40代50代「骨盤臓器脱」の初期症状や治療法は?【医師監修】自宅でできるケアも
ハルメク365 / 2024年9月24日 18時0分
「お股に違和感があり動きにくい」「ピンポン玉のようなものが触れる」。そんな不快は、もしかしたら「骨盤臓器脱」かもしれません。なかなか人に聞けないこのお悩みについて、専門医に聞きました。
【医学監修】産婦人科医・石山尚子さんのプロフィール
いしやま・なおこ 日本産科婦人科学会専門医。富山大学附属病院および関連病院勤務を経て2007年より女性医師・スタッフによる女性のためのクリニック、対馬ルリ子 女性ライフクリニック 銀座に勤務。21年より院長に。
「骨盤臓器脱」ってどんな病気?
「『骨盤臓器脱』は、骨盤底の緩みが進行することで、膀胱・子宮・小腸・直腸などの骨盤内の臓器が下垂してしまう病気です。あまり知られていないのですが40~80歳代の女性に多く、成人女性の3人に1人がかかるといわれています。
『骨盤臓器脱』には膀胱瘤・子宮脱・尿道脱・小腸瘤・直腸瘤などさまざまな種類があります。もっとも多いのは“膀胱瘤”で、はじめは尿が近くなったり、もれたりします。さらに進行すると、逆に尿が出にくくなったり、残尿感があったりと生活に支障が出てきます」(石山さん)
「加齢や出産経験、慢性的な便秘、重いものを持つことが多い、……など、骨盤底に負荷がかかりやすい方ほどリスクが高まります。
また、下垂の程度が軽いと普通に生活できるため、違和感があっても放っておかれがちです。『何か挟まっている気がする』『夕方になると何かが下がってくる』『排便のとき出しにくい』など、はっきりした違和感があってから受診される方が多いです。婦人科検診で指摘され、初めて気が付く方もいます。
そしてそのままにしておくと下垂がすすみ、不快感が強まり、排尿・排便障害や歩行困難に至ることも……。そうなると生活に大きな支障が出てくるので、そうなる前にケアすることがとても大切なのです」(石山さん)
受診したら、どんな治療をするの?
Mugimaki / PIXTA
「症状が軽度の場合は、骨盤底トレーニングを続けることが一番です。または、ホルモン補充療法やレーザー治療で腟の壁を厚くし、引き締めることで不快症状を緩和する方法もあります。
さらに症状が進んだ場合は、ペッサリーというリング型やドーナツ型などの器具を使うことがあります。これは腟の中に挿入し、下から物理的に子宮を支える方法です。ただし一時的な処置であって、根本的な治療ではありません。
保存的治療では不十分な場合は手術が勧められます。経腟的手術や腹腔鏡下手術、ロボット支援下手術があり、病状や年齢、ライフスタイルに合わせて選ぶことができますので、まずは主治医に相談してみてください」(石山さん)
ケアの基本中の基本は「骨盤底トレーニング」!
copyright/きくちりえ(Softdesign)
「『骨盤底』とは、胴体のいちばん底にあるハンモック状のプレート。膀胱、子宮、直腸など骨盤内の臓器の位置が下がらないように支えており、排尿を司るとても大切な部位です。
くしゃみをしたり、お腹に力がかかると“ドキッ”とするのは、骨盤底が衰えてきているサイン。しかし骨盤底は体の内側にあるため自分で意識しづらく、加齢による筋力低下や女性ホルモン分泌の減少が影響し、どんどん弱くなってしまうのです。
それを防ぐために大切なことは、腟まわりを“緩める、締める”を繰り返す骨盤底トレーニング。
骨盤底の衰えは、閉経後の多くの女性に共通する課題。『まだ大丈夫』と思わず、日常からトレーニングを心掛けましょう」(石山さん)
取材・文=水野 愛(ハルメク 健康と暮らし編集部) イラスト=きくちりえ(Softdesign)
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