更年期以降に増える女性の「脂質異常症」…コレステロールを下げるコツ&注意点【医師が解説】
ハルメク365 / 2024年10月27日 14時50分
無料で誰でも手にできる「魔法の薬」を知っていますか? ウォーキングなどの運動は、自分で行える病気への有効な対策! LDLコレステロールや中性脂肪が高過ぎると脂質異常症となり、動脈硬化や心血管疾患や脳梗塞の原因に。今日から運動を始めましょう!
監修者プロフィール:吹田 春佳さん
LIGHT CLINIC 副院長。30年、50年先の健康を見据えた肥満治療普及を目指してダイエット専門クリニックLIGHT CLINIC(ライトクリニック)を立ち上げ。健康的にダイエットができるよう、内服治療の相談、ダイエット施術から食事・運動指導まで、ダイエットのトータルサポートを提供している。最新情報はインスタをチェック。
悪玉・善玉、そもそもコレステロールって?
コレステロールは、脂質の一種です。ホルモンや細胞膜、胆汁酸などの原料になる栄養素で、人間が生きていく上で欠かせないものですが、増え過ぎれば脂質異常症や生活習慣病、動脈硬化につながるなど健康に悪影響を及ぼします。
しかし、コレステロールが体内に蓄積したからといって初期症状や自覚症状が現れるわけではありません。そのため「気づいたときにはコレステロール値がかなり高くなってしまっていた」というケースも多いのです。
血液中には数種類の脂質が含まれており、チェックしたいのが「LDLコレステロール(悪玉コレステロール)」「HDLコレステロール(善玉コレステロール)」「中性脂肪(トリグリセリド)」の3つです。
- LDLコレステロール(悪玉コレステロール)
肝臓で生成された栄養素を身体の末梢組織に運ぶ役割がある。生命維持に欠かせないものだが、増え過ぎると血管壁に付着して血管を狭く、硬くさせるため、動脈硬化につながる - HDLコレステロール(善玉コレステロール)
血管内の余分なコレステロールを回収し、肝臓へ戻す役割がある。HDLコレステロール値を正常に保つことで動脈硬化を予防できる - 中性脂肪(トリグリセリド)
ブドウ糖が不足した場合に補う働きをするが、増え過ぎると体脂肪として体に蓄積し、肥満や生活習慣病の原因に
更年期を迎えた女性はLDLコレステロールが高くなる傾向にあるため、健康管理の一つとして普段からコレステロール値を定期的にチェックしておくのがおすすめです。
コレステロール値に異常が起こると「脂質異常症」に「LDLコレステロール(悪玉コレステロール)」「HDLコレステロール(善玉コレステロール)」「中性脂肪(トリグリセリド)」の値に異常が起こると、「脂質異常症」と診断されます。
脂質異常症になると、血液中に通常よりも多くのコレステロールが流れ込み、血管壁にたまって動脈硬化を引き起こします。動脈硬化になると、心筋梗塞や脳卒中といった、命にかかわる病気を引き起こすリスクを高めてしまうことに。
厚生労働省による生活習慣病予防のための健康情報サイト「e-ヘルスネット」によれば、それぞれの脂質異常症の診断基準(空腹時採血)は以下のようになっています。
- LDLコレステロール
140mg/dL以上……高LDLコレステロール血症
120~139mg/dL……境界域高LDLコレステロール血症 - トリグリセライド
150 mg/dL以上……高トリグリセライド血症 - HDLコレステロール
40 mg/dL未満……低HDLコレステロール血症
コレステロールを下げるおすすめの運動
運動は、自分で行える病気への有効な対策であり「魔法の薬(マジックピル)」といわれています。運動をすることで、以下のような効果が期待できます。
- LDLコレステロールが下がる
- 中性脂肪が下がる
- 高血圧の改善・予防
- 動脈硬化の予防
- 血糖が下がる
- 筋肉量が増える など
体重や体脂肪減少効果もあるため、コレステロールを減らしたい人はもちろん、ダイエット中の人も積極的に運動に取り組むといいでしょう。
なお、コレステロールを下げるには有酸素運動がおすすめです。ここからは、おすすめの運動についてご紹介します。
ウォーキング誰でも簡単に、手間なくできるおすすめの有酸素運動が、ウォーキングです。
10年間にわたり日本人約7万人を追跡した研究では、毎日1時間以上歩く人は、毎日30分歩く人に比べ、脳梗塞での死亡リスクが約3割、心筋梗塞などの血管疾患で死亡するリスクは約2割低減することがわかっています。
外に出て日光を浴びたり、季節の変化を五感で感じることは、脳の活性化やストレス発散にもつながります。
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動基準 2013」によれば、18〜64歳までの人はウォーキングもしくはそれと同様以上の身体活動を毎日1時間、65歳以上の人は運動強度を問わず身体活動を毎日40分行うといいとされています。
運動不足の人や最初から30分が難しい人は5分、10分……と徐々に時間を長くしていくといいでしょう。
ウォーキングは比較的負担の少ない運動ですが、膝や腰など関節への負担が心配な人は、プールの中で行う水中ウォーキングがおすすめ。水中で行うことで負担を減らして取り組めます。
ジョギング・ランニング普段から運動習慣がある人や走るのが好きな人は、ジョギング・ランニングもおすすめです。
まずはゆっくりのウォーキングから始め、早歩きでウォームアップし、その後ゆっくりとジョギングへつなげていくといいでしょう。ジョギングを終えるときは、最後に5分間クールダウンのためのウォーキングをするのがおすすめです。
サイクリング・エアロバイク関節への負担を掛けずに運動したい人は、サイクリングやエアロバイクもおすすめ。全身の筋肉を増やす筋トレにもなり、特に下半身の筋肉を鍛えられます。
天気がいい日は外でサイクリング、雨の日はエアロバイクなど、使い分けするといいでしょう。
ラジオ体操学生の頃、誰もが一度はやったことのあるラジオ体操もおすすめの運動の一つです。関節や筋肉を効率よく動かすことができ、ダンス感覚で楽しく体を動かせます。
激しい動きをすることはないので、思いついたときに自宅でいつでもできることもメリットです。体調に合わせて、ジャンプや前屈後屈運動などは無理のない範囲で行いましょう。
踏み台昇降雨の日でウォーキングや外での運動ができないときは、自宅で踏み台を使って簡単にできる踏み台昇降がおすすめです。階段や踏み台がある場合はそれを使い、ない場合は踏み台は使わずもも上げ運動でもOK。
血行を促し、代謝を高めてくれる効果が期待できます。
コレステロールを下げる運動のポイント
ここからは、コレステロールを下げる運動のポイントをご紹介します。
適度な運動を習慣にするLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を減らすためには、適度な運動を習慣化することが大切です。
LDLコレステロールを取り込むHDLコレステロール(善玉コレステロール)は、運動によって増加します。最近の研究では、少なくとも週に120分の有酸素運動が推奨されています。
- 時間:1回あたり30〜60分以上(10分ずつの運動を3回など、複数回に分けてもOK)
- 強度:中強度(少しきついと感じるくらい)
- 頻度:週3回以上
1回あたりの運動時間はなるべく長い方がコレステロール改善効果が高いと報告されているものの、無理はしないでOK。
運動は数か月にわたって長く続けることでコレステロール改善効果が得られるようになるため、無理をせず自分のペースで継続することを意識するといいでしょう。
また、上記はあくまで目安であり、自分に合わせて取り入れる必要があります。これまで運動をしていなかった人が急に長時間運動すると、心臓や関節に負担がかかってしまうためです。
体調に合わせ、少しずつ運動に取り組む時間を長くしたり、強度を高めて慣らしていくといいでしょう。
歩く歩数を増やす忙しくてなかなか時間が取れないなど、「毎日の生活に運動を取り入れるのが難しい……」という人もいるかもしれません。そんなときは、1日の歩く歩数を増やすことを意識しましょう。
イギリスのレスター大学などの研究によれば、血糖値が高めの人に毎日2000歩多く歩いてもらった結果、実験開始から6年後に、心血管疾患のリスクが8%減少したことがわかっています。
また、1日に4000歩多く歩いた場合では心血管疾患のリスクが16~20%減少したそうです。
とはいえ、多ければ多いほどよいわけではなく「適度に」が大切。無理に運動し過ぎると疲れがたまってしまうため、無理のない程度で継続していきましょう。
座ったままの時間を減らす座ったままの時間を短くするだけでも、糖尿病リスクを減らすことができます。
レスター大学の別の研究では、普段座ったままでいる時間が長い人は、コレステロールや中性脂肪、血糖値や腹囲などの値が悪くなりやすいことがわかっています。
有酸素運動や歩数を増やすことが難しい人は、座ったままの時間を減らすことから始めてみましょう。
同時に生活習慣も見直すコレステロールを下げるためには「運動」「食事」「禁煙」が基本です。せっかく積極的に運動を取り入れても、食生活や生活習慣が乱れていては思ったような改善効果を感じられない可能性があります。
脂質の多い食事や肥満は、コレステロール値を上げてしまう原因となります。動物性の食品や卵類、内臓類にはコレステロールが多く含まれるため、食べ過ぎには注意が必要です。
運動にプラスして、コレステロールを下げる食品を積極的に取り入れるといいでしょう。
また、タバコは血液中のLDLコレステロールを増加させてしまうことが知られており、血圧上昇や動脈硬化を進行させるなど、健康にさまざまな悪影響があります。
ストレスも、LDLコレステロールを増加させる原因です。ストレスをため過ぎず、定期的にストレス発散しましょう。
コレステロールを下げる運動の注意点
コレステロールを下げるために運動を取り入れる場合、かかりつけ医へ相談しましょう。
心疾患や脳卒中の既往歴がある人、関節など体に痛みがある人、高齢の人、脂質異常症の人は、まずは医師に相談して、どんな運動をどれくらいの時間・頻度で取り入れればいいか決める必要があります。
また、自分自身での体調管理も大切です。がんばり過ぎず、最初は無理のないペースから始めましょう。
運動してもLDLコレステロールが下がらないときは?
コレステロールが上がる原因はさまざまです。食生活や生活習慣の他にも、エストロゲン(女性ホルモン)の低下に伴うLDLコレステロール値の上昇、遺伝的な疾患(家族性高コレステロール血症)などが考えられます。
運動や食生活・生活習慣を改善してもコレステロール値がなかなか下がらない場合は、血管系疾患のリスクを抑えるためにも、一度病院を受診してみましょう。
適度な運動習慣がコレステロール値を下げる!
運動は魔法の薬といわれ、コレステロールを下げる、血糖を下げるなどたくさんの健康効果があります。ストレス解消にもなるため、適度な運動の習慣化を目指すといいでしょう。
ただし、がんばり過ぎは禁物です。最初は無理のないペースから始め、少しずつ運動時間を増やしていきましょう。
※効果には個人差があります。試してみて異変を感じる場合はおやめください。
※この記事は2022年11月の記事を再編集して掲載しています。
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