「これ、ちゃんとできてる?」今すぐチェック!日常生活で認知症予防になる動きを解説
ハルメク365 / 2024年11月4日 22時50分
もの忘れや認知症の予防方法について専門家に聞く、全7回の企画。今回は「運動」で認知機能の低下を予防する方法を紹介。普段のお出掛けや日常生活の中で、すぐにでも取り入れられる簡単な2つの運動を、2人の専門家に教えてもらいます。
「認知症予防はウォーキングがベスト」はもう古い!
もの忘れや認知症予防に大切な「運動」「食事」「生活習慣」「脳トレ」の4つについて、前回解説しました。
そのうち、今回は「運動」による、もの忘れや認知症予防についてです。
認知症の予防には、少し前まで“ウォーキングなどの有酸素運動がベスト”と考えられていましたが、最近では、筋力を保つ運動と組み合わせて、バランスよく行うことが大切だと考えられています。
■「こうでなきゃダメ!」はもう古い!×長時間ウォーキングする必要がある
×歩くなら1日1万歩以上
×きつい筋トレをしなければならない
そこで今回は、少し意識するだけでできる2つの運動、「大股歩き」と「片足立ち」を教わります。
運動1:大股歩き
■教えてくれたのは谷口 優(たにぐち・ゆう)さん秋田大学大学院医学系研究科修了。医学博士。東京都健康長寿医療センター研究所協力研究員。国立環境研究所主任研究員。著書に『たった5センチ歩幅を広げるだけで「元気に長生き」できる!』(サンマーク出版刊)、『認知症の始まりは歩幅でわかる ちょこちょこ歩きは危険信号』(主婦の友社刊)がある。
大股歩き、大事なのは「歩数」より「歩幅」
「脳の働きと歩幅は密接に関係しています。65歳以上、1000人以上を対象に歩幅の狭い人、普通の人、広い人の3つのグループに分けて調査したところ、歩幅の狭い人は広い人に比べ、数年のうちに認知機能が低下するリスクが3.39倍高くなりました」と東京都健康長寿医療センター研究所協力研究員の谷口 優さん。
■歩幅が狭い人は認知機能低下のリスクが高い!出典:Taniguchi Y, et al. The Journals of Gerontology.2012;67:796-803.
そこで、脳に刺激を与えるために谷口さんがすすめるのが「大股歩き」です。
「歩幅を広げることで、脳と足の間の神経伝達が刺激されます。脳から足へ、足から脳への情報のやりとりが活発になり、脳の血流アップも期待できます」と谷口さん。
1日何分という決まりはなく、「買い物などの行き帰りの片道だけ歩幅を広げることから始めましょう」と谷口さんは呼びかけます。
やりかたは、ポイントを押さえれば簡単です。
「大股歩き」の良い例
●腕は後ろに大きく振る
●視線は前
●ひざを伸ばす
●着地はかかとから
●視線が下
●姿勢が悪い
●歩幅が狭い
普段、うつむきがちで、とぼとぼと狭い歩幅で歩いていませんか。今より5cm、歩幅を広げることを意識しましょう。
■歩幅は新聞紙や、横断歩道の白線を超えるのが目安たたんだ状態の新聞紙の横幅は約40cmで、横断歩道の白線は45cmほど。またいで超えられるなら、歩幅は65cm以上ある目安になります。新聞紙の上をまたぐと滑ることがあるので、新聞紙の脇を歩いてみてください。
運動2:片足立ち
■教えてくれたのは伊賀瀬道也(いがせ・みちや)さん愛媛大学大学院博士課程修了後、愛媛大学医学部附属病院、抗加齢・予防医療センターを運営。抗加齢医学講座教授として老年病一般外来や「抗加齢ドック」を運営。著書に『国立大教授が教える最高の若返りメソッド 長生き1分片足立ち』(文響社刊)がある。
片足立ちの「バランス力」は脳の委縮にも関係!
もう一つ、認知症予防におすすめの運動は「片足立ち」。
「まず、上の写真のように片足立ちを1分、してみてください。いかがですか?もしすぐにふらつき、続けられなかった場合、単なる筋力不足だけではなく、不安定な体を支えて姿勢を維持する“バランス力”が低下しているサインです」
そう話すのは、4000人以上の患者さんに指導を続けてきた、愛媛大学大学院抗加齢医学講座教授の伊賀瀬道也さん。
「もしかしたら脳が萎縮し、認知症の前段階(MCI)になっている可能性もあります。片足立ちは、認知症や脳卒中といった深刻な病気の芽の発見にも役立つのです」と話します。
■片足立ちの時間が短いと脳が委縮している可能性もアルツハイマー型認知症は側頭葉内の海馬が萎縮して側脳室下角が拡大するという特徴があります。片足立ち時間が短いと側脳室下角面積が大きい(脳萎縮)。
出典:Kido T,et al. Dement Geriatr Cogn Disord.2010;29:379-387.
片足立ちは、脳の病気のバロメーターになるだけではなく、「体を支えるバランス力も強化できる一石二鳥の運動」と伊賀瀬さんは言います。
体を支える「バランス力」には、筋力や骨量、足裏で地面をとらえる「感覚能力」の他、脳が命令を全身に伝える「神経ネットワーク」が正常に働いているかも重要です。
このバランス力は、通常の筋トレだけでは十分に鍛えることができません。
伊賀瀬さんは、「片足立ちはふらつかないようにと踏ん張るため、脳の神経ネットワークが刺激されます。片足立ちの時間が長い人ほど認知機能検査の点数がよい傾向があります。太ももの大腿筋が鍛えられ、骨に適度な負荷がかかって骨密度が上がり、血液循環もよくなります」と言います。
■開眼片足立ち時間と認知機能検査の点数出典:Kido T,et al. Dement Geriatr Cogn Disord.2010;29:379-387.
「最初は1分できなくても、毎日することで1分続けられるようになった方もたくさんいます。歯磨きしながらなど、気軽に続けてみてください」と伊賀瀬さんはアドバイスします。
基本の「片足立ち」
1.足を揃えて立つ
両足を揃えて立ち、目線を前に向ける。
<ポイント>
●背筋は伸ばす
●太もも前面の大腿四頭筋を意識する
●足裏全体をしっかり床に付ける
2.ひざを90度に曲げて足を上げ、1分静止する
腕は下ろしたまま、床と平行になる位置まで太ももを上げ、ひざを90度に曲げて1分静止。反対側の脚も同様に行う。
これを1セットとして1日3回行う。
<ポイント>
●目は開けたまま
●ひざは90度に曲げる
●太もも、ふくらはぎ、足裏を意識する
「慣れないうちは壁に手をついて支えたり、足を90度ではなく少し上げるだけでもOKです。最初はできなくても、徐々にできるようになる人が多いです」と伊賀瀬さん。
「後ろに片足上げ」でさらにバランス力アップ!
基本の「片足立ち」が1分間できるようになったら、レベルアップしてみましょう。
1.いすの背を持って立つ
いすから30~40cm離れて立ち、上体を前に少し倒していすの背を持って立つ。
2.片足を後ろに上げる
ひざを伸ばしたまま、片足を真後ろにゆっくり上げていく。できるところまで上げたらゆっくり下ろす。10回繰り返して反対側の足も同様に行う。
これを1セットとして1日2回行う。
■歯磨きしながら“ながら”で認知能力向上!片足立ちをしながら歯磨きをする、歌を歌う、しりとりや足し算や引き算をする。
こうした同時に2つのことを行う「ながら片足立ち」は、脳により刺激を与え、認知機能を高める効果が期待できるといいます。毎日、朝晩の歯磨きのとき、左右の足で1分ずつ、計2分行うのもおすすめです。
「片足立ち」が難しい人は、座ったままで太もも強化
1.座って片足を上げる
いすに浅く座り、座面を軽く持って、背すじをまっすぐ伸ばす。太ももを持ち上げるイメージで片足を上げる。
<ポイント>
●目線は前に
●体は後ろに倒れないように
●椅子の座面を軽く持つ
●足は地面から10~15cm上げる
2.床面ぎりぎりまでおろす
1で持ち上げた足を、床面ギリギリまで下ろす。1と2をゆっくり10回繰り返す。反対側の足も同様に行う。これを1セットとして3回行う。
<ポイント>
●太もも前面の大腿四頭筋を意識する
●足は床につけない
お出掛けのとき歩き方に少し注意したり、歯磨きや家事をしながらちょっとした時間に片足立ち運動をして、脳の認知機能の低下を防ぎましょう。
次回は、「食事」についてです。脳にゴミをためない食べ方についてアルツハイマー病の分子医学などを専門にしている白澤卓二(しらさわ・たくじ)さんに詳しく伺います。
※効果には個人差があります。試してみて異変を感じる場合はおやめください。
取材・文=野田有香(ハルメク編集部) 撮影=鈴木宏 モデル=東千秋 ヘアメイク=小島けさき
※この記事は雑誌「ハルメク」2021年10月号を再編集、掲載しています。
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