エストニアの象徴!世界遺産の町・タリンの山の手、トームペアの丘を散策
GOTRIP! / 2018年1月2日 6時30分
おとぎの国を思わせるような町並みが広がるエストニアの首都、タリン。中世の息づかいが聞こえてくる旧市街は、まるごと世界遺産に登録されています。
タリンの歴史地区は、大きく分けて支配者や貴族たちが暮らしていた山の手と、商人や職人たちが築いた下町の2つのエリアに分かれています。
そのうち、「山の手」と呼ばれるのが石灰岩でできた丘の上に広がる「トームペア」。
「タリン」という名前が「デンマーク人の町、城」を意味する「Taani Linn」に由来するように、タリンの町は13世紀、トームペアの丘にデンマーク人が城を築いたことから発展をはじめます。
その後はドイツ人の入植が進み、13世紀なかばにはドイツ名の「レファル」でハンザ同盟に加盟。ロシアとの交易の拠点として大いなる繁栄の時期を迎えるのです。
・古代の王が眠る墓陵!?
現在のタリンの原型ともいえるトームペア。市街を見下ろす高台に位置するこの地区は、時代を超えて常に権力の象徴となってきました。
エストニアの神話では、トームペアは古代の王・カレフが眠る墓陵とされています。カレフの妻・リンダは彼を埋葬した場所に巨大な石を集めて墓陵を造ろうとしたものの、まもなく完成というところで最後の石を落としてしまい、疲れ果てた彼女は石の上に腰を下ろし涙に暮れたというのです。
その伝説を信じる、信じないは別として、トームペアには今もにぎやかな下町とは違った重厚な空気が流れています。
・トームペア城
トームペアの象徴ともいえるのが、リヴォニア帯剣騎士団が13世紀前半に築いた要塞がもととなったトームペア城。数世紀にわたって時の支配者によって改築が繰り返されましたが、13世紀に造られた基本形状は現在も保たれています。
今日見られるようなバロック様式の建物になったのは、18世紀後半にエカテリーナ2世が知事官邸として使うために改築を加えてからのこと。現在は国会議事堂として使われています。
北側と西側の外壁と3つの塔は15世紀の姿をとどめており、誇らしげにエストニア国旗を掲げる南西の塔「のっぽのヘルマン」は国を象徴する存在です。
・アレクサンドル・ネフスキー大聖堂
トームペア城の向かいに建つ大きな建物が、ロシア正教教会であるアレクサンドル・ネフスキー大聖堂。帝政ロシア時代に時のツァーリ、アレクサンドル3世がエストニア人の民族運動を抑えるために建設を命じ、1901年に完成しました。
玉ねぎ型のドームをもつその姿は、タリンの町で異彩を放っており、目を奪わずにはいられません。ロシアからの独立直後、「国の象徴であるトームペアにロシアの聖堂は似つかわしくない」とこの聖堂を取り壊そうとする動きもありましたが、ロシア系住民の反発もあって実現せず今に至っています。
エストニア人にとっては依然として複雑な感情を呼び起こす建物であることに変わりはありませんが、現在では建築として評価する声が高まっているのだとか。内部には、黄金色に輝くイコンやモザイク画で覆われた荘厳な空間が広がっています。
・大聖堂(トームキリク)
1219年にデンマーク人がこの地を占領してすぐに建てた、エストニア最古の教会。現在見られる建物は、1684年の火災後およそ100年をかけて再建されたものです。
大聖堂内部は、シンプルながら歴史の重みが感じられる重厚な空間。教会であると同時に墓所としても知られていて、北欧戦争でスウェーデン軍を率いたポンタス・ド・ラ・ガーディや、トームペアの貴族たち、そしてのちにはトームペアの職人たちがここに葬られてきました。
塔にのぼることもできるので、トームペアでひときわ高いところからの景色を楽しんでみるのもいいでしょう。
・展望台
町を見下ろす高台だけあって、トームペアにはタリン旧市街の美しい風景を見渡せる展望台がいくつかあります。展望台の周辺ではストリートミュージシャンが楽器を奏でていたりして、下町とは違った静かで落ち着いた空気が流れています。
町を歩くだけでもその美しさに心躍るタリンですが、高いところから見る風景もまた格別。
タリンとヘルシンキを結ぶフェリーが行き来するバルト海や、オレンジの三角屋根をもつ塔、ひときわ背の高い聖オレフ教会の塔・・・絵本から飛び出してきたかのようなタリンの風景は、きっといつまでも忘れられません。
地元の人々や世界中からの観光客で賑わう下町とは違った、ゆったりとした時間が流れるトームペア。ここを歩けば、また新たなタリンの魅力が見えてくることでしょう。
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