いつまで親が援助できる?ひきこもりの子どもの将来が心配【子への援助3】
HALMEK up / 2024年12月26日 14時50分
家族をとりまくお金の問題。親から子への経済的にダメな援助・いい援助について、読者のお悩みを元にお金のプロと家族問題のプロに聞く最終回。今回は、ひきこもりなどで先の見えない不安にさいなまれる、子どもの将来に関わるケースについて聞きました。
教えてくれたのは、お金と家族問題の2人のプロ!
畠中雅子(はたなか・まさこ)さんファイナンシャルプランナー(CFP(R))。1963(昭和38)年生まれ。大学時代にフリーライター活動をはじめ、1992年にファイナンシャルプランナーになる。「高齢期のお金を考える会」や「働けない子どものお金を考える会」などを主宰。『70歳からの人生を豊かにするお金の新常識』(高橋書店刊)他、著書・監修書は70冊を超える。
宮本まき子(みやもと・まきこ)さん家族問題評論家、カウンセラー。1947(昭和22)年生まれ、津田塾大学卒業。79年から22年間、主婦の友社の電話相談室で育児、親子関係、家庭問題などのカウンセラーとして勤務。現在はフリーライター、エッセイストとして著作のかたわら、新聞、雑誌、テレビ、ラジオなどでコメンテーターとして活躍。『孫ができたらまず読む本』(NHK出版)『輝ける熟年』(東京新聞出版局)など著書多数。
もはや他人事ではない!? 8050問題
ここ数年、社会問題にもなっている「8050問題」。80代の親が、自宅にひきこもる50代の子どもの生活を支えつづけ、精神的にも経済的にも追い詰められている親子間の問題を表した言葉です。
そこで、3つ目のケースではひきこもりの子どもを持つ親が今できる対処法や将来への備え方について教えてもらいました。
自分亡き後の子どもの援助、誰かに託せる仕組みはある?
Q.ひきこもりの娘の生活費、親が死んだ後は、息子に管理を任せてもいいでしょうか ――渡辺かずみさん(77歳)
A.息子に無理強いせず、できる援助を話し合って
自分が認知症になったり、亡くなった後、ひきこもりの子の金銭面のサポートはどうすればいいか。一人でがんばってしまう方ほど、不安が募って感情的になり、つい他の子どもにべったりと頼ってしまいがちです。
家族とはいえ、子どもたちはそれぞれ独立した存在。やむをえずひきこもりの子の財産管理を子の兄弟にお願いするときも、無理強いや無償で任せてはいけません(宮本さん)
息子さんのような兄弟姉妹に、娘さんの扶養に関する義務はありません。親が元気なうちに、息子さんが「引き受けてもいいと思うこと、引き受けられないこと」を話し合いましょう。できないことの中で、金銭管理については信託銀行にまとまったお金を預けて、定期的に娘さんの口座に振り込んでもらうような仕組みを検討できます。
入院時の保証人や日々の生活サポートについては、身元保証会社(有名なのは「きずなの会」や「りすシステム」など)に依頼することができます。依頼すれば費用がかかりますが、すべてを無償で息子さんに依頼するのは、負担が重すぎます。まずは息子さんができることと、できないことの整理から始めてください。(畠中さん)
いつまでできる?ひきこもりの子どもへの援助
Q.40歳過ぎのひきこもりの息子。私の年金生活で、いつまで生活費を援助できるか心配です。 ――佐藤えつ子さん(72歳)A.65歳未満でも障害年金を受給できる場合があります
長期化、高齢化したひきこもりの子どもの中には、発達障害や精神障害があるケースも。その場合、条件を満たせば、障害年金を受給できることがあります。
障害年金とは、65歳未満でも身体的、精神的ともに一定の障害があると認められた場合に支給される公的年金のこと。申請するには、障害の度合いなど医師の診断が必要で、一定の条件を満たさないと受給はできません。
本人が医師の診断を受けることが前提条件になりますが、家から出られないお子さんの場合、なかなか受診に繋がらないケースもあります。もし本人が通院できない場合は、精神保健福祉センターや障害年金を専門とする社会保険労務士などに相談してみましょう。
障害年金を受給できたら、使い道もよく考える必要があります。2級なら月6万6250円が支給されます(令和5年4月分から)。さらに、年金生活者支援給付金が2級の方でひと月5140円、1級の方ではひと月6425円が別途支給されます。
受け取れる年金や給付金のうち1万円から2万円程度は本人のお小遣いにして、残りは親亡き後の子どもの生活費として積み立てておくなど、貯蓄にまわしておく方法も検討しましょう(畠中さん)
67歳以下の場合
1級:99万3750円(月額 8万2812円)
2級:79万5000円(月額 6万6250円)
<相談先>
地域の精神保健福祉センター
障害年金専門の社会保険労務士を探したいときは、「障害年金専門 ○○(居住地)」で検索してみる
3回にわたり紹介してきた、親子間の経済援助問題。お盆や年末年始など家族が集まるタイミングは、親子でこれからについて話し合う絶好の機会でもあります。もし今悩みを抱えているならば、ぜひ今回の記事を参考に、お互いに負担のない未来を考えてみませんか?
※この記事は雑誌「ハルメク」2020年3月号を再編集、掲載しています。
取材・文=井口桂介、児玉志穂、長倉志乃(すべて編集部) イラストレーション=伊藤ハムスター
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