【世界の博物館】戦時下の極秘の地下司令部を公開、ロンドンの密かな人気スポット「チャーチル博物館」
GOTRIP! / 2017年11月29日 6時30分
時計台「ビッグ・ベン」で有名な国会議事堂やバッキンガム宮殿など、世界的に知られる観光スポットを多数かかえるロンドン。しかし、そんなロンドン中心部にも日本人のあいだではあまり知られていない人気スポットがあります。
それが、セント・ジェイムズ・パークの向かいに位置する「チャーチル博物館(チャーチル博物館と戦時内閣執務室)」。
イギリスを第2次世界大戦での勝利に導いたウィンストン・チャーチルの功績を称えた博物館で、ロンドンで最も人気のある歴史博物館のひとつといわれるほど、ヨーロッパ人観光客を中心に高い人気を誇っています。ときには入場待ちの行列ができることも。
この博物館がそれほどの人気を集めるわけは、「チャーチル博物館と戦時内閣執務室」という名称にも表れている通り、第2次世界大戦下でイギリス政府が戦争の指揮を執るために極秘に設けた地下施設が公開されているからなのです。
地下に指令本部を設けるなんてまるでスパイ映画のようですが、映画セットのような施設が70年ほど前までここロンドンで実際に使われていたのです。
イギリス大蔵省の地下に設けられたこの内閣戦時執務室は、第2次世界大戦が勃発した1939年に稼働が始まり、おもにチャーチル内閣のもとで使用されました。
「内閣戦時執務室」というと、まるで執務のための部屋がひとつだけあるように聞こえますが、当時の施設の延べ床面積は1万2000平米。閣議室や作戦室はもちろんのこと、食堂や病院、射撃室、さらには最大で500人を超えるスタッフのための宿泊施設も含む、大がかりな複合施設だったのです。
250キロの爆弾の直撃にも耐えられる掩体壕(えんたいごう)を兼ねており、建物は厚さ1~3メートルの分厚いコンクリート層で覆われています。
この内閣戦時執務室は、1945年8月の日本降伏後に廃止・閉鎖された後、1984年に一般公開を開始。2003年に展示部分の拡張が行われ、2005年にはチャーチルの生涯に関する展示部門を併設し、「チャーチル博物館」として公開されるようになりました。
現在一般に公開されているのは広大な地下複合施設の一部とはいえ、多数の部屋を擁する見ごたえ抜群の博物館。第2次世界大戦下のイギリス政治などを解説する展示のほかに、実際に使われていた部屋を当時の様子そのままに再現した空間の数々が展示されています。
廊下に配置されている調度品や看板もレトロ感たっぷりで、当時にタイムスリップしたかのよう。各部屋には等身大の人形も配置されており、戦時下のリアルな雰囲気が伝わってきます。
閣議室や作戦室、電話室、タイプ室、チャーチルの寝室、チャーチル夫人の寝室、キッチン、ダイニングなどさまざまな部屋をオーディオガイドとともに見学しましょう。
・閣議室
チャーチルを首相とする戦時内閣はここで閣議を開き、軍事政策や国内政策について議論しました。
・ラジオ放送室
この部屋は、チャーチルが自身の寝室で発した肉声を放送電波にのせるための部屋でした。歴史的な演説は、まさにここから発信されていたのです。
・作戦室
英語では「マップ・ルーム」と呼ばれるこの部屋は、戦争の指揮進行が行われていた作戦室。イギリス軍の各部門の本部への直通回線が置かれ、それぞのステーションには連絡係が配置されていました。
・チャーチルの寝室
作戦室の隣にはチャーチルの寝室がありますが、実際に彼がここで寝たのは3回だけだといいます。
まさに、世界の歴史を水面下で創り出していたチャーチルの内閣戦時執務室。
戦時下という特殊な状況下で設置された珍しい部屋の数々が見られるゆえに、イギリスの歴史やチャーチルその人に特別な関心がない人でもじゅうぶん楽しめるはずです。
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