東北で活躍し、東北を愛する人たちに会いに行く。/東北ツリーハウス観光協会代表・斉藤道有さん、イラストレーター・斉藤由実さん
Hanako.tokyo / 2021年3月21日 9時30分
東日本大震災以前から東北に住んでいた人、震災後に移住した人。復興に対する思いやアプローチのしかたはいろいろ。東北で活躍し、そして東北を愛する人たちに会いに行きました。今回は、気仙沼を拠点に活動する東北ツリーハウス観光協会代表・斉藤道有さんとイラストレーター・斉藤由実さんに会いに行きました。
童心に帰るツリーハウスは壮大な思い出作りの場。
子どもの頃に憧れた木の上の秘密基地、ツリーハウスを東北に100造る。“ほぼ日”の糸井重里さんを発起人とするプロジェクトが、気仙沼を拠点に楽しく、気長に進んでいる。
左・斉藤道有さん、右・斉藤由実さん
東北ツリーハウス観光協会が設立されたのは、2013年秋のこと。「震災から2年半ほど経って、生活に最低限必要とされるものだけでなく、純粋に好奇心をくすぐられるようなことも欲しい時期になっていました。そんななか糸井さんと話し合っていて出てきたのが、ツリーハウスを造るというアイデアでした」美術家として作品制作や地域活動をしてきた、気仙沼出身の斉藤道有さん。2011年秋にほぼ日の気仙沼支社ができ(※現在は活動終了)、現地でのさまざまな企画を手伝っていた経緯から、東北ツリーハウス観光協会の代表を務めることに。
「役所の方と場所の相談をしたり、詳しい人に教えてもらいながら、数名のチームで造り始めました。カチッとしすぎないといったら変ですけど、難しく考えず、遊びに収まる範囲でやっていこうっていう感じで」子どもの工作の延長のように、大人たちの持てる技術と知恵を出し合うツリーハウス。これまで14棟を制作し、うち5棟が気仙沼市内に。最近は東北を飛び出して“出張制作”も行っているのだが、面白いのは同じ形がひとつとしてないこと。「一見自由だけど、木の形や地面からの距離など制約が多いので、必然的に異なるデザインになるのも、ルーティンが苦手な僕には合っています。ツリーハウスを巡って旅をしながらいろんな人と出会い、喜びを分かち合えるのが楽しいですね」
妻の由実さんは震災後に東京から移住して、気仙沼のほぼ日のスタッフに。気仙沼での日常を「沼のハナヨメ。」というエッセイ漫画で発信しながら、ツリーハウスのプロジェクトもサポートしてきた。「ツリーハウス造りを始めた頃は、まだ瓦が礫れきが一部残っていて、こんなことをやっていていいのかな、という思いもありました。だけど防潮堤の建設をどうするべきか難しい顔で議論をしている人たちが、ツリーハウスの話題でふっと笑顔になるのを見て、息抜きにもなっていたのかなと今では思います」(由実さん)「一般の人も自由に参加できるツリーハウス造りは、壮大な思い出作りの場。時間が経てばメンテナンスも必要なので、完成して終わりではないのもいいところ」(道有さん)地域のランドマークになり、イベント会場に使われたり、バス停を兼ねていたりなど、さまざまな形で土地になじんでいるツリーハウス。「100個造ることだけが目標ならば、お金を集めて一気にやればいいけれど、名前に“観光”と付いているようにこの会の目的はそうではない。みんなで造って楽しむ過程が一番大事なんですよね」(由実さん)
土地の特性に合わせて、デザインや構造も自由自在。
鮪立(しびたち)湾を望む丘の上にあるツリーハウス「つなまる」。右の写真の小窓からの景色がこちら。防潮堤が隠れ、パノラマのフレームに海と山と空が広がるように設計。
その場にある廃材を工夫して使うことで生まれる個性。
手すりの部分にあしらっているのは、流木。天井のステンドグラスのようなカラフルな三角形は、防水加工を施した大漁旗。海の近くだからこそある廃材を利用している。
Profile…斉藤道有さん、斉藤由実さん
道有さんは美術家として活動。光の慰霊碑を立ち上げる「3月11日からのヒカリ」も主宰。腕には、新(あらた)くん3歳が。由実さんは宮城県松島町出身。ウェブ「気仙沼さ来てけらいん」等でサユミ名義で執筆。
(Hanako1194号掲載/photo : Norio Kidera text : Ikuko Hyodo)
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