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村木厚子さん「子どもの貧困」に思う|子どもたちに 幸せの「おすそ分け」を

ハルメク365 / 2024年5月21日 21時0分

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子どもの貧困という言葉を聞きます。国民生活基礎調査(令和3年)によると、子供の貧困率は11.5%、ひとり親世帯の貧困率は44.5%だそうです。元・厚生労働省事務次官の村木厚子さんは「私たちおばさんにできることがある」と話します。

失業した父がしてくれたこと

※記事は2017年2月に執筆したものです。

若者のことを考えるシンポジウムに出たとき、コーディネーターから「みなさんは、なぜ自分がこれまでの人生、がんばることができたと思いますか」と聞かれ、子どもの頃を思い返して父の話をしました。

私が憧れていた中高一貫の私立学校に入学し、中学2年生になったとき、父が失業しました。私立学校に通うのはもう無理と諦めていたとき、父が「せっかく入学したんだから何としても行かせてやる」と言ってくれました。

後日、あらためて感謝の気持ちを伝えると、父は、自分も親が親戚中の反対を押し切って進学させてくれたからと話してくれました。私も父も、親にチャンスをもらってがんばることができました。

しかし、今、多くの子どもたちがそのチャンスを与えられずにいます。

1個のリンゴより1斤の食パン

「子どもの貧困」という言葉をよく聞きます。子どもたちの6人に1人が貧困の状態にあるといいます。あるスクールソーシャルワーカーの女性がこんな出来事を話してくれました。

登校してきた小3と小1の姉妹は朝ご飯を食べていません。そこで、リンゴの皮をむき八つに切ってお皿に盛りました。姉は「リンゴおいしいねえ。かじったら汁が出るね。リンゴは保育園のときに食べたことあるよ」と言いました。リンゴを初めて食べる妹は、生え替わりで前歯の抜けた小さな口で「おいしい」と言いながらうれしそうに食べました。

食事を取ることも困難な子どもがいます。まして、果物は高級品、1個100円のリンゴを買うなら1斤100円の食パンを買うのだそうです。

経済的に苦しい親、収入を得るために複数の仕事に就いていて家事をするゆとりもない親がいます。親が責められると思うと、子どもは食事をしていないことを口にしないといいます。

落ち着いて勉強をする環境がない、塾や習い事に行くチャンスもない、そのために進学も、よい仕事に就くことも難しい。その結果、大人になって貧困家庭を形成するという「貧困の連鎖」が起きています。

私たちの目からはなかなか見えにくいのですが、実はこれも日本の現状です。

子どもたちのために、私たちおばさんができるのは

何とかしようと動き始めた人もいます。この分野は「おばさん」だからこそできることがたくさんあると思います。子どもに温かい食事を提供する「子ども食堂」で自慢の家庭料理の腕を生かす、ダイエットも兼ねて家庭で余った食料をフードバンクに寄付する、おせっかいを恐れず子育て中のお母さんの手助けをする、などなど。

近所の子に明るく大きな声で「おはよう」「おかえり」と声を掛けるだけでもいいのです。知らない男の人だと怖がられますが、ご近所の「おばさん」なら大丈夫。

自分をいつも気に掛けてくれる「大人」がいると実感することは、子どもにとってとても大切なことです。私も父からもらったチャンスのおすそ分けの意味を込めて、子どもたちのためにできることをしたいと思います。

みなさんもおすそ分けをしませんか。

村木厚子(むらき・あつこ)さんのプロフィール

村木厚子

むらき・あつこ 1955年、高知県生まれ。元厚生労働事務次官。2009年、厚生労働事務次官在任中、郵便不正事件で冤罪を被り164日の勾留を強いられる経験をした。

2015年10月退官後は、企業の社外取締役や大学客員教授等に就任。またSOSを心に抱えた少女や若い女性の支援を目的とする「若草プロジェクト」の代表呼びかけ人を、故・瀬戸内寂聴さんと共に務め、現在に至る。

2017年から雑誌「ハルメク」で、社会問題や生き方など日々の気付きを綴った連載「毎日はじめまして」をスタート。現在も好評連載中。

※この記事は2017年4月の記事を再編集して掲載しています。

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