「永遠の火」を祀る、アゼルバイジャン・バクー近郊にある神秘的なアテシュギャーフ拝火教寺院
GOTRIP! / 2018年9月17日 6時30分
「火の国」の別名をもつ、南コーカサスの国アゼルバイヤン。カスピ海に面した首都バクーの近郊には、火の国の神秘性を実感できる場所があります。
それが、バクー中心部から20キロほどの郊外に位置する、アテシュギャーフ拝火教寺院です。
一般には「ゾロアスター教」として知られる拝火教は、紀元前にイランのゾロアスターを開祖として始まった世界最古の宗教のひとつ。ササン朝ペルシア時代に隆盛を誇り、現在のイランから中央アジア、インド、中国にも伝わり、広範囲に信仰を集めていましたが、7~8世紀ごろにイスラム化が進んだことで、衰退していきました。
アゼルバイジャンが7世紀にアラブの支配下に入った当時、住民はまだゾロアスター教徒が多数派でした。しかし、11~12世紀のセルジューク朝の時代にイスラム化が進み、イスラム教国家としての現在のアゼルバイジャンの基礎が育まれていきます。
イスラム教の流入によりこの地を追われたゾロアスター教徒は、インド北西部へと逃れ、ゾロアスター教はインドのヒンドゥー教の影響されながらも受け継がれます。インドに移住したゾロアスター教徒は「パールシー」と呼ばれ、彼らがアゼルバイジャンにゾロアスター教を復活させることになりました。
「拝火教」といわれることからもわかる通り、ゾロアスター教の特徴は、火を神聖視して儀式などに用いること。
ゾロアスター教が生まれた地域には、天然ガスが豊富に埋蔵されており、地表に噴き出した天然ガスが空気や砂などと擦れることによって火が付くと、同じ場所でずっと火が燃え続けることになります。こうした自然環境こそが、火に神性を見い出すゾロアスター教の基盤になったのです。
アテシュギャーフ拝火教寺院周辺も、古くからの油田地帯。地面から炎が上がり続ける光景を見たゾロアスター教徒は、この地を聖地として寺院を建てたといわれています。
「アテシュギャーフ」は、アゼルバイジャン語で「炎の家」の意味。
この地に最初の拝火教寺院が建てられたのは2世紀のことですが、現在見られる建物は16世紀末から~17世紀初頭と18世紀に造られたものです。かつては、インド北部と現在のトルコやシリアを結ぶルートの中継地であったため、寺院としてのみならず、隊商宿としても機能してました。
分厚い壁に囲まれたアテシュギャーフ拝火教寺院は、寺院というよりもむしろ城砦のような雰囲気。現在は拝火教寺院としての機能はなく、往時の生活の様子や拝火教の儀式などを紹介する博物館となっています。
中央には、仏教の本尊にあたる「永遠の火」が祀られ、その周囲に礼拝を行った広場や石造りの僧房が配置されています。
各部屋では、人形や出土品、写真などによって、寺院の歴史やこの地で育まれた文化を紹介。
豪華な装飾などはなく、きわめて原始的で簡素な印象ですが、だからこそ数百年ものあいだ時が止まっているかのようで、燃え上がる炎の神秘性が際立ちます。
博物館といえど、ゾロアスター教の教えに必要不可欠な火が絶やされることはありません。ゾロアスター教では「善」の象徴とされる火。
ここで静かに燃え上がる炎を眺めていると、この地に暮らす人々が古くから火を聖なるものとしてとらえていたのもわかるような気がするはずです。
アテシュギャーフ拝火教寺院の近くには、地下から噴出する天然ガスに火が付き、燃え続けているヤナル・ダグもあります。
拝火教寺院へのアクセスは、地下鉄コログル駅近くのバス乗り場から184番バスに乗り、終点スラハニ下車(所要約30分)。ヤナル・ダグもあわせて訪れるなら、タクシーのチャーターやバクーからの日帰りツアーを利用するのが効率的です。
バクーを訪れるなら、アゼルバイジャンの風土が生んだ拝火教寺院と、資源国ならではの自然風景に会いに、足を延ばしてはいかがでしょうか。
Post: GoTrip! http://gotrip.jp/ 旅に行きたくなるメディア
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
鬱病対策でマジックマッシュルームを摂取、「神」と遭遇した人々の証言 米
Rolling Stone Japan / 2024年9月19日 21時20分
-
大国インドが中国のような独裁にならなかった訳 絶対的な強権支配が成立しにくかった土壌
東洋経済オンライン / 2024年9月16日 18時0分
-
世界に離散、大富豪も多い...「ユダヤ」とは一体何なのか? 聖書と歴史から読み解けば世界の「今」が見えてくる
ニューズウィーク日本版 / 2024年9月12日 15時19分
-
改革派大統領誕生のイラン、10年内に大変動か=「厳格な宗教国家」とは程遠い一面も
Record China / 2024年9月10日 7時30分
-
もうすぐGDP世界3位になる「大国インド」の実情 ヒンドゥー・ナショナリズムが台頭する背景
東洋経済オンライン / 2024年8月27日 9時0分
ランキング
-
1「SHOGUN」エミー賞受賞を喜ぶ人と抵抗ある人 日本人がアメリカで最多受賞した本当の理由
東洋経済オンライン / 2024年9月20日 13時0分
-
2「高齢者に炭水化物は毒」は大ウソである…長寿国では「パン、そば、うどん」をもりもり食べている事実
プレジデントオンライン / 2024年9月20日 15時15分
-
3「ぜんたーい、止まれ!」その入場行進なんのため? 元体育主任が語る、運動会で廃止すべきこと3つ
オールアバウト / 2024年9月20日 20時35分
-
4朝食前に歯を磨かない人は「糞便の10倍の細菌」を飲み込んでいる…免疫細胞をヨボヨボにする歯周病菌の怖さ
プレジデントオンライン / 2024年9月20日 14時15分
-
5メルカリで「マイナス評価」が1つでもあったら売れなくなる? 購入を敬遠される可能性も……
オールアバウト / 2024年9月20日 20時40分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください