『伊藤家の晩酌』~第二十夜2本目/透明感の中にうまみ弾ける「白岳仙 純米吟醸 荒走」~
Hanako.tokyo / 2021年1月17日 17時50分
弱冠23歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入! 酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは? 第二十夜の2本目は、新酒の、さらに一番最初の“あらばしり”というフレッシュな1本。
(photo:Tetsuya Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita)
第二十夜2本目は、とれたてピチピチな微発泡が刺激的な「白岳仙 純米吟醸 荒走」。
福井県福井市に位置する安本酒造を代表する「白岳仙」。地元・福井産の五百万石100%の純米吟醸の新酒の“荒走(あらばしり)”は、輝く銀文字が美しい。
「白岳仙 純米吟醸 荒走」720ml 1870円(税込・ひいな購入時価格)/安本酒造有限会社
娘・ひいな(以下、ひいな)「2本目は『白岳仙』。五百万石っていうお米を使っている純米吟醸のあらばしりです!」
父・徹也(以下、テツヤ)「あらばしりか! 新酒であらばしりってことはさ、先っちょの先ってことだよな?」
ひいな「そうそう。『白岳仙』を選んだ理由はね、うまみと透明感が共存してるお酒だからなの」
テツヤ「伊藤家で、よく飲んでるよね?」
ひいな「そうそう。よく飲んでる」
テツヤ「福井県のお酒だったのか。日本海だねぇ、越前ガニだねぇ」
ひいな「お! いいこと言った。カニのなかの王様といわれる越前ガニの解禁日が11月6日なんだって。その日に合わせて出した新酒がこれなの」
テツヤ「福井の酒はカニに合わせるんだな」
ひいな「じゃ、開けるね」
(ポンッ!)
テツヤ「いい音したねぇ。あら走ってるねぇ」
ひいな「今回は新酒すべて、同じグラスで飲み比べたら違いがわかるんじゃないかな、ということで、こちらもワイングラスでいただきます!」
こちらの新酒もワイングラスでいただきます。
父もカッコ良く注いでみたいのですが……(笑)
2本目、いただきます!
ひいな&テツヤ「じゃ、いただきます!」
ひいな「どう? なんか色ついてる感じしない?」
テツヤ「あらばしりだから? 1本目と違うね。すっきりしてるけど、コクがあるというか」
ひいな「香りもあるね」
テツヤ「表現が難しいんだけど……丸い感じ?」
ひいな「あらばしりにありがちな、雑味をあんまり感じないよね」
テツヤ「カニに合わせてるからなのかな」
ひいな「あぁ、そうかも! カニってうまみが強いから、それに合わせてるんだね」
テツヤ「カニが主役だから、カニのうまみと香りを殺さないように、丸くしてるんだろうね」
ひいな「うんうん、そうだね」
テツヤ「あぁ、これは福井に行って、カニ食べながら飲みたい1本だねぇ」
「白岳仙 純米吟醸 荒走」に合わせるのは、スライスチーズを使った「チーズせんべい」
スライスチーズを焼いた、チーズせんべいのようなおつまみ。
ひいな「おつまみ持ってくるね!」
テツヤ「あら、おしゃれ。何これ?」
ひいな「ツレヅレハナコさんの料理本に載っていたおつまみをマネして作ってみました」
テツヤ「この四角いかたちは……ワンタン?」
ひいな「スライスチーズを焼いた、チーズせんべいみたいな? チーズ先で、お酒で流す感じで」
テツヤ「いいねぇ。うわ、香ばしさがたまんないね! うんまい! もうさ、お正月気分も抜けたから、洋風なもの食べたくなるよね。ピザとかさ、カレーとかさ」
ひいな「これおいしいでしょ? いくらでも食べてられる気がする(笑)。この香ばしい感じと脂っぽい濃厚さをスッキリ流してくれるから、チーズが合うんじゃないかなと思ったの」
テツヤ「トッピングは黒ゴマと桜エビか。焼いたチーズ、いいね」
ひいな「でもね、実はこっちもおいしくて」
テツヤ「ポケットからチーズが出てきた(笑)!」
ひいな「温めておきました(笑)」
みんな大好き『Kiri』のクリームチーズ。
テツヤ「Kiriのクリームチーズって、ほんとにうまいよなぁ」
ひいな「スライスチーズを焼くのもめんどうくさいと思ったら、Kiriで十分です!」
Kiriのクリームチーズを食べてから、お酒を流し込みます。
クリームチーズと「白岳仙」の組み合わせ、抜群です!
テツヤ「こっちのほうが合うよ(笑)!」
ひいな「Kiriがね、特別に合うんだよ〜。Kiriの口どけと日本酒でそれを流す感じがね、すっごく合うの」
テツヤ「Kiriのクリーミィさが合うんだね」
ひいな「この日本酒、油分と合う気がするんだよね。あと酸味も!」
テツヤ「このスライスチーズにKiriをのせたダブルチーズが最高かも」
ひいな「お? やってみよ!」
テツヤ「カニだとさっぱりなイメージだけど、チーズやクリームみたいなのとも合うんだね。実はしっかりしてるお酒なのかな」
ひいな「このお酒に合わせたい食材がね、他にもあって。もうひとつはクミンだったの」
テツヤ「クミン? スパイスの?」
ひいな「そう。クミンくらい香りがあってクセがあるものでも、受け止められるんじゃないかなと思って」
テツヤ「それくらい主張があるものでも負けないお酒なんだね」
天才・蔵元杜氏の名前からとった「白岳仙」。その名にふさわしい一本。
テツヤ「お正月っぽいラベルでいいね。新酒感あるなぁ」
ひいな「新年にぴったりだよね」
テツヤ「クリスマスにも合いそう」
ひいな「ちなみに、『白岳仙』という名前の由来は、白山水脈の伏流水を使っていることから『白』、山のように人が集まってほしいっていう意味から『仙』。真ん中の『岳』っていう字は、天才杜氏と呼ばれている安本岳史さんの名前からとって、『白岳仙』なんだって」
テツヤ「なるほど」
ひいな「大量生産をせず、少量生産が蔵の方針みたい」
テツヤ「安本さんが杜氏で、安本酒造ってことは、蔵元杜氏ってこと? それで天才って言われてるんだ。すごいね」
ひいな「いろいろなところに出向いて日本酒の普及活動もやっている方で」
テツヤ「若い方?」
ひいな「うん、40代だと思う」
テツヤ「杜氏って、蔵元杜氏の他にあるんだっけ?」
Hanako編集部 オグラ「杜氏ってもともとは蔵元にシーズンごとに雇われる形が一般的なんですよね。酒蔵野球チームとすると、杜氏は監督で、蔵元は球団社長、球団オーナーという関係です。だから蔵元杜氏というのはナベツネがベンチにいるみたいな感じ」(ライター注:父・テツヤにもわかるように球団にたとえています)
テツヤ「なるほど。ナベツネだと応援したくないけど(笑)、そりゃ思いが詰まった酒ってことだ。すごいねぇ」
ひいな「食べながら飲んで、飲みながら食事もできる日本酒を醸したいって蔵は言っていて。その通りのお酒だなって感じたな」
テツヤ「同じ新酒でもいろいろあるんだなぁ。これが2本目っていうのは納得。いい打順だよ」
ひいな「ね。2本目にぴったり」
テツヤ「おいしいよ! でも、やっぱり、チーズじゃなくて、カニと合わせてみたいな。カニの刺身とかさ。くぅ〜!」
ひいな「今年の目標! 福井にカニを食べに行こう!」
テツヤ「あれ? なんだか、酒がなくなるのが早いなぁ(笑)。今年も荒走っていこう!」
次回:1月24日(日)更新予定
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