情緒ある温泉街を満喫!世界も認めた絶景と川沿い散歩ダブルで楽しむ旅
ハルメク365 / 2024年11月21日 21時0分
今月は長門湯本温泉へ。山口県で最も古い、600年の歴史を持つ温泉といわれています。街の中心を流れる音信川沿いには、自然に溶け込みながら程よい間隔でカフェやショップが並び、ぶらぶらと散策するのが楽しい街です。風情ある温泉街を満喫してきました。
赤い鳥居が緑に映える絶景・元乃隅神社へ!
JR新山口駅からは、一日4往復出ているジャンボタクシーで長門湯本温泉へ(山口宇部空港からは週末のみ、予約制で直通便のジャンボタクシーあり)。長門湯本温泉から車で約30分、日本海に面する断崖絶壁にある、元乃隅神社へ行ってみました。123基あるという赤い鳥居が海に向かってずらりと建ち並ぶ様子は圧巻!
この日は実はあまり天気が良くなかったのですが、それでも他にはない驚きの絶景でした。米国のCNNが発表した「日本の最も美しい場所31選」として紹介されています。
敷地内にある高さ約6mの大鳥居は、ここの名物の一つ。上部に賽銭箱が設置されており、商売繁盛や大漁・海上安全、良縁、子宝、開運厄除、福徳円満、交通安全、学業成就など、さまざまなご利益があります。
高さがあり、賽銭箱も小さいので、なかなか命中するのは難しいですが、腕に自信のある方は、試しに投げ入れてみてください。入ったら願い事が叶うかもしれません(鳥居の脇に、投げなくても入れられる賽銭箱もあります)
123基の鳥居は急斜面に沿って並んでおり、正式参拝は山の一番下に建つ鳥居から上へ行くルートです。
参道は階段や坂道になっているところも多いので、足元に気を付けてゆっくり歩きましょう。
参道の先はゴツゴツした岩場になっており、日本海のワイルドな風景が広がります。
運が良ければ、海水の侵食で穴の開いた岩から潮が吹き出す「竜宮の潮吹き」という現象を見ることができます。
萩焼の器が楽しめるカフェ&ギャラリー
長門湯本温泉は、音信川(おとずれがわ)の川沿いに、雑貨店、クラフトビールの醸造所、焼き鳥店、カフェなど、感じの良い店が程よく並んでいて、どこも魅力的です。
ひと休みも兼ねて、築50年を越える民家をリノベーションした、味わいあるカフェギャラリー「cafe&pottery 音」へ。
地元の旅館のオーナーや萩焼の若手陶芸家が集まり、温泉街の再生プロジェクトの一つとして2017年にオープンしました。
店内には萩焼深川窯の器が並んでいます。萩焼は豊臣秀吉の時代に始まり、長門には江戸時代から続く窯元が5軒あります。
ここでは主に若手作家3人の作品を展示しており、伝統的な技法を継承しながら、日常に使いやすいモダンなデザインの器が多く並んでいました。
長年料理の仕事をし、この街に惹かれて移住して来たという、店主の横山和代さんが作るケーキや焼き菓子は、素材を吟味し、丁寧に作られた自然なおいしさ。
チーズケーキには、地元で養蜂を営む、孫農園の蜂蜜を仕上げにたらりとかけています。横山さんは、「AINONE」というブランドを立ち上げ、店内には小さな焼き菓子の販売コーナーがあります。
カップやお皿はもちろん萩焼深川窯のものです。天気のいい日は、川にせり出したテラスでのんびりお茶するのもおすすめです。
音信川の川辺を散策し、温泉街全体を楽しむ「界 長門」
本日のお宿「界 長門」は、音信川の川沿いにあります。遊歩道を歩くと、ところどころには川テラスや飛び石、足湯などがあり、散歩には絶好の場所です。
長門湯本温泉は、江戸時代に歴代の藩主が湯治に訪れていたといわれます。そこから着想を得て、「界 長門」は藩主が参勤交代時に本陣(休む場所)として使われた「御茶屋屋敷」をイメージ。
川沿いにある宿泊客用の出入り口「あけぼの門」のすぐ脇には、誰でも利用できる「あけぼのカフェ」があり、どら焼きやドリンクを楽しめます。
購入したものを川沿いに設置されたテーブルや川床テラスに運んで、のんびり寛ぐこともOK。
この日は期間限定イベントの野点体験を楽しみました。茶道初心者でも説明してもらえるので安心です。茶碗はいくつかある萩焼深川窯の器から、好きなものを選べます。
どら焼きは定番であずき、夏みかん、ゆずきちなどがあり、今回は季節限定の栗入りをチョイス。
「界 長門」の客室に入ると、山口の伝統工芸があちこちに散りばめられていました。
ご当地部屋「長門五彩の間」は、徳地和紙を贅沢にあしらったカラフルな寝室が印象的。萩焼、萩ガラス、大内塗などの工芸品が室内を彩り、窓から見える四季折々の長門の自然の風景をプラスして、五彩を表現しています。
温泉はアルカリ性単純温泉で、pH9.9とアルカリ成分が強いため、肌の汚れを落とす効果があり、化粧水のようなとろりとした泉質が特徴的です。
内湯は源泉掛け流しの「ぬる湯」と、温度を高めた「あつ湯」の2槽があり、さらに露天風呂を備えています。
湯上り処には水分とビタミンCを補給できる山口名産の夏みかんジュースと小野茶、そして地元の日本酒も用意されていました。
長門湯本温泉は、そぞろ歩きが楽しいので、2020年にリニューアルオープンした外湯の「恩湯」へも行ってみましょう。
木材をふんだんに使い、シンプルで気持ちのいい建物のデザインは、香川の仏生山温泉などを手がけた建築家の岡昇平氏によるものです。
ここのすごいところは、温泉の湧き出るさまを目の前で感じられる本物の源泉掛け流し。浴槽の奥に自然のままの岩盤があり、こんこんと湯が湧き出る様子を実際に見ることができます。
浴槽の底にも源泉があり、足元から噴出する湧きたての新鮮な湯にそのまま浸れる、他ではなかなか体験できない大変珍しい温泉です。
長門湯本温泉は、約600年前に大寧寺の定庵禅師が住吉大明神からのお告げによって発見した、“神授の湯”と伝えられています。
岩盤の上に大切に祀られている温泉神像は、歴代の恩湯建築の時を超えた、住民の方々の信仰対象だったそう。
この街に住む人々は昔から日常的に「恩湯」を使っており、街にとても愛されている温泉であることを感じます。
山口を代表する味覚、ふぐを存分に堪能するディナー
お楽しみの夕食時間。最初に出てきたのは「先八寸」とされるさまざまな前菜の盛り合わせ。左の囲いは、神社の茅の輪をイメージしているそうです。器は萩焼。
イカスミで和えたイカと、大葉で和えたイカの二色和えに生ウニをのせて。イカスミにはナッツを混ぜてあり、まろやかなコクのある味わい。大葉の方はさっぱりとしていて、二つのコントラストが味覚を楽しませてくれます。
イカやウニは山口県の名産。夏から秋にかけてケンサキイカが回遊してきます。萩、長門など山口北部の北浦エリアはウニの餌である海藻が豊富で良質なウニがとれるそうです。
山口はお酒がおいしいことでも知られています。冬は「ふくのひれ酒」などもあり!せっかくなので、おすすめご当地酒の飲み比べを頼んでみました。
「Ohmine 3粒 火入れ山田錦」、「原田 西都の雫」、「貴 濃醇辛口純米80」の3種セットです。
フルーティーで爽やかなOhmineと、しっかりお米の風味を感じる貴、山口産のオリジナル酒米「西都の雫」を使用した原田がちょうど中間くらいのバランスで、それぞれタイプの違うお酒を楽しめました。
そして外せないのは山口県を代表するグルメ、ふぐ料理。この地域ではふぐのことを「ふく」と呼び、「福」ともかけた縁起物として昔から親しまれてきました。
下関には、日本で唯一のふぐ専門卸売市場があります。ふぐ取扱量全国1位であり、日本各地で水揚げされたふぐはみんなこの市場へ集まるそうです。
「ふく薄造り」はトラフグを3種の味で楽しみます。こだわりの製法でつくられた「釜炊き塩」、定番の「ちり酢」、そして変わりだねの「つぶ雲丹たれ」。
まずは釜炊き塩でシンプルにふぐそのものの風味を味わい、次はちり酢でさっぱりと。最後の「つぶ雲丹たれ」は、オリーブオイルとつぶ雲丹、ふぐの魚醤を合わせたもので、やや濃厚なコクのあるカルパッチョ風の味わいで新しいおいしさでした。
メインはてっちりを界 長門風にアレンジした「ふくと牛の源平鍋」です。源平鍋とは、ふぐで有名な下関が源平合戦の舞台、壇ノ浦であることから、ふぐと牛肉を源氏と平家に見立てて名付けたそうです。
山口県では特産のみかんを鍋に入れる風習があり、その要素も盛り込まれています。
柑橘の爽やかな甘酸っぱさがふぐと合い、さっぱりといただけます。火鍋風に鍋を仕切り、反対側で牛肉をしゃぶしゃぶしていただきます。最後は雑炊で、ふぐでとった出汁スープが滋味にあふれ絶品です。
写真には出ていないですが、ここでちょっと珍しいお酒「シセラ」を合わせました。
周防大島のワイン農家「ドメーヌ・ピノ・リーブル」が昔からこの地で栽培されている温州みかんを使い、ワインと同じ醸造法でつくった果実酒です。柑橘のフレッシュで優しく繊細な酸味が心地よく、食事にも合わせやすいお酒でした。
今回宿泊した温泉宿はこちら:界 長門
そぞろ歩きが楽しい音信川沿いに佇む「界 長門」。宿と街並みが一体化し、旅行者にもオープンな雰囲気と、暮らすように過ごせる居心地良さがこの街にはあります。
優しく温かいこの街に住む人々と会話を楽しめば、思いがけない出会いがあるかもしれません。「70歳以上限定『温泉めぐり 界の定期券』」の対象施設の一つとして、シニア女性にも人気の温泉宿です。
界 長門
●住所:〒759-4103 山口県長門市深川湯本2229-1
取材協力:星野リゾート 文・写真:江澤香織 編集:鳥居史(ハルメク365編集部)
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