【世界の街角】過去と未来が交錯する「風の町」 / アゼルバイジャンの首都バクー
GOTRIP! / 2018年9月21日 6時30分
「風の町」を意味する、アゼルバイジャンの首都バクー。
カスピ海に突き出たアプシェロン半島の南岸に位置するこの町は、近年カスピ海の油田開発によって発展を遂げてきました。
2010年代に入ってから、フレイムタワーやヘイダル・アリエフ・センターなど、前衛的なモダン建築が次々と建てられたことから、「コーカサスのドバイ」とも称されるようになったほど。
その一方で、アゼルバイジャンという国やバクーという町は、日本人にとってはまだまだ未知の世界。それがどこにあるのか、それがどんな場所なのか知らないという人も少なくありません。
バクーとは、いったいどんなところなのか。近年の建設ラッシュで注目を浴びるようになった町を歩いてみましょう。
バクーの町は、中世の面影を残す旧市街を帝政ロシア時代に造られた町が取り囲み、さらにそれらをソ連時代の建造物群が取り囲むという構造。バクー市内の見どころは、おもにカスピ海に面した海岸公園周辺と、世界遺産にも登録されている旧市街周辺に分けられます。
バクーに到着したら、まずは世界最大の湖・カスピ海と対面。バクーの町の南側はカスピ海に面していて、中心部の海岸沿いには弧を描くようにして海岸公園が広がっています。
全長2キロにもおよぶ細長い海岸公園は、プロムナードや遊歩道のイメージに近く、カスピ海の風を感じながらの散歩はなんとも開放的。
世界で最も大きい湖だけに、カスピ海の景色は一見海とほとんど変わりません。カスピ海とフレイムタワーをはじめとするビル群が織り成す風景は、現代のバクーを象徴しています。
夏季にはショッピングセンター「パーク・ブルバール」前から、カスピ海クルーズも出港。海上からバクーの風景を眺めてみるのもいいですね。
海岸公園を西へと進んでいくと、大通りを挟んだ向かい側に、伝統的な町並みを残す旧市街が見えてきます。
「内城」を意味する「イチェリ・シェへル」と呼ばれる旧市街は、周囲を重厚な城壁に囲まれた城塞都市。現在も、旧市街を取り巻く180度ほどの城壁が残されており、2000年には「城壁都市バクー、シルヴァンシャー宮殿、及び乙女の塔」として、歴史ある町並みがまるごと世界遺産に登録されました。
真っ先に目に飛び込んでくるのが、バクー旧市街の象徴的建造物である「乙女の塔」。もともとこの場所には紀元前に拝火教寺院があったといわれ、現在の塔は要塞として12世紀に建てられたものです。
高さ30メートル、外壁の厚みが4~5メートルもあるという塔は、その名前に似合わず重厚感たっぷり。真相は定かではありませんが、「乙女の塔」というネーミングの背景は、望まぬ結婚を強要された娘がここからカスピ海に身を投げたことに由来するという説もあります。
現在、カスピ海は大通りと海岸公園を隔てたところにありますが、かつてはこのあたりまで水があったことが明らかになっています。塔の上は展望台になっており、ここからのバクー市街とカスピ海の眺めは一見の価値あり。
旧市街には、シルヴァン王朝時代の宮殿「シルヴァンシャー宮殿」や、モスク、ハマム(浴場)、キャラバンサライ(隊商宿)などの歴史的建造物がひしめき合い、近未来都市のイメージからはかけ離れた町並みが広がっています。
日干しレンガ造りの建物や入り組んだ通りなどが美しく保存され、通りに並ぶ土産物屋やカフェなどが旅情を盛り上げてくれます。
バクーの旧市街を歩くと印象に残るのが、西洋と東洋の文化が入り混じった風景。
モスクやハマムといったイスラム圏ならではの建物と、ヨーロッパの建築様式で建てられた建造物が不思議な調和を見せ、それがバクーの旧市街独特のエキゾチックな町並みを造り上げているのです。
路上で売られている土産物を見ても、トルココーヒーのカップやロシアのマトリョーシカなど、この地が周辺国の影響を受けてきたことがわかります。
西洋と東洋の融合に加え、新旧のバクーの風景が同時に見られることにも気づくはずです。
趣たっぷりの旧市街の路地の先に見えるのは、2012年に完成したフレイムタワー。総工費350億円をかけて建てられた3つのビル群は、アゼルバイジャンの代名詞である「火」をかたどっています。
高さは182メートルと、東京の高層ビルに比べると控えめながら、町を見下ろす高台に建っているために、高さ以上の迫力があります。
バクーの町のあちこちから目にすることができますが、せっかくなら間近でその雄姿を見てみたいもの。旧市街の南西にある乗り場からケーブルカーに乗れば、気軽にフレイムタワーの足元まで上ることができます。
曲線づかいが美しいフレイムタワーは、至近距離から見るとさすがの迫力。トルコ風のミナレット(尖塔)をもつモスクとのコラボレーションは、アゼルバイジャンがイスラム教の国であることを意識させます。
青く輝くフレイムタワーの表面は、日中は周囲の風景を反射し、夜になると10000枚ものLEDパネルによってライトアップされ、アゼルバイジャンの国旗や炎などが映し出されます。
ケーブルカー駅周辺に広がる展望台からの景色も必見。現在も建設中の建物が多数見られ、成長を続けるバクーの「いま」が感じられます。
海岸公園から旧市街を経て、フレイムタワーの足元へとやってくるだけで、数百年ものタイムトラベルができるバクー。
過去と未来が交錯する町並みが醸し出す、不思議な魅力を味わってみませんか。
Post: GoTrip! http://gotrip.jp/ 旅に行きたくなるメディア
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