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小泉今日子さん「何歳になっても、若くて一番キラキラしていた頃の顔ってお互い忘れられないもの」

ハルメク365 / 2024年11月23日 21時5分

小泉今日子さん「何歳になっても、若くて一番キラキラしていた頃の顔ってお互い忘れられないもの」

脚本家の倉本聰さんが原作と脚本を手掛け、本木雅弘さんが主演を務める映画「海の沈黙」(2024年11月22日公開)に出演した小泉今日子さん。ヒロインを演じながら感じたこと。男女の在り方についてもお聞きしました。

恋愛の痛みを抱えていることで自分を保てる時期 

恋愛の痛みを抱えていることで自分を保てる時期 

©2024映画『海の沈黙』INUP CO.,LTD

ー映画で安奈が語り始めるシーンは思わず引きつけられました。今回、ヒロインの安奈を演じた感想はいかがでしたか。

小泉今日子さん(以下、小泉今日子)

実は私、ヒロインという役割は久しく与えられていなかったんです。自立している女性や、自分から動いていく元気なタイプの役が多くて。
今回は、男性社会の中で静かに佇んでいるようなヒロイン役なので、単純に「わーい!」って(笑)

一方で、この役に自分を選んでいただいた理由を考え、自分なりに応えたいと思いました。

今回は役をいただいてから準備する時間があまりなくて。髪の毛などはいい小道具になるので、次の作品までに伸ばしたり髪型を変えたりするんですが、そういう準備ができなかったんです。

そうなったらそうなったで、潔くやりきろう、どうしたら安奈になれるだろう、と考えて、最終的には、精神性が一番大事なのかな、と。

元恋人の竜次から絵画を託されるシーンがあるんですが、それに値する人間でいようと思いました。

安奈は、画家の娘で画壇の中のルールもわかっていて、そこから飛び出したが恋は実らず、結局元の世界に戻って結婚という選択をして……。諦めたわけでもなく、これが正解だと思って生きている。

ちょっと息をひそめて、いろんな感情を閉じ込めてきた女性なのかな。

でも、だから恋愛の痛みを抱えていることで自分を保てる時期があったんじゃないかなって思うんです。

何歳になっても目に浮かぶのは若く、輝いていた姿

何歳になっても目に浮かぶのは若い輝いていた姿

©2024映画『海の沈黙』INUP CO.,LTD 

ー元恋人との再会シーンは、大人の女性にとっては心にぐっとくるものがあります。

小泉今日子

二人とも、若かりし頃の思い出とか消えないわだかまりとか、感情の下にたまった澱のようなものが、ずっと人生に影響していたんだと思います。

周囲がどんなに批判していても、きっと心のどこかで彼を肯定していたから、彼が自分の生き様を貫いてくれたことに“ありがとう”と最後に言えた。

ただの愛や恋とは違う感情が二人の間にはあったのでしょうね。

ー本木雅弘さんと久しぶりの共演はいかがでしたか?

小泉今日子

本木さんとは32年前に、ドラマ「あなただけ見えない」で共演したけれど、こういう元恋人という間柄で微細な感情のやりとりをするような共演は初めてだったかもしれません。

私たち、10代からの付き合いですから、アイドルとして一番キラキラしていた頃を実際に間近で見て覚えているんですよね。

だから、若い頃の恋人同士の役をするときにも、思い出の中で若くてきれいだったときをお互いリアルに思い出すことができるんです。たとえ目の前の相手を見て老けたな~と思っても(笑)、その奥に若い日の顔をありありと思い浮かべることができる。

私たちのそういう関係が演じる上では助けになりました。

でも、もし本当の元恋人だったらやりにくかったのかなあ……(笑)

本木さんとは、つかず離れず40年。親戚みたいな間柄

本木さんとは、つかず離れず40年。親戚みたいな間柄

ー“花の82年組”同期でデビュー以来の間柄ですね。

小泉今日子
本木さんとは、つかず離れずの友人で、お互いに性別を気にしない関係というか。

アイドル時代は、メイク道具の貸し借りなんかもしてました。他の人とはしなかったけど、不思議と本木さんとは「忘れちゃったから、貸してよ」って言えちゃう仲というか。

私はちょっと男っぽいところがあるし、本木さんの方が繊細だったり。ちょうどいいところで同じ性別のような間柄なんです。

ー同じ役者としてライバル心などはありませんか?

小泉今日子

ないですね。特に同期の人たちには全くないです。みんなが個性的で、あの役なら彼女の方がいいよね、などと思いますし。中森(明菜)さんにもそう思っています。今はまたライブ活動などで、みんながんばっているなあと。

同期でよ~いドン!って走っていくと、途中からお母さんになる子とか、いろんな道に分かれていって。その後も、本木さんとは選んだ道が一番近いのかもしれない。

だから、何か気になる存在で、ああ、いい仕事したんだなとか、ずっと意識している関係で。今回の共演は、はっと気付いたら、32年ぶりに本木さんが隣にいた、という感じです。

実は本人よりも彼のマネージャーさんと古い付き合いでよく話したり食事したりするんですよ。だから、直接はそんなに触れ合う機会がないんだけど、彼女を介して本木さんのことを知ってたりして。

(本木さんの義理の父母)内田裕也さんとは共演させていただいて、樹木希林さんは生前、ときどきお電話をいただいたりして交流もあったので、とても近い存在なんですよね。

(奥様の)内田也哉子さんとも一緒に仕事して、お茶を飲んだりもしましたから……何だかもう親戚みたいな関係ですよね(笑)

50代後半…これからに向けてのビジョンは?

50代後半…これからに向けてのビジョンは?

ー今や50代女性の生き方の先輩のような存在ですが、小泉さんの60歳からの計画を教えてください。

小泉今日子

今は、先のことはまったく考えていないんです。

50代は、人生後半をどう生きるか、たくさんたくさん考えて、めいっぱい行動して過ごしてきました。今までも、ずっと、そうしてきた気がするんです。

これから先は、これまでのように考えて進むのはやめて、その時その時を感じて生きてみたい。

だから今は何も考えずに、60歳の誕生日を迎えた日に感じることを、自分へのサプライズプレゼントとして楽しみにしています。 

小泉今日子(こいずみ・きょうこ)

1966年生まれ、神奈川県出身。1981年「スター誕生」に合格して、翌82年に歌手デビュー。「なんてったってアイドル」等数々のヒット曲を残す。その後、俳優としてドラマ、映画を中心に活躍。またエッセイなど文筆家としても定評がある。2015年自ら代表を務めるプロダクションを設立。舞台・映像・音楽・出版とジャンルを問わず作品をプロデュースしている。

「海の沈黙」   50代後半…これからに向けてのビジョンは?

©2024映画『海の沈黙』INUP CO.,LTD 

2024年11月22日より全国ロードショー

巨匠・倉本聰が長年にわたって構想し、「どうしても書いておきたかった」と語る渾身のドラマがついに映画化!

世界的な画家の展覧会で起こった贋作事件。この絵を描いたのは一体、誰なのか? 同じ頃、北海道で全身に刺青の入った女の死体が発見される。このふたつの事件の間に浮かび上がった男。それは、かつて新進気鋭の天才画家と呼ばれるも、突然人々の前から姿を消した津山竜次だった――。

人間にとって「美」とは何か? 私たちは人生の終わりに何を見つけるのか? 観客の心を揺さぶり続けてきた作家・倉本聰が描く集大成的作品が幕を開ける。

原作・脚本:倉本聰
監督:若松節朗
出演:本木雅弘、小泉今日子、石坂浩二、萩原聖人、中井貴一
配給:ハピネットファントム・スタジオ
 

(衣装クレジット)
ニット8万8000円/CINOH(MOULD 03-6805-1449)、ピアス3万5200円/PLUIE(PLUIE Tokyo 03-6450-5777)、リング 右・人差し指1万9800円、薬指2万9700円、左4万700円/Rieuk(Rieuk info@rieuk.com)
 

取材・文=金田千里 写真=泉三郎 ヘアメイク=石田あゆみ スタイリスト=藤谷のりこ 編集=長倉志乃(ハルメク365) 

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