ヴァレッタから日帰りOK、聖パウロと地下墓地の町、マルタ島のラバトを散策
GOTRIP! / 2018年6月20日 6時30分
首都ヴァレッタからバスでおよそ35分。マルタ島中央部、「静寂の町」の異名をもつのが、古都イムディーナです。
城壁に囲まれたイムディーナと、その周囲に広がるラバトは、もともとひとつの町でした。
その歴史は古く、青銅時代にはすでに砦が築かれ、紀元前800年には古代フェニキア人が砦の周辺に壁を建設。その後、ローマ人によって、町は一時現在の3倍もの大きさに拡張されました。
ところが、870年にアラブ人がマルタ島に侵攻。彼らは、町を城壁に囲まれたイムディーナと、その外側に広がるラバトに分割したのです。
現在、イムディーナは中世の面影を残す古都として、ラバトは聖パウロと地下墓地の町として知られています。
ラバトへは、首都のヴァレッタやスリーマから日帰り旅行が可能。イムディーナと合わせても、一日で十分観光できます。
聖パウロは、キリスト教をマルタにもたらした人物。敬虔なカトリック教徒が多いマルタにとって、きわめて重要な存在です。
西暦60年ごろ、聖パウロは政治的反逆者として審理を受けるため、ローマへと連れて行かれる途中に船が難破し、マルタ島に漂着。マルタでキリスト教を布教しました。
そんな聖パウロにちなんで建てられたのが、ラバトの中心に建つ聖パウロ教会。17世紀に建設されたバロック様式の堂々たる教会で、内部はマッティア・プレーティのフレスコ画で彩られています。
伝説によると、この教会は聖パウロが3ヵ月間隠れ住んでいた洞窟の上に建てられたとか。地下に下りると、聖パウロが住んでいたという洞窟が残っており、聖パウロの彫像が飾られています。
1990年には、マルタを訪れたローマ教皇ヨハネ・パウロ2世もここで祈りを捧げたといいます。
もうひとつ、ラバトの代名詞となっているのが、カタコンベ(地下墓地)。
ローマ時代、公衆衛生の観点から、死者を城壁内(現在のイムディーナ)に葬ることは禁止されていました。そこで、当時の町の郊外にあたる現在のラバトに大規模な地下墓地が建設されたのです。
ラバトには複数の地下墓地があり、なかでも最も大規模なものが聖パウロの地下墓地。
22万2000平米の広さに、1000もの墓所が連なるマルタでも最大規模の地下墓地で、4~6世紀の初期キリスト教徒が埋葬されています。
ラバトの町を歩くとき、一見なんの変哲もない通りを歩いているつもりでも、実は足元には広大な墓地が広がっているのです。そういわれると、ちょっと薄気味悪いような、歴史ロマンを掻き立てられるような・・・
入口こそあまり目立ちませんが、地下に入ってみると、薄暗い空間内に、延々と墓所が続いています。
中央にホールがあり、そこから延びるいくつもの路地が各墓所に通じているという構造や、会葬者が死者とのお別れの食事をとったとよばれる岩のテーブル「アガペー・テーブル」が並んでいることなど、聖パウロの地下墓地のスタイルはマルタ島独特のもの。まるで迷路のように張り巡らされた地下墓地の規模に圧倒されます。
地下墓地内には、ローマ後期や中世初期の壁画もわずかながらに残っていて、現存する当時の壁画としては大変貴重なものです。
ローマ時代に興味があるなら、ローマ古美術館(ドムス・ロマーナ)も必見。
ローマ時代のヴィラの跡地に1925年に建てられた館内には、当時のガラス製品や陶器、彫像などが展示されています。
なかでも見逃せないのが、保存状態の良いローマ・モザイクの床。2羽のハトが描かれたモザイクでは、脚つきの杯にハトが止まり、周囲の模様が立体的に浮き上がって見える視覚効果に注目です。
まるで時が止まっているかのように、のんびり、ひっそりとしているラバト。しかし、さまざまな勢力に支配されてきたこの町は、見た目以上に多彩で複雑な歴史を抱えています。
マルタを訪れたなら、地上からは見えない、ラバトの地下に眠る巨大な迷宮に迷い込んでみてはいかがでしょうか。
Post: GoTrip! https://gotrip.jp/ 旅に行きたくなるメディア
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