【人生相談】「自分に自信が持てない」お悩み相談の名手・名取芳彦さんが語る落ち込みからの回復術
ハルメク365 / 2024年11月11日 22時50分
「50代からの女性のための人生相談」は読者のお悩みに専門家が回答するQ&A連載。今回は57歳女性の「自分に自信がない」というお悩みに、仏教の教えをわかりやすく説いて「穏やかな心」へ導く住職・名取芳彦さんが回答します。
57歳女性の「自分に自信がない」というお悩み
自分に自信が持てなくて困っています。いつも不安感があって「こうなったらどうしよう」ということばかり考えてしまいます。
何をするにも臆病になってしまっている自分が嫌です。どうしたら前向きになるでしょうか?
(57歳女性・ぱぴ0618さん)
名取さんの回答:自分を変えたいなら石橋の向こう側へ
石橋を叩いて渡る人もいれば、石橋の丈夫さを確かめるために叩き過ぎて橋を壊してしまい、結局渡れないという、かつての私のような人もいます。
渡れなかった悔しさを何度も味わったおかげで、「石橋の向こう側に本当に行きたいなら、行かなければならないなら、叩かないで渡ってしまえ」をモットーにした、最近の私のような人もいるでしょう。
ぱぴ0618さんの場合なら、「自信のある自分、前向きな自分」が石橋の向こう側にいるのでしょう。本当にそんな自分になりたいなら、その橋を渡らないとツマラナイ人生になってしまうと思うなら、「でも……」と途中で後ずさりしないで、前に進んだ方がいいと思います。
不安なことや心配事は起こらないケースが圧倒的に多い
「洗車すると雨が降る」は、私が好きな「マーフィーの法則」(1970~1990年代に流行った日常生活の“あるある”を表したユーモラスなもの)の一つです。
他にも「カレーうどんを食べたくなるのは白シャツを着ているときである」「家族で出掛ける予定を立てると、前日に子どもが熱を出す」「高価な食器ほど、よく割れる」などは、私なりのマーフィーの法則です。
とはいえ私の場合、実際には、洗車をしてすぐに雨が降ることはめったにありません。カレーうどんを食べたくなるときに白シャツを着ているのは、まれです。子どもが熱を出さず家族で出掛けることも多いし、普段使っている食器が割れるのです。
それなのに、マーフィーの法則として心に刻まれるのは、その事態が他より強烈に印象づけられてしまうからです。
『現代語裏辞典』(筒井康隆著・文藝春秋刊)には「心配性」の意味として「心配し過ぎてその通りになる性格」とあります。
心配事は起こらない方が圧倒的に多いのですが、それが一度でも起こると、「やはり心配していた通りだ」と強く心に焼き付けられ、心配性に拍車がかかります。
ぱぴ0618さんも不安や心配が現実になったことがあるのでしょう。一度でも実際に起これば、その印象が深く刻まれます。
しかし、不安なこと、心配事は、起こらない方が圧倒的に多いのです。
ですから、自分が不安に思っていること、心配していることは、ほとんど起こっていないという事実を再確認することをおすすめします。
そして、「こうなったらどうしよう」と不安がるだけでなく、具体的に「こうなったら、こうしよう」と計画を立てるといいでしょう。
例えば「将来年金だけの生活になったらどうしよう」と不安になるのではなく、「収入が年金だけになったら、それに見合った生活をしよう」「年金だけでは心もとないから、副収入を得る方法を見つけよう」などと考えておくのです。
他人と比べず、自分ができることを増やすと自信がつく
自信をつけるための具体的な方法は、他の人と比べずに、「これはできる」と言えるものをいくつか身に付けることです。
例えば、味噌を手作りする。100均に足しげく通って商品の情報通になる。一年間にやりたいことを(できるかどうかは別にしても)100個は書き出せるようになるなど、どんなことでもかまいませんから、成功体験につながることをしてみるのです。
不安になるのは、恐れていた事態になったとき、対処する自信がないからです。小さな成功体験を積み重ねていくことで、「なるようになる」という開き直りを含めて、自分の力を信じて乗りきれるようになります。
生きているだけで自信を持っていい根拠がある
最後に、私が落ち込んだとき、自信を取り戻すために再確認していることをご紹介します。
ぱぴ0618さんも私も、約37兆個の細胞が結びついて機能している体を持っています(37兆は1秒に3個ずつ寝ないで数えて40万年ほどかかる数だそうです)。
また、人体を構成している主な元素は、酸素65.0%、炭素18.0%、水素10.0%、窒素3.0%、カルシウム1.5%、リン1.0%です。これらの元素は、宇宙ができた100億年以上前から、宇宙のどこかにあったもの。巡り巡ってぱぴ0618さんの体をつくっています。ですから、ぱぴ0618さんの体は宇宙と同い年といえます。
そんな体で生きているぱぴ0618さんは、今日、先祖たちから受け継いだ命の第一線を生きています。そして、他の誰でもない自分の人生の最前線を、今日も、生きているのです。
このように考えれば、“生きていること自体”に自信を持っていいことがわかります。
多くの自信には、たいした根拠はありませんが、「約37兆個の細胞でできていて、宇宙と同い年の体で、今日も命の第一線、人生の最前線を生きている」は、自信の裏付けとして十分な根拠と言えるでしょう。
「仏教」は「仏の教え」と「仏になるための教え」の二つの意味がありますが、自信は「自分を丸ごと信じる力」であり、「自分が持っている力(可能性)を信じる」ことかもしれません。
ぱぴ0618さんが無事に橋を渡り、不安の少ない、自信に満ちた生き方ができることをお祈りしています。
回答者プロフィール:名取芳彦さんなとり・ほうげん 1958(昭和33)年、東京都生まれ。元結不動・密蔵院住職。真言宗豊山派布教研究所研究員。豊山流大師講(ご詠歌)詠匠。写仏、ご詠歌、法話・読経、講演などを通し幅広い布教活動を行う。日常を仏教で“加減乗除”する切り口は好評。『感性をみがく練習』(幻冬舎刊)『心が晴れる智恵』(清流出版)など、著書多数。
構成=渡邊詩織(ハルメクWEB)
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