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がん細胞だけを狙い撃ち!名医による「命を諦めない」がん最新治療に迫る

ハルメク365 / 2024年10月3日 21時0分

がん細胞だけを狙い撃ち!名医による「命を諦めない」がん最新治療に迫る

日本人の死因1位「がん」。今注目されているのが、安全で効果が高く、体への負担が少ない「光免疫療法」です。がん細胞だけを狙い撃ちして、転移や再発を抑える効果も期待できる最新治療について、開発した医師の小林久隆さんにお聞きしました。

教えてくれた人:小林久隆(こばやし・ひさたか)さん

教えてくれた人:小林久隆(こばやし・ひさたか)さん

1961(昭和36)年、兵庫県生まれ。京都大学医学部卒業。医学博士。米国国立衛生研究所・国立がん研究所(NIH・NCI)分子イメージングブランチ主任研究員。光免疫療法の研究・開発によりNIH長官賞などを受賞。2022年から関西医科大学附属光免疫医学研究所所長・特別教授も務める。著書は『がんを瞬時に破壊する光免疫療法』(光文社新書)など。

がん細胞だけを狙って攻撃する光免疫療法

がん細胞だけを狙って攻撃する光免疫療法

近赤外レーザー光発生装置。近赤外線はテレビのリモコンにも使われる安全な光

医師の小林久隆さんが開発した光免疫療法は、光に反応する薬を投与し、薬ががんに十分集まったところで近赤外線を照射して、がん細胞だけを破壊します。薬には、狙ったがん細胞に結合する“抗体”と光に反応する“IR700”という物質が含まれています。

抗体はがん細胞にIR700を届ける、いわば運び屋。IR700は体に無害な物質ですが、近赤外線の照射を受けると光化学反応を起こして、がん細胞を狙い撃ちします。

「がん細胞の膜に小さな穴が開き、そこから周囲の水が流れ込んでくるため、がん細胞はグーッと膨れ、風船が割れるように破裂します。顕微鏡で見ると、このような反応がわずか20~30秒のうちに起こるのです。最初に見たときは本当に驚きました」(下の写真参考)

がん細胞だけを狙って攻撃する光免疫療法

(2枚とも写真提供/小林久隆さん)

光免疫療法で近赤外線を2分間照射した結果、がん細胞(丸囲み部分)はしぼんで細胞の影が消えていた。一方、正常細胞には変化が見られなかった。

光免疫療法で免疫細胞の働きも活性化

光免疫療法には 免疫を活性化するという利点も。がん細胞が破裂すると、中からがん特有の物質(がん抗原)が周囲にばら撒かれ、周囲の免疫細胞を刺激します。

免疫細胞は治療によるダメージを受けていないので、元気な状態でその物質を“敵”と認識し、攻撃態勢を整えます。つまり生き残ったがん細胞まで攻撃し、がんの転移や再発を抑える効果も期待できるのです。

光免疫療法で免疫細胞の働きも活性化

1. がんに結合する抗体と光に反応するIR700からなる薬剤「アキャルックス」を点滴で投与する

光免疫療法で免疫細胞の働きも活性化

2. 点滴による投与から1日ほど経過すると、薬剤が目的の場所の狙ったがん細胞にくっつく

光免疫療法で免疫細胞の働きも活性化

3. 近赤外線を5~6分間照射。がんが浅い場合は皮膚の上から、深い場合は針を刺して内部から照射

光免疫療法で免疫細胞の働きも活性化

4. がん細胞が破裂。中にある物質(がん抗原)が流出することで周辺の免疫細胞が刺激され活性化する

きっと役に立つと信じて壁を乗り越えてきた

きっと役に立つと信じて壁を乗り越えてきた

光免疫療法は、楽天の三木谷浩史氏の出資も受けた

そもそも小林さんがこの研究に取り組んだ背景には、かつて放射線科医師としてがん治療に向き合ったときの無力感があったといいます。

「受け持った患者さんを立て続けに亡くし、その死亡診断書を書くことが私の初仕事となりました。これは堪(こた)えましたね」

また治療でがんを取り除いても、副作用や後遺症、さらには転移や再発への不安に苦しむ人を多く見てきました。「がん治療の問題をすべてクリアできる治療法はないものか――」。

小林さんは新たな治療法を目指して研究の道へ。ただ、壁にぶつかることも数知れず……。

きっと役に立つと信じて壁を乗り越えてきた

「私はね、意外にくじけるんですよ。でも、そんなときに支えてくれたのが“この研究はいつかきっと誰かの役に立つ”という思い。それがあったから、心が折れずにやってこられたんです」

光免疫療法は現在、食道がんや胃がんなどの臨床試験も進行中。将来はさらに適応を広げ、がんの8割程度をカバーできるようにするのが目標です。

「みなさんにこの治療を届けられるよう、私たちは全力でがんばっています。期待して待っていてください!」(小林さん)

次回は、がんに次ぐ日本人の死因2位、「心臓病」の最新治療を紹介します。

取材・文=佐田節子、撮影=鈴木愛子、イラストレーション=落合恵、構成=大矢詠美(ハルメク編集部)

※この記事は、雑誌「ハルメク」2023年12月号を再編集しています

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