「便秘が原因で心筋梗塞!?」あなどってはいけない!実は命にかかわる便秘症をセルフチェック
ハルメク365 / 2024年11月25日 11時50分
「便秘は万病のもと」と消化器内科の専門医 中島淳さんは言います。慢性的な便秘は心筋梗塞などの病気を招き、不快なだけではなく命にもかかわるんだとか! まずは、便秘症セルフチェックをしてみましょう。症状が軽いうちからケアをすることが大切です。
私って便秘?こんな便のお悩みありませんか?
「お通じが最近あまりない」「トイレに行ってもスッキリしない」など、下記のような便の悩みはありませんか?
- 3日に1回くらいしか、お通じがない
- 便が硬くて、出すのにひと苦労
- 毎日出てはいるけど、コロコロ便がちょっとだけ
- 排便後もなんだかスッキリしない
- 若い頃は快便だったのに、最近どうも便秘気味
上記に心当たりがある方は便秘の可能性大!「便秘対策は、あれ?と思ったら恥ずかしがらずに早めにするのが効果的です」と便秘に詳しい横浜市立大学大学院肝胆膵消化器病学教室主任教授の中島淳さんは言います。
そこで今回は、便秘の原因と危険性を知り、便秘のセルフチェックをしていきます。
便ができるまでの腸の働き
便は大腸でつくられ、蠕動(ぜんどう)運動により直腸に送られます。
食べたものは小腸で栄養素を吸収された後、大腸へ。大腸はいわば便の製造工場。液状の内容物が徐々に水分を吸収され、こね固められて便となります。
便は、腸が大きく動く「大蠕動」によって直腸に運ばれ、便意が生じます。
この大腸でのいずれかの働きが不十分なことで、本来、体外に出すべき便を十分量、かつ快適に排出できない状態を「便秘」といいます。
毎日出ていても「便秘症」?
便秘というと排便回数が減ることと思いがちですが、実は毎日出ていても便秘の場合があります。中島さんは、こう説明します。
「便秘には大きく2つのタイプがあります。排便回数が週に3回未満になる"排便回数減少型"と、便が硬くて強くいきむ、なかなか出なくて時間がかかるといった"排便困難型"です。両方に当てはまる方も多いですね」
つまり、2日に1回でもスッキリ出ていれば便秘ではないし、逆に毎日出ていても排便困難や残便感があるなら立派な便秘というわけです。
50代以降、便秘になる人は増加する
便秘は若い年代では圧倒的に女性に多いですが、加齢に伴って男女ともに増加します。
60代から増え始め、特に70代以降は急増して、男女比がほぼ同じに。若い頃は便秘と無縁だった人も発症しやすくなります。
「平成28年国民生活基礎調査」(厚生労働省)を加工して作成/中島さん提供
主な原因は、加齢に伴う大腸の機能低下。大腸の動きが悪くなって便を直腸にまで送る働きが弱くなったり、直腸の知覚が鈍感になって便意を感じにくくなったりします。
もちろん、食事や運動、睡眠、ストレスといった生活習慣も大いに関係します。
「最近、50代以上の女性では、コロナ禍での運動不足や環境変化によるストレスから、便秘が悪化する傾向が見られます。また、この年代になると大腸がんも心配ですね。最近、どういうわけか急に便秘になったという方は、ぜひ受診して検査を受けましょう」と中島さん。
実は命にもかかわる「便秘症」
従来は「たかが便秘」といわれてきましたが、実は便秘は命にも関わる病気だということが近年、わかってきました。排便時のいきみで血圧が急上昇し、心筋梗塞や脳卒中を招くことがあるのです。
「若い方はトイレでいきんでもそれほど血圧が上がりませんが、年をとると動脈硬化が進んでいますから、血圧が跳ね上がります。実際、トイレで倒れて救急車を要請するケースも少なくなく、便秘の人はそうでない人より心筋梗塞や脳卒中による死亡リスクが高いという報告も。
また、便秘だと慢性腎臓病(CKD)の発症率も上がります。まさに便秘は万病のもとです」と中島さんは警鐘を鳴らします。
あなたは大丈夫?便秘症セルフチェック
2017年に日本初の『慢性便秘症診療ガイドライン』が作成され、便秘は「本来、体外に出すべき便を十分量、かつ快適に排出できない状態」と定義されました。
さて、あなたは大丈夫ですか? まずは下のチェック表で便秘かどうか、確認してみましょう。
- 強くいきまないと出ない
- 便が硬い、ウサギのフンのようにコロコロ
- 排便後も残便感がある
- お尻の穴が詰まった感じや便の出にくさ(排便困難感)がある
- なかなか出ないので、指で便をかき出す必要がある
- 薬を使わないと2日以上便が出ない
排便の4回に1回以上の頻度で上の2項目以上に該当する場合、「便秘症」と診断されます。
若い頃から便秘だった人も、そうでなかった人も、50代以降は便秘問題がさらに身近になってきます。恥ずかしがらずに、症状が軽いうちからケアを始めましょう。
次回からは、お通じをよくする「食べる腸活習慣」と日常生活の中で実践したい「生活と動きの腸活習慣」を紹介します。
教えてくれたのは中島淳(なかじま・あつし)さん
中島 淳(なかじま・あつし)さん
横浜市立大学大学院肝胆膵消化器病学教室主任教授。1989年、大阪大学医学部卒業。東京大学医学部第三内科、米ハーバード大学客員研究員などを経て、2014年から現職。『慢性便秘症 診療ガイドライン2017』の作成にも携わる。著書は『寿命の9割は「便」で決まる』(SB新書)など。
取材・文=佐田節子 イラストレーション=achaca
※この記事は雑誌「ハルメク」2022年7月号を再編集し、掲載しています。
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