【知られざる世界の常識】モロッコでは、公共の場所に国王の写真を飾ることが法律で義務付けられている!?
GOTRIP! / 2018年5月12日 6時30分
エキゾチックな風景の数々や、おしゃれな雑貨で人気のモロッコ。正式国名はモロッコ王国で、その名の通り国王を元首とする立憲君主国家です。
モロッコを旅すると、いたるところで一人の男性の肖像を目にすることに気づくことでしょう。
それが、1999年に即位した現国王ムハンマド6世。王宮などの王室関連施設はもちろんのこと、駅やホテル、レストラン、商業施設などありとあらゆる公共の場に国王の写真が飾られているのです。
実は、モロッコでは人が集まるところには国王の写真を掲げることが法律で定められています。というと、どこかの独裁国家のように聞こえますが、モロッコでは少々事情が異なり、国王の写真であればどんな写真でもオッケー。
そのため、いかにも公式ポートレートとして撮影されたような写真から、スナップ写真のような親しみやすいものまで、さまざまなシーンやポーズの国王の写真に出会うことができます。
モロッコには国王の写真を専門に売る店も存在します。しかもムハンマド6世は国民のあいだで人気が高く、義務だからというよりは「欲しいから」と買っていく人も少なくないとか。
実際、町の商店などでは何枚もの国王の写真を飾っている店も多く、単なる義務感からそうしているわけではないことが見てとれます。宣伝の意味合いもあるのか、国王が訪れたときの写真を掲げているお店も多数。
モロッコでは王室に関する話題はデリケートな問題のため、国民は王室や国王に対する話題には口をつぐむ傾向にありましたが、現国王のムハンマド6世が即位してからは、「王様がいかに素晴らしいか」を自ら口にする国民が増えたといいます。
1999年に即位したムハンマド6世は、前国王ハッサン2世の長男。公共交通機関を使用したり、自ら車を運転して出かけたり、小さな村を単独で視察したりと、国王としては異例の行動の数々から、かつてないほど国民に身近な存在として親しまれています。
2010年から2012年にかけてアラブ世界で起こった「アラブの春」の影響を受けつつも、モロッコが王政を守り抜くことができたのは、ムハンマド6世が国民の声に耳を傾けて改革姿勢をとったことと無関係ではないでしょう。
モロッコ国王としては異例のムハンマド6世のあり方は、自身の結婚にも表れています。
ムハンマド6世の妻であるラーラ・サルマ王妃は、モロッコ王室初の一般人出身の王妃。大学教授の娘として生まれ、カサブランカでコンピューター・エンジニアとして働いていた彼女は、国王に見初められ2002年に王妃となりました。
しかも、モロッコでは国王の結婚は第1子の誕生まで公表されないのが常でしたが、ムハンマド6世の結婚にあたっては、結婚前から花嫁の写真が公開され、2人の結婚を祝う宴の場にもテレビカメラが持ち込まれたという前例のないものでした。
1659年からの歴史をもつ王家であり、預言者ムハンマドの末裔とされるモロッコ国王は多くの国民の尊敬を集めていますが、若きムハンマド6世は「これまでと同じではいけない」と時代の空気を敏感に感じ取ったのかもしれません。
どこにどんな国王の写真があるのかを観察しながら町を歩けば、モロッコの旅がいっそう楽しいものになるはずです。
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