【もしかして認知症?】早めの受診が重要な理由をチェック
ハルメク365 / 2024年11月1日 22時50分
誰にでも発症の可能性がある認知症。もし自分や家族が認知症になったら…と考えると不安になる人も多いはず。そこで、医師の杉山孝博さんが質問形式で解説。今回は、認知症かも?と感じたときから、受診するまでについてです。
教えてくれたのは:杉山孝博(すぎやま・たかひろ)さん
川崎幸クリニック院長。1947(昭和22)年愛知県生まれ。東京大学附属病院で内科研修後、地域医療に取り組むため川崎幸病院に勤務。98年川崎幸クリニック院長に就任。81年より「公益社団法人 認知症の人と家族の会」の活動に参加。同会全国本部の副代表理事、神奈川県支部代表。
なんとなく…の不安を解決!
親や家族が認知症になったら……。わからないことが多いからこそ不安になる、認知症のこと。そこで、受診編と制度編、2回に分けて医師の杉山孝博さんに、読者からの質問に答えてもらいました。
漠然とした不安を解消するために、気になる項目からぜひチェックしてみてください。
Q1:“認知症かも?”と思ったらどうすればいい?
A:今起きている症状を確認して、早めに受診を考えましょう
「まず、加齢によるもの忘れと認知症によるもの忘れは違います。例えば『体験の一部を忘れる』『約束をうっかり忘れる』のが加齢によるもの忘れなのに対して、『体験そのものを忘れる』『約束したこと自体を忘れる』のが認知症によるもの忘れです」と杉山さん。
認知症の初期は、もの忘れが多くなったことを本人も自覚していて「何だか自分は変だ」と感じたり、「次々とおかしなことが起こる」と戸惑ったりすることもあります。
「自分の印象だけでなく周りの家族や友人などにも聞いてみて、どんな症状が起きているかをチェックしましょう。認知症は早期受診が大切です。下記で当てはまる項目があれば受診を考えてみてください」(杉山さん)
医療機関受診を検討すべき症状【もの忘れがひどい】
- 今電話をきったばかりなのに相手の名前を忘れる
- 同じことを何度も言う、問う、する
- しまい忘れ、置き忘れが増え、いつも探し物をしている
- 財布・通帳・衣類などを盗まれたと人を疑う
【判断力・理解力が衰える】
- 料理・片付け・運転などのミスが多くなった
- 新しいことが覚えられない
- 話のつじつまが合わない
- テレビ番組の内容が理解できなくなった
【時間や場所がわからない】
- 約束の日時や場所を間違えるようになった
- 慣れた道でも迷うことがある
【性格が変わる】
- ささいなことで怒りっぽくなった
- 周りへの気遣いがなくなり頑固になった
- 自分の失敗を人のせいにする
- 「この頃様子がおかしい」と周囲から言われる
【不安感が強い】
- 一人になると怖がったり寂しがったりする
- 外出時、持ち物を何度も確かめる
- 「頭が変になった」と本人が訴える
【意欲がなくなる】
- 下着を替えず身だしなみをかまわなくなった
- 趣味や好きなテレビ番組に興味を示さなくなった
- ふさぎ込んで何をするのもおっくうがり、嫌がる
出典:公益社団法人認知症の人と家族の会
「早めの受診」が大切な4つの理由
理由1:周囲の混乱を軽くし、方針を決められるわがまま、頑固などと思われていた言動が認知症によるものとわかれば、周囲の人は納得し、混乱が収まります。また本人にも家族にも受け入れる気持ちが生まれ、治療や介護の方針が立てられます。
理由2: 薬の治療は早く始めるほど有効アルツハイマー型認知症の薬には、病気を治す作用はありませんが、症状の進行を抑える効果があるとされています。ただし進行したケースでは効果が期待できないため、治療開始は早いほどいいのです。
理由3:「治る認知症」が手遅れにならない正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫などが原因の認知症は、速やかな治療により驚くほど改善することがあります。また甲状腺機能低下症やパーキンソン病、うつ病などで認知症のような症状が出ることもあるので、早期診断・治療が大事です。
理由4:介護保険などの制度を速やかに利用できる介護保険の申請には医師の意見書が必要なので早めに主治医を決めることが大切です。また若年性認知症で障害年金を受給する場合、初診から1年半経過しないと申請できないため、受診が遅れると受給も遅れます。
Q2:どこの科を受診すればいい?
A2:まずはかかりつけ医を受診。地域包括支援センターにも相談を
「認知症が疑われたら、まず『かかりつけ医』に相談することから始めて、認知症を診ることができる医療機関を紹介してもらうのが基本です」と杉山さん。かかりつけ医がいない場合などは、市町村の地域包括支援センターに相談したり、認知症の相談機関に問い合わせたりするといいでしょう。
認知症を診る医師がいるのは、認知症医療疾患センターをはじめ、病院の精神科、精神神経科、もの忘れ外来などです。町のクリニックにも、もの忘れ外来などを掲げているところがあります。
「病院の精神科や精神神経科へ行くのに抵抗がある人は、まず老年科や心療内科、神経内科などで一般的な診断を受け、専門的な診療に移行してもいいでしょう」(杉山さん)
認知症に関する相談&情報の窓口- 市町村の地域包括支援センター
- 市町村の高齢者社会福祉担当、介護保険担当窓口
- 市町村の保健所、保健センター
- 市町村の社会福祉協議会
- 公益社団法人 認知症の人と家族の会
https://www.alzheimer.or.jp/
相談窓口 0120-294-456(無料)(月~金曜10時~15時、祝日は休み) - 一般社団法人 日本認知症本人ワーキンググループ
http://www.jdwg.org/
Q3:もし本人が受診をためらったら?
A3:状況を演出するひと工夫でスムーズな受診を
早期受診が大切とはいえ、本人が受診をためらうことがよくあります。その場合、次のような方法を試してみましょう。「状況をうまく演出して受診にもっていくのがコツです」と杉山さんは話します。
- 家族が「私の健康診断に付き合ってくれない?」と誘ってみる。
- 理解のある医師に訪問診療してもらう。
- 病院自体が嫌な人には「保健所に健康診断に行きましょう」と誘ってみる。
- 信頼を寄せているかかりつけ医に「知り合いのよい先生を紹介しましょう」と専門医の受診をすすめてもらう。
次回は、家族が認知症と診断された場合に利用できるサービスや、介護のお金のこと、さらに認知症の家族との接し方のコツについてです。
取材・文=五十嵐香奈(ハルメク編集部)
※この記事は雑誌「ハルメク」2022年4号を再編集し、掲載しています。
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