女子マラソンのパイオニアが実践!無理なく体をつくる「頑張り過ぎない」4つの習慣
ハルメク365 / 2024年8月6日 22時50分
日本女子マラソンのパイオニアとして活躍し、現在も無理のないペースで走り続ける70代の松田千枝さん。健やかで衰えない体を保つには「力まず自然体でいること。そして筋肉を使い続けること」と話します。食べ方の工夫や体操など、その秘訣を伺いました。
松田千枝(まつだ・ちえ)さんプロフィール
1948(昭和23)年、静岡県生まれ。女子マラソンのパイオニア。東京国際女子マラソンには、1979年の第1回から第30回まで、27回の最多出場をし、「東京国際女子マラソンの顔」に。足の痛みに悩まされた経験から「姿勢の体操」を考案。現在、夫が営む「トータルケア千泉堂」で一般の方に向けて指導している。著書に『「姿勢の体操」で80歳まで走れる体になる』(講談社刊)などがある。
故障がきっかけで、体のあり方に意識を向けた
※インタビューは2022年1月に行いました。
60歳で出場した東京国際女子マラソンを完走したときの記念写真
第1子出産後の27歳から、健康のためにマラソンを始め、世界初の女子マラソン大会・東京国際女子マラソンの第1回(1979年)に招待選手として参加した松田千枝さん。以来、オリンピック候補として合宿に参加するなど、日本女子マラソンの先駆者として活躍しました。
同大会の最終回となる第30回大会には60歳で出場し、3時間21分52秒で完走しました。70歳を過ぎ、若い頃のように速さを競う走りはしなくなった現在も毎日体を動かし、バランスのよい食事をしっかり食べ、現役時代と変わらない、しなやかに動く体を維持しています。
「いくつになっても衰えない体を保つには、体にとって心地よい“自然体”でいることが大切だと、走っているうちに気付いたのです」と松田さん。
自然体とは、緊張やこわばりによる余計な力みがなく、心身ともにリラックスしている状態のこと。松田さんがこうした体のあり方に意識を向けるようになったのは、現役時代の故障がきっかけでした。
女子マラソンがオリンピック正式種目になったロサンゼルス大会は出場を逃し、88年のソウル大会を目指して練習に励んでいました。が、そのとき、ひざとかかとを痛め、走れなくなってしまったのです。
挫折し、走る意欲も失いかけていた頃、松田さんに再び希望を与えてくれたのは東京オリンピック・体操メダリストの中村多仁子(なかむら・たにこ)さんでした。
「中村さんにこう言われたのです。『人間の体は年齢を重ねるごとに変化し、次第に筋力や体力に頼れなくなるもの。筋肉だけを酷使するのではなく、無駄のない体の動かし方を追求して、年を重ねるほど自分らしさが輝くような、そんな走りを目指しなさい』と。以来、無駄のない動きができる体作りは、私のライフワークとなりました」と松田さん。
力まず、無理せず、自然体を保つ「姿勢の体操」
中村さんの指導の下、無駄のない動きの原点は姿勢にあると学んだ松田さん。さらに研究を重ね、無理なく自然体を維持するための「姿勢の体操」を考案しました。
「まず、頭のてっぺんから会陰、両足の内側、母指球(ぼしきゅう)を通る体の真ん中を貫く『正中線』を意識して立ってみてください。天井から頭を引っ張られているようなイメージを持つと、自然と背すじが伸び、胸が前に出てくるので呼吸もラクになります。
さらに背骨の骨と骨の間をゆるめていくイメージで、余計な力みを手放していくと、きれいな姿勢を保ちながらリラックスできている“自然体”になれるのです」と松田さんは言います。
小さな習慣を積み重ねて「一瞬も、一生も、美しく」
夫の泉さんと一緒にジョギング。走るスピードはゆっくりでも「走り続けられていることが励みになっています」
松田さんは毎朝、力みがちな体をゆるめて自然体の状態に戻す体操を欠かしません。と同時に、効率のよい栄養のとり方、筋肉を動かすことも大切にしています。
「体をゆるめる体操をした後は必ず、コップ1杯の牛乳を飲みます。運動後30分以内に牛乳を飲むと、血液の基礎的な栄養素であるアルブミンが増え、血液の質とともに体の調子もよくなるからです。アルブミン値が高い人は熱中症にもなりにくいといわれているんです。牛乳が苦手ならヨーグルトでもOKですよ」と松田さん。
その後、夫の泉(いずみ)さんと一緒に約1時間、ゆっくりとジョギングをします。松田さんの右脚には人工股関節が入っているため、走るスピードは本当にゆっくり。でも、自然体であれば、無理なく脚を運ぶことができ、痛みなどを感じることなく、気持ちよく走れるといいます。
帰宅後に用意する朝食で、たんぱく質豊富な食材と旬のフルーツをたっぷりと食べます。昼間は家事の他、姿勢を整える体操や夫婦で趣味の畑仕事などをして過ごし、夕食には庭でとれた野菜を使った料理を楽しみます。
「私はマラソン選手であったと同時に、資生堂に長く勤めていたのですが、資生堂のスローガンは『一瞬も、一生も、美しく』なんです。私も、そうありたいと思っています。そのためにこれからも体と向き合う小さな習慣を積み重ねていくつもりです。無理せず、がんばり過ぎず、楽しむことも忘れずに。そうすれば体だけでなく、衰えない心も保てると思うのです」と松田さんは最後に語ってくれました。
泉さんが運営する東洋医学治療院「トータルケア千泉堂」を自宅に併設。松田さんによる姿勢体操教室も行っている
自然体を保つ秘訣1:目が覚めたら布団の中でストレッチ朝目覚めたら、布団の上で体をゆるめる体操をし、呼吸を整えるのが日課。「血流がよくなり体が温まります」と松田さん。
自然体を保つ秘訣2:体を動かした後は牛乳を飲む衰えない体づくりに不可欠なたんぱく質は加齢とともに不足しがち。運動直後に牛乳を飲んで効率よく摂取。
自然体を保つ秘訣3:朝食に旬の果物を食べるビタミン豊富な一方、果糖も多い果物は朝食でのみ食べます。5~6種類の旬の果物にヨーグルトを添えて。
自然体を保つ秘訣4:庭で育てた野菜も体を支える大きな力農学博士でもある夫の泉さんが切り盛りする庭の畑には野菜がたくさん。松田さんは「主に収穫の手伝いが私の仕事です」と話します。
取材・文=大門恵子(ハルメク編集部) 撮影=中西裕人
※この記事は雑誌「ハルメク」2022年3月号を再編集し、掲載しています。
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