体を動かす筋肉や関節、維持できてる?「カラダ年齢」をセルフチェック【整形外科医が解説】
ハルメク365 / 2024年11月10日 22時50分
最近平地で足先がひっかかり、つまずいたことがある人は要注意! 体を支え、動かすための筋肉や関節「運動器」が衰えているかも? まずはあなたの運動器年齢をチェックしてみましょう!大人のための、健康と美を兼ねた体作りのやり方を教えてもらいました。
美しい「姿勢」を作る筋力が大切!
「大人のラジオ体操」で一大ブームを巻き起こした医師・中村格子さんの連載をお届けします。スポーツドクターであり、整形外科医でもある中村格子さんに健康と美しさを兼ね備えた体作りを教えてもらいます。第一回のテーマは「姿勢」。体の基盤となる姿勢を毎日意識しながら、美しい体作りを始めましょう。
【診断チェック】あなたの運動器年齢は?
自分に当てはまるものにチェックしてみましょう!
- 昔はあけられたビンの蓋が開けられない(握力の低下)
- 3階まで階段で上がれない
- 平地で足先がひっかかり、つまずいたことがある
- 片脚立ちで靴下やズボンがはけない
- 靴のかかとの外側ばかりが減る
- 足の裏にマメやタコが常にある
- 肩がこりやすい
- 両腕を耳の横まで上げられない
- 電車では立っていられない
- 1週間に1度も運動しない
体を支え、動かすための筋肉や関節を「運動器」といいます。美の基本、姿勢を支えるのも運動器の一部、「抗重力筋」です。立つ、歩くなどの基本的な動作を支える抗重力筋が衰えれば、体は動かしにくくなり、体の重みを支えきれず、どんどん姿勢が悪くなります。
すると、体のバランスは崩れ、代償として肩や腰、ひざなどに痛みが出てしまうことも。姿勢の悪化は見た目の若々しさにも大きく影響します。まずは抗重力筋を意識して、姿勢を美しく保ちましょう。
【0個】20代相当すばらしい運動器年齢です。そのままの若さをキープしましょう。
【1~2個】30代~40代前半相当運動器の老化が始まっています。そろそろ体作りも始めましょう。
【3~4個】40代後半~50代前半相当老化を実感し始めていませんか。まだまだ若さは取り戻せます。
【5~6個】50代後半~60代相当体力に自信がなくなっていませんか。正しいケアで体の基礎作りから始めましょう。
【7個以上】70代以上相当相当体が動かないことで自信を失っていませんか。ムリせず、少しの運動から始めましょう。
姿勢を意識して整えれば、運動器の筋トレになる
胸を極端に張っている、背中が丸くなる、足をするように歩いている……。気付かないうちに、こうした姿になっていませんか。姿勢を意識したとき、運よく全身鏡があればいいですが、なかなか美しい姿勢になっているかどうかチェックするのは難しいですよね。
姿勢が気になるときに、すっと両腕を上げて伸びをする。美しい姿勢のイメージが頭にあれば、たったこれだけで姿勢はスッと美しくなります。毎日姿勢を意識して、全身の抗重力筋を鍛えれば、美しい姿勢を保てるのです。
もう一つ、姿勢のチェックとしてぜひ活用してほしいのが、ウエストまわり。姿勢が整えば、お腹まわりに筋力の支えができるとともに、腹圧が生まれ、ろっ骨の下と腰骨の間に指4本分程度の空間ができます。腹圧とは内臓を包む腹膜を保つ圧力のこと。腹圧によって横隔膜(おうかくまく)は動かしやすくなり、それによって呼吸が深くできるようになります。
美しい姿勢が保てると、ろっ肋骨の下から腰骨までの間に指が4本入るくびれのある状態に。腹圧が保て、空気をしっかりと取り入れられます
中高年に多い「ぽっこりお腹」は、この腹圧が保たれず、内臓が圧迫され外に追い出された状態。姿勢が整えば、腹横筋などの抗重力筋によって内臓はお腹の中に引き上げられます。ウエストのくびれは単に見た目の美しさや若々しさだけでなく、姿勢の美しさや内臓の位置・働きのよし悪しを知る目印にもなります。
美しい姿勢の目安は「深い呼吸ができるかどうか」
姿勢を支える抗重力筋を使い、下の3つのポイントを押さえると、美しい姿勢を保つことができます。やってみると、呼吸が深く、気持ちよくできるはずです。
【美しい姿勢をつくるポイント】- 無駄な力を入れない
- 胸を開く
- 骨盤をきちんと立てる
■これがNG:骨盤が前に出ている
骨盤を前に突き出して、良い姿勢をとろうとした状態。楽に思えても腰に負担がかかります。
■これがNG:骨盤が後傾している
骨盤が後傾し、あごが前に出た状態。重心が安定せず、腰痛の原因にもなります。
■これがNG:猫背になっている
腕が前に出た猫背の状態。老けて見えるほか、胸が圧迫され、呼吸も浅くなります。
姿勢を美しくするためのエクササイズ
ここから抗重力筋を意識した、簡単にできるエクササイズをご紹介します。エクササイズは痛みのない範囲で行ってください。
1. 全身を伸ばす
手を上に伸ばし、足と手の両方にぐっと伸びをします。その後、自然に手を下ろします。
2. 胸を開く
両腕を肩から肩甲骨を寄せるように外側に回し、後ろに引き上げます。
肩が動かしづらい方は手を体の後ろで組んで、後ろに引き上げます。痛みが出ない程度に。
3. 体側を伸ばす
右手首を左手でつかみ、左側に体側を伸ばすように倒します。左右入れ替えて同様に。
朝起きたときはもちろん、日中の姿勢が気になるときに何度でも繰り返し行いましょう。
見た目に美しいだけではダメ、体をきちんと使う「機能美」を目指しましょう。
体の機能を若々しく保つことが美しい姿勢につながります。人には3つの年齢があるといわれます。中でも注意したいのが、内臓年齢と運動器年齢。この両軸の若さを保ててこそ、健康長寿が実現できるのです。
【3つの年齢:1】暦の年齢
毎年必ず、誰もが1歳ずつ重ねる年齢。生理学的年齢。
【3つの年齢:2】運動器年齢
筋肉や骨格など、運動器の機能年齢。ロコモティブシンドロームと呼ばれる運動器の老化が進んだ状態では体力の低下や痛みが出たりし、最悪の場合、寝たきりを招きます。
【3つの年齢:3】内臓年齢
血圧やコレステロールなど、臓器の機能年齢。内臓の老化が進むとメタボリックシンドロームなどから、心疾患などの血管障害が起こります。
内臓年齢の老化は「メタボ」の言葉の普及とともに、意識する方も多くなりました。一方、運動器年齢はどうでしょう。体重の増減ばかりを気にして、できれば運動したくないと思っていませんか。
実は厚生労働省の調査によると、寝たきりになる方の約3割が運動器の衰えが原因。運動器が衰え、転倒や関節痛から歩けなくなったのでは、どんなに内臓年齢が若くても、健康とはいえません。太っている、痩せているに関係なく、適度な運動習慣を保つことが、運動器年齢を若く保ち、寝たきり予防にもなるのです。
体を動かせば、気分もよく、リラクゼーション効果も期待できます。また、運動によって脂肪燃焼を促進し、代謝を上げれば、内臓年齢の若さにもつながります。
モデルのようにすっとした美しさは必要ありません。意識してほしいのは、きちんと体が使える「機能美」。美しい姿勢も、機能美を目指す第一歩になります。姿勢が整えば、全身に空気が入り、筋力もつきやすくなるからです。
姿勢は崩れていないか、関節は固まっていないか、どこか痛みや不調が出ているところはないかなど、毎日、自分の体と向き合いましょう。
「大人のための美からだ学」を教えてくれたのは?
中村格子(なかむら・かくこ)
整形外科医 医学博士 スポーツドクター
Dr.KAKUKOスポーツクリニック院長
「健康であることは美しい」をモットーにトップアスリートから一般まで健康で美しい人生をサポートをすべく自身のクリニックや講演、多数メディアなどで幅広く活動。特別な道具やテクニックは必要なく誰でも取り組みやすい独自のエクササイズを提案。
『大人のラジオ体操』(講談社刊)はシリーズ累計83万部。『究極のストレッチ』(日経BP社刊)は複数の海外翻訳版発行。
Dr.KAKUKOオンラインクラス開講中 https://dr-kakuko.teachable.com/
取材・文=中嶋信次(編集部) ヘアメイク=木村三喜(マスキュラン) 撮影=中西裕人(編集部) 衣装協力=チャコット
※この記事は雑誌「ハルメク」2013年2月号に掲載した記事を再編集しています。
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