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【特別篇】出張!『伊藤家の晩酌』 in 尾道 vol.2/今田酒造本店の「富久長 純米吟醸」飲み比べ~

Hanako.tokyo / 2021年2月21日 18時20分

【特別篇】出張!『伊藤家の晩酌』 in 尾道 vol.2/今田酒造本店の「富久長 純米吟醸」飲み比べ~

弱冠23歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入! 酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは? 通常回をちょっとお休みして今回から全4回の特別篇をお届け! なんと伊藤家を飛び出し、父・テツヤゆかりの地、広島県尾道市で特別ゲストをお迎えしてイベントを開催した模様をレポートします。第2回は、山田錦で醸された純米吟醸を呈すテイスティング。
(photo:Tetsuya Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita)

育てるのが難しいといわれる、幻の酒米「八反草」で酒造りを続ける理由とは?

広島県東広島市安芸津町にある今田酒造本店「富久長」から、酒米違いの純米吟醸2本。

フルーティな酸味でやわらかい旨味の「純米吟醸 八反草」(左)と力強い味わいで一番人気の「純米醸 山田錦」(右)各720ml 1500円(税別・ひいな購入時価格)/株式会社今田酒造本店



ひいな「次は、山田錦を飲んでみていただいて。八反草と比べると印象はいかがですか?」


テツヤ「ボディがある感じというか」


ひいな「うん、力強い感じ、線が太い感じしませんか?」


久美子「うんうん。わかる」


ひいな「土感があるような気がするんです。参加してくださっている方へも聞いてみたいな。お味、どうですか?」

参加者の方も一緒に飲み比べに参加していただきました!



参加者「山田錦のほうが少しクセがある気がします」


久美子「日本酒らしさがあるのは、山田錦のほうですよね」


ひいな「そうですね。確かに」


岡本「山田錦は、よく聞くお米だよね?」


ひいな「そうなんです。山田錦は酒造好適米として有名なんですけど、実はこの八反草は酒造好適米ではなくて」


久美子「え? そうなんですか」


ひいな「酒造好適米は、お米の粒が大きいほうが良くて、中心に心白(しんぱく)という芯のようなものがあるんですけど、その心白の出現率が高ければ高いほど良いとされているんです。あと、お米を育てる時に、背が高いと倒れてしまうから、背がある程度低くてしっかりしているかどうかも大事なんですけど、八反草は粒も小さいし、心白も出てこないし、背も高くて栽培が難しくて、酒造りにぜんぜん適していないお米なんです」


岡本「日本のナチュールワインでも、デラウェアっていう品種を使うんだけど」


ひいな「デラウェア?」


岡本「そう、小さい粒で、よく家庭で食べられる」


ひいな「あぁ、あの小さいやつ」



岡本「デラウェアのワインってあるんだけど、ほぼ日本でしか造られてないんじゃないかな。海外でデラウェアのワインってあんまり聞いたことがなくて」


ひいな「へぇ。デラウェアって、“酒造好適ぶどう”じゃないんですね」


岡本「そうそう。でも、今ではデラウェアもワインにできるということで、新たなニーズを見い出した感じですね」


ひいな「日本のナチュールワインだと、デラウェアが多いんですか?」


岡本「デラウェアやベリーA、甲州みたいに、日本にもともとある品種は比較的栽培が容易であったり、ノウハウがあったりするから、日本の風土に合ったワインができやすいというのはありますよね」


ひいな「なるほど」


テツヤ「わかりやすいねぇ。お店でこういうこと聞きたかったな(笑)」


久美子「一度もこんなこと話したことないですよね(笑)」


岡本「あはは(笑)」


ひいな「八反草は、明治8年まで作られていたんだけど、背が高すぎるために倒れやすくて、肥料とか水の管理が難しいから、一度廃止されてたんですって。でも、広島の酒米のルーツでもあるということで復活させたんです」


岡本「広島以外でも八反草って作られているんですか?」


ひいな「八反錦、八反一号などの違う系統ならあるんですけど、八反草は、『富久長』が農家さんに作ってもらっているだけですね。美穂さん曰く、八反草の名前だけが資料に残っていて、幻になった八反草はどんなお米だったのか、そのお酒が飲んでみたいと思って造り始めたらしいんです」


岡本「なるほど」


ひいな「だから、八反草のお酒は『富久長』だけで飲めるんですよ」

八反草と山田錦、飲み比べると、味の違いは歴然!



久美子「この2本は、お米が違うだけで醸造方法も同じなんですよね?」


ひいな「はい、同じですね」


岡本「このフルーティさは、八反草の特徴なのかな」


ひいな「そうですね。美穂さんから聞いた言葉ですごく納得したのがあって。八反草は自分で生きていくお米で、山田錦は体力があるって。確かに、味を飲み比べると、八反草は独創性のある味わいで、力強さのある山田錦というか、山田錦は体力があるから、味も太く出るのかなと思ったんだよね。八反草は自分で生きていく力はあるけど、背が高い分、体力はないというか」


テツヤ「自分で生きていくけど、やっぱり、人の手を借りなきゃいけないっていうことだな」


ひいな「まあね、誰でも生きていくためには、人の手を借りて生きてるわけだからさ」


テツヤ「そりゃそうだ」


岡本「コロナ禍でもね、人のつきあいは、やっぱり必要だからね。いくらディスタンスしてもね」


ひいな「うんうん、大事ですよね」


テツヤ「うまくまとめてくれましたね(笑)」

広島県・安芸津町は、吟醸酒発祥の地として“吟醸酒の里”とも呼ばれる。

蔵で見せていただいた酒米。精米技術によってお酒の味も変わる。



ひいな「『富久長』はお米の磨き方にもこだわっていて。東広島市にある『サタケ』っていう精米機を造っている会社があるんですけど、米粒を両サイドから削って平たい形に仕上げる『扁平精米』、お米の形はそのままで小さく削る『原形精米』があって、従来とは違う精米歩合を変えられる精米機を発明したそうなんです」


久美子「それはすごいね。それが広島県の会社なんだ」


ひいな「米の磨き方で、お酒の味ってすごく変わるんですけど、この機械によって、日本酒の可能性が広がる感じ」


テツヤ「なるほど。そこまで味が変わるんだ」


ひいな「今でこそ吟醸酒って、純米吟醸とか吟醸とかいろいろあるんですけど、明治時代、今田酒造本店のすぐ近くに住んでいた醸造家の三浦仙三郎さんという方が『軟水醸造法』という製法を生み出したそうなんです。それと『サタケ』の精米技術が合わさったことで、吟醸酒が生まれたといわれています」



テツヤ「えー!?」


ひいな「実は広島県・安芸津は、“吟醸酒の里”といわれていて」


久美子「つまり、吟醸酒は安芸津が発祥ということ?」


ひいな「そうなんです」


岡本「軟水醸造法って何なんだろう?」


ひいな「酵母って、ミネラルが多い方が活性化しやすいんです。だから、硬水の、たとえば兵庫県の灘が有名なんですけど、日本酒には硬水のほうが適していて。三浦仙三郎さんが使っていた水は軟水だったから、軟水でもうまく仕込めるようにと考え出されたのが軟水醸造法なんです」


岡本「へぇ。まさにこの土地だから生まれたお酒なんだね」


テツヤ「酒造りにおける悪条件を工夫して克服したっていうことだよね」


岡本「一昨年、北海道でうちのポップアップをやらせてもらったことがあって。うちのために京都の〈オオヤコーヒー焙煎所〉でコーヒー豆をブレンドしてもらっているんだけど、北海道に持って行って淹れてみたら、ぜんぜん味が出なくて」


テツヤ「お水が違うから?」


岡本「そう。お水でこんなにも違うんだと驚いたよね」


テツヤ「水で味が決まるんだね」


ひいな「広島の中でも、地域によっていろいろなお水があって、蔵によっても違うらしいんです。ちなみに、安芸津はじゃがいもが名産で赤土で育つらしいんだけど、赤土はミネラルが豊富らしくて、それが牡蠣にいい影響を与えているといわれているみたい」


テツヤ「なるほど、山が海にいい影響を与えてるんだね」



ひいな「岡本さんたちは、八反草と山田錦、どちらのお酒がお好きですか?」


岡本「食事に合わせると考えると、山田錦かな」


久美子「うん、そうだね。でも、私の今までの『富久長』のイメージは、この八反草のほうだな。やわらかい感じというか」


岡本「この八反草みたいなフルーティな味わいのお酒は、ワインにもよくあるんだけど、このお酒をどういう料理と合わせるのか、すごく興味があるな」

第3回へ続く

ひいなインスタグラムでも日本酒情報を発信中



【告知】
2月5日発売の雑誌『dancyu』の「日本酒 2021」特集に、テイスターとして参加させていただきました!この雑誌の毎年恒例の日本酒特集に出られることは、とてもうれしいことです!ぜひお手に取ってご覧ください。

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