日本人の死因第2位!「心臓病」のない世界を目指す最新治療法とは
ハルメク365 / 2024年10月7日 21時0分
がんに次ぐ日本人の死因第2位「心臓病」。中でも特に治療が難しい重症の「心不全」に対し、再生医療を用いた新治療法を世界で初めて実用化した医師の澤芳樹さんに、心臓病治療の最前線についてお聞きしました。
教えてくれた人:澤芳樹(さわ・よしき)さん
1955(昭和30)年、大阪府生まれ。大阪大学大学院医学系研究科特任教授、大阪警察病院院長。心臓外科医。80年、大阪大学医学部卒業。同大学医学部心臓血管外科主任教授などを経て、2021年から現職。心不全の新たな治療法として世界で初めて心筋再生医療を実用化。日本胸部外科学会理事長なども務める。
心臓病で命を落とす人がいない世界を目指して
がんに次ぐ日本人の死因2位が心臓病。その心臓病の中でも特に治療が難しい重症の心不全に対し、再生医療を用いた新治療法を世界で初めて実用化したのが、大阪大学大学院医学系研究科特任教授で、大阪警察病院院長も務める心臓外科医の澤芳樹さんです。
「心不全は重症になると薬での治療が難しく、いずれ補助人工心臓を装着したり、心臓移植の機会を待ったりするしか手がなくなります。しかし心臓移植は絶対的なドナー不足。現在でも心臓移植が必要な方は毎年1000人ほどいますが、実際に受けられる方は1割にも及びません。
そんな中で一人でも多くの命を救うにはどうしたらいいか――。そこで挑戦したのが、再生医療で心臓の機能を改善させる新しい治療法の開発でした」
心不全は年齢とともに増える病気です心不全とは、心臓が悪いために息切れやむくみが起こり、だんだん悪化して、生命を縮めてしまう病態のこと。心不全を招く病気には心筋梗塞や狭心症、心筋症、心臓弁膜症、不整脈などがあります。これらの病気の増加や高齢化により、心不全に至る人が近年、急増しています。年齢を重ねるにつれて身近になる病気です。
心臓外科医として多くの手術を執刀。手技を磨きながら、新治療の開発も
心臓は常に収縮を繰り返し、血液を全身に送り出しています。このポンプ機能を担っているのが、心臓の筋肉である「心筋」。そして心筋を構成しているのが、100億個にも上る心筋細胞です。
重症の心不全では、この心筋細胞が心筋梗塞などの病気によって部分的に壊死(えし)し、心臓の機能が著しく低下しています。
シート状の心筋細胞を培養して心臓にペタリ
容器の中にある丸いものが、iPS細胞由来の心筋細胞シート。心筋細胞からなるシートが心臓の鼓動のように動いている
澤さんらは再生医療を応用して、この心筋に細胞を補充する研究を1990年代後半から始め、2007年には世界初の人への応用に成功しました。
これは患者の太ももから採取した筋肉の細胞(筋芽細胞)を薄いシート状に培養し、それを心臓の弱った場所に貼り付けて再生を促すというもの。「心筋シート術」と呼ばれ、2016年から健康保険も適用されています。「この治療を最初に受けた患者さんは15年たった今もお元気です」と澤さんは話します。
ただし、この心筋シート術には課題もありました。筋芽細胞の採取と心筋シートの貼り付けで2回の手術が必要なこと、人によって効果にばらつきがあることなどです。そこで澤さんらが次にトライしたのが、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って心筋細胞そのものを作ることでした(これについては次回詳しく紹介しています)
「心筋シート治療」4つのポイント
メリットiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使うことで心筋細胞シートを比較的短期間で大量に作製できるので、多くの患者に届けられる。手術が1回で済む。
デメリットiPS細胞由来の心筋細胞シート術では、拒絶反応を抑えるため3か月間免疫抑制剤を服用。筋芽細胞の心筋シート術では2回の手術が必要。
費用筋芽細胞の心筋シート術は、健康保険や高額療養費制度、自治体実施の自立支援医療(更生医療)費制度を利用すると、目安は10万円程度。
治療を受けるにはiPS細胞由来の心筋細胞シート術は臨床試験段階なので、今はまだ受けられない。筋芽細胞の心筋シート術の場合は、治療の適応になるかどうか、循環器内科や心臓血管外科の医師にまずは相談を。
次回はiPS細胞を利用した「心筋シート治療」について、さらに詳しく紹介します。
取材・文=佐田節子、撮影=中川まり子、イラストレーション=落合恵、構成=大矢詠美(ハルメク編集部)
※この記事は、雑誌「ハルメク」2023年12月号を再編集しています
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