チェックするような実母の文句…イライラが止まらない!という相談に僧侶、名取さんが回答
ハルメク365 / 2024年7月29日 21時50分
読者のお悩みに専門家が答えるQ&A連載。今回は66歳女性の「同居中の実母の細かいチェックや文句にうんざり…今後、良好な同居生活を続ける方法を知りたい!」という相談に、仏教の教えをわかりやすく説いて「穏やかな心」へ導く住職・名取さんが回答。
66歳女性の「同居中の実母との関係」についての相談
現在、夫と実母と生活していますが、母との距離感が測れずにいます。母は89歳で元気なのはいいのですが、文句が多いことに困っています。
「髪型が似合わないからパーマをあてろ」「肌の手入れ時間が長い」「そのブラウスは見たことない。また洋服を買ったのか?」など、私の後ろをついて回って、いちいちチェックしているように感じてしまいます。なによりも、快く同居を受け入れてくれた夫へ、文句を言うことが許せません。
病院の送り迎えや買い物の付き添い、生活全般のことをなにかとやっているのは私なのに、電話もめったにしてこない弟の方がかわいいようです。
いまさら別居するとなると、母に寂しい思いをさせると思いますし、母自身も別居は全く考えていないようです。今後も同居を続けていくために、どのような態度で接すればいいか、教えてください。
(66歳女性・きなこさん)
名取さんの回答:「母の正攻法」と思って聞き流して!
長い付き合いといえども、加齢とともに“文句”が増えてきたお母様の相手をするのに、少々疲れていらっしゃるのでしょう。理路整然と順序立てたご相談の内容に、お母様に対して呆れながらもご自分のイライラする心を整理していらっしゃるのがわかります。心が穏やかになるには、とても大切な作業だと思います。
では、文句ばかり言うようになったお母様を比較的かんたんにスルーする考え方をお伝えします。
お母様は89年間、家族のため、生活のため、子どものために、「これがいいだろう」というやり方をしてきました。そのやり方の中には、他人の失敗を見聞きして、自分のやり方に修正を加えた方法もあるでしょう。
そのようにしてたどり着いたやり方で、妻として、女として、母として89年間つつがなく生きてきたのです。そのやり方は、お母様にとって、世の中を生きていくための正攻法で、間違いのない方法です。
「髪形が似合わないと思ったらパーマをあてる」「肌の手入れに長時間かけない」「ブラウスは数着あればいい」はすべて、これまで失敗しないための母様ならではの正攻法なのです。
自分の正攻法がある人は、目の前で違ったことをする人がいると、つい「そうじゃなくて」と言いたくなるのです。これが文句に聞こえます。本人に悪気はほとんどありません。自分が失敗しなかった方法を、ただ伝えたいだけなのです。
ですから、きなこさんは「お母さんはそうやって気を使って、私たちを育ててくれたんだね。それが間違いのない方法だったんだよね」と、まずお母様の文句(提案と言ってもいいかもしれません)に理解を示してあげてください。
その上で「お母さんが苦労して、そのやり方にたどり着いたように、私も自分でいろいろやってみて失敗しない方法にたどりつきたいんだ。結果的にお母さんのやり方と同じになるかもしれないけど、違う方法でも人生を充実して生きる方法はあるかもしれないでしょ。だから、私のやり方でやらせてみてよ」と付け加えてみてください。そう言える心の余裕を持とうと願ってみてください。
「母は、自分の正攻法を伝えようとしてくれているだけなのだ……」そう考えることで、いちいちうるさいお母様の文句をスルーできるようになります。
正攻法にかかわるこのようなお母様の言動を夫にも理解してもらい、夫にもお母様の文句をスルーしてもらいましょう。
きなこさんご夫婦が、お母様の言動にいちいちイライラしたり、カリカリしたりするのは、もったいないと思います。その時間と労力は、すでにおやりになっている病院や買い物の付き添いなどの親孝行と、夫とのコミュニケーションにあてた方がいいと思います。
姉弟で役割分担を決めて対応
弟さんばかり良い子になっていることにも納得がいかないようですが、きなこさんと違って、時々来たり、電話をする弟さんは“お母様の目の前で、お母様の正攻法に逆らうような言動はしない”ので、かわいいと思われるのは仕方がありません。
そこで、姉弟で役割分担を決めてしまいましょう。
“弟さんはお母様にさからわない良い子役”“きなこさんはお母様に正攻法を言わせてあげるちょっとした憎まれ役”になることを、姉弟がわかって対応すればいいのです。
私もかつて、父と同居していた兄と、同じ役割分担をして父が亡くなるまで5年間ほど対応しました(くれぐれも“良い子役は得、憎まれ役は損”などと思わないでください。それぞれ承知で自分の役回りを勤めれば、それでいいのです)
このように、お母様の言動にいちいち目くじらを立てずに、その原因を理解してあげようとするだけで、精神的なストレスは減ります。
母と娘はそれぞれ言いたいことが言える関係のような気がします(我が家はそうです)。ついケンカ口調になることもあるでしょう。そんなときは、次の言葉を思い出して、笑顔で乗り切ってください。
“ケンカというのは、どちらに理屈があろうと、バカを看板にしているようなものです”
お母様と一つの屋根の下で、精神的につかず離れずの関係で親孝行ができ、夫婦の絆がいっそう強まることをお祈りしています。
回答者プロフィール:名取芳彦さんなとり・ほうげん 1958(昭和33)年、東京都生まれ。元結不動・密蔵院住職。真言宗豊山派布教研究所所長。豊山流大師講(ご詠歌)詠監。写仏、ご詠歌、法話・読経、講演などを通し幅広い布教活動を行う。日常を仏教で“加減乗除”する切り口は好評。『感性をみがく練習』(幻冬舎刊)『心が晴れる智恵』(清流出版)『気にしない練習』(三笠書房)、『心がすっきりかるくなる般若心経』(永岡書店)など、著書多数。
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