多いので、モデル写真のような猿のポートレートや猿とのツーショットも撮れるかもしれません。ただし、ビニール袋を持っていると高確率で襲われるので要注意。
・ヨーロッパで最も危険な空港
イギリス本国とジブラルタルを結ぶ旅客機や軍用機が離発着するジブラルタル空港は、パイロットが選ぶ危険な空港でヨーロッパの1位に選ばれた空港。そのわけは、ザ・ロックが空港のそばにあるため、岩山に接触しないようにスレスレの場所を飛行しなければならないからです。
加えて、敷地面積が十分ではなかったため、離発着の際には車両や歩行者が通る一般道を航空機が滑走するという驚くべき仕組みをとっています。
筆者がジブラルタルを訪れた際、偶然軍用機の離陸の場面に遭遇しました。遮断機により道路が通行止めになり、「なぜだろう」と思っていると、小型の航空機の姿が。
その軍用機は一度目の前の道路を横断した後、一度折り返して再び目の前を通り、空へと飛び立っていきました。街なかの一般道を航空機が横断するという珍しい光景が日常的に繰り広げられているのがジブラルタルなのです。
領土はわずか6.5キロ平方メートルと小さいながら、さまざまな話題に事欠かない不思議の地、ジブラルタル。
スペインやモロッコを訪れたら、足を延ばしてこの特異な場所をその目で確かめてみてはいかがでしょうか。
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