岩手名物のホロホロ鳥、鮑などを使った開発中の「いわてローカルガストロノミ―BOX」を試食。
Hanako.tokyo / 2021年9月16日 15時0分
岩手県八幡平市の食のブランド化を図る一環として、岩手のホロホロ鳥、鮑などの食材を使った「いわてガストロノミーBOX」が2021年12月より販売開始予定。この「いわてガストロノミーBOX」完成に先立って食の専門家を招いた試食&意見交換会が新たな食の情報発信拠点、新大久保〈K,D,C,,,〉にて行われたのでその様子をご紹介します。
自然に恵まれた岩手は、ローカルガストロノミーとしての魅力に溢れた食の宝庫!
岩手県は、日本で最も古い地層の一つである北上山地を南北に持ち、その山地は太平洋に面してリアス式海岸へと続く地。山深く他所との関わりが取りづらいためか、独自の文化が色濃く残る場所でもあります。古い地層が残っているため、同じ野菜でも独特の味わいが感じられると評価され、食の可能性を大いに秘めています。
また、北上山地から豊かな栄養が流れ育まれる海は、親潮と黒潮がぶつかっていることからプランクトンも豊富で、世界三大漁場にも数えられます。リアス式海岸は大きな内湾を形成しているため、その豊富なプランクトンと穏やかな海を生かした、牡蠣やワカメ、ホヤ、帆立などの養殖も盛んです。さらに郷土料理には、胡桃や蕎麦、小麦を使ったものなど、平地が少なく水田が少ないからこその料理も多く、ローカルガストロノミー(地方の美食)としての魅力に溢れています。
鹿澤シェフ(オンラインによる参加)と、食の専門家6名。
そんな岩手・八幡平の食のブランド化を図る一環として進められているのが、岩手県産の食材を使って地元シェフが作り上げる「いわてガストロノミーBOX」。こちらは岩手県産の食材を使ったガストロノミーメニューを自宅で簡単に作れる一流シェフ監修の料理セットで、一般発売は12月より〈JRE MALL〉にて予定されてるほか、「いわてガストロノミーツアー」と題した食の体験ツアーでの提供も予定されています。この「いわてガストロノミーBOX」完成に先立って今回行われたのが、食の専門家を招いた試食&意見交換会。シェフや料理家、ソムリエまで総勢6名が登壇されました。
「いわてガストロノミーBOX」を監修したのは岩手県盛岡市出身で、2010年に〈トラットリアダコッタ〉を開業したのちに、2012年に岩手県盛岡で〈アルフォルノ〉を開店し、現在は〈リストランテシカザワ〉でシェフを務める鹿澤靖幸(しかざわ やすゆき)氏。岩手の豊かな食材を用い、「岩手の食が旅の目的地になるように」をコンセプトに、郷土料理のエッセンスを取り入れた、ローカルガストロノミーとイノベーティブが共存した料理を提供しています。現在は、岩手県食のプロフェッショナルチームアドバイザーや三陸国際ガストロノミー会議実行委員なども務めています。
岩手県産食材を使った「いわてガストロノミーBOX」の中から2品を試食。
「ジオラマ」。
岩手県は、四国4県と同じくらいの面積があり、ほぼ中央にある城下町・盛岡市まで、沿岸から塩を運ぶために「塩の道」が作られていました。今回の「いわてガストロノミーBOX」では、その道からインスピレーションを得て、広い岩手県をイメージできるように食材の組み合わせにこだわり、料理に仕上げています。完成に先立って行われた試食&意見交換会では、「いわてガストロノミーBOX」の中から2品が登場しました。
三陸の景色を三陸の食材で表現した「ジオラマ」は、「吉浜鮑」で知られているように、岩手特産の鮑を使用した一品。岩手県産の昆布と日本酒でブレゼ(少量の水分でじっくり蒸し煮にするフランス料理の調理法)した鮑を、カリフラワーのムースと合わせ、鮑の肝のパウダー、新鮮な雲丹を焼いた贅沢な焼き雲丹、八幡平マッシュルームのデュクセル(キノコにタマネギ又はエシャロット、タイムやパセリ等のハーブ、黒胡椒を細かく刻んで混ぜ、バターでソテーしてペースト状に煮詰めたもの)、イクラなどをトッピングしています。今回は大船渡市の養殖鮑と、身入り、色合いの良さ、濃厚な甘みが特長の紫雲丹、岩手の雄大な自然が育む湧き水と馬産地である岩手らしい馬厩肥で栽培された八幡平マッシュルームを使用。スプーンを使っていただきます。
〈陸前高田市神田葡萄園〉の「アルバリーニョ2020(白)」。
こちらの料理に合わせていただいたアルコールは、〈陸前高田市神田葡萄園〉の「アルバリーニョ2020(白)」。〈陸前高田市神田葡萄園〉は、リアス式海岸の由来とも言えるスペイン・ガリシア地方の土着品種であるアルバリーニョをフラッグシップとして製造している海からも近いワイナリーで、今回ペアリングした「アルバリーニョ2020(白)」は普段は牡蠣と合わせるなど、日本の海産物ともよく合うワインだと鹿澤シェフが説明してくれました。
試食後は、食の専門家からの感想やフィードバックタイム。ソムリエの成澤亨太氏からは「アルコールとのペアリングが難しい雲丹を使っているので、現状だと日本酒の方が合うかもしれない。もしワインとペアリングさせたいなら、料理にヴィネグレットや果物を使ったり、カブなどみずみずしい根菜を合わせるなど酸味や清涼感をプラスした方がいいのでは」というような具体的な提案も聞かれました。
「塩の道」。
2品目は、食鳥の女王と呼ばれるホロホロ鳥を使った「塩の道」という肉料理。このホロホロ鳥は、岩手県花巻市にある日本で唯一のホロホロ鳥専用農家である〈石黒農場〉のもの。餌には、米と岩手の特産である雑穀を与えているため、肉は甘さを感じるとともに雑味のない繊細な味わいと強いうま味が特長です。このホロホロ鳥の内臓や胸肉、手羽など、切り方を変えてファルス(ピーマンの肉詰めのような肉類や魚類などを野菜に詰めたフランス料理の調理法)にしたのち、ホロホロ鳥の皮で巻いてゆっくりと火入れしています。普通の鶏肉の場合は、スパイスやハーブなどを使うことが多いですが、ホロホロ鳥本来の味を活かすため刻んだりペーストにして、皮で巻き込むなど工夫を凝らし、シンプルに塩だけで調理しています。ソースとして添えているのが、三陸の名産の海藻・マツモ。マツモは食感が良く、香りとうま味が強いのが特徴で、地元ではしゃぶしゃぶして食べるのが一般的。このマツモを干してから焼き、ホロホロ鳥のガラを使ったブイヨンをまぜ、少しだけスパイスをきかせています。
〈花巻市高橋葡萄園〉の「ツヴァイゲルト2020(赤)」。
合わせるアルコールは、〈石黒農場〉と同じく花巻にあるワイナリー〈花巻市高橋葡萄園〉の「ツヴァイゲルト2020(赤)」。岩手のワイナリーはオーストリアの葡萄品種を得意とするという背景や、今回はレバーや内臓も入った料理のため、少し甘さがチョコレートっぽい仕上がりの「ツヴァイゲルト2020(赤)」を合わせたそうです。
こちらも試食後に、食の専門家からシェフに対して感想やフィードバックが行われました。料理家の武田尚子氏からは「海苔のソースだけでなく、乾燥したものや焼いたものを付け合わせにしたら味わいが広がるのではないか」、ソムリエの成澤氏からは「ホロホロ鳥はうま味が強く臭みがなくとても美味しいので、ソースにスパイスをきかせるなどしてインパクトを強くした方が赤ワインとも合うのではないか」と言った意見が聞かれました。
今回行われた意見を反映しながら、最終的な調整を行う「いわてガストロノミーBOX」。今回紹介した2品以外にも数品プラスされ、2〜3人前の分量で1万円程度で販売される予定だということです。
イベントを通し鹿澤シェフは「いわてガストロノミーBOXを通じて、岩手県以外の人だけでなく、県民の人にも岩手の魅力を再認識してもらいたい」とコメント。今後予定されている「いわてガストロノミーツアー」では、生産者に話を聞きに行く行程も盛り込まれているということで、食を入り口としたローカルツーリズムの気運がより高まっていきそうです。
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