お台場〈日本科学未来館〉で『第24回文化庁メディア芸術祭受賞作品展』10月3日まで開催。
Hanako.tokyo / 2021年9月26日 7時0分
『第24回文化庁メディア芸術祭受賞作品展』が10月3日までお台場の〈日本科学未来館〉で開催中です。アート、エンターテインメント、アニメーション、マンガの4部門の受賞作が展示されています。有名な漫画やアニメの作品も含まれ、貴重な原画や制作過程の資料なども見ることができますよ。
多様な作品が大賞を受賞してきた『文化庁メディア芸術祭』。
会場は球体ディスプレイ「ジオ・コスモス」も展示されている〈日本科学未来館〉。
1997年に第1回が開かれた文化庁メディア芸術祭。毎年アート、エンターテインメント、アニメーション、マンガの4つの部門で世界中からたくさんの応募があり、大賞や優秀賞などが選出されます。
これまで1997年のアニメ部門の大賞が『もののけ姫』、2017年のエンターテイメント部門に映画『シン・ゴジラ』、2013年のマンガ部門では荒木飛呂彦さんの『ジョジョリオン』が大賞を受賞、2014年のアート部門では坂本龍一さんと真鍋大度さんがコラボレーションした作品が優秀賞を受賞するなどしています。
今回の『第24回文化庁メディア芸術祭』には、世界103の国と地域から3,693もの応募作品が集まりました。作品展では多様な表現形態を含む受賞作品が一堂に展示され、見どころが満載です。
アート部門の大賞は小泉明郎さんの『縛られたプロメテウス』。
小泉 明郎さんの『縛られたプロメテウス』の一場面。
アート部門で大賞を受賞したのは小泉 明郎さんの『縛られたプロメテウス』という作品です。ギリシャ悲劇『縛られたプロメテウス』を出発点に、文明社会においてさまざまに変奏されてきたテクノロジーと人間社会との緊張関係を、VR/AR技術を駆使した体験型演劇作品として展開しています。
作品には難病のALS当事者の武藤将胤(むとうまさたね)さんが登場。VR/ARを鑑賞している人が、難病当事者の視点を体感する様子が映し出されます。この作品は〈パナソニックセンター東京〉での上演会も予定されています。
Simon WECKERTさんの『Google Maps Hacks』。
アート部門でソーシャル・インパクト賞を受賞したのはSimon WECKERTさんの『Google Maps Hacks』。この作品は、そのタイトルの通り私たちが日頃信頼し利用しているGoogleマップをハックするというもの。
99個の中古スマートフォンを手押し車に載せて運ぶことで、Googleマップ側が交通渋滞があると認識。するとGoogleマップで、道路の色が緑(混雑なし)から赤(混雑)に変わり、その結果を見た車は渋滞を避けようと別のルートを通るなど実世界にも影響を与えるという作品です。
日頃、便利に使っている情報はどのように作られているかを示して、裏をかくような遊び心のある作品です。Googleはこのようなクリエイティブな活用方法を歓迎するというコメントを出しているそう。
エンターテインメント部門の大賞は岩井澤健治さんの『音楽』。「OriHime」にも会える!
岩井澤健治さんの長編アニメーション『音楽』の一場面。
実写からアニメを作るロトスコープという手法の過程も展示されています。
エンターテインメント部門で大賞を受賞したのは、岩井澤健治さんの長編アニメーション『音楽』です。⼤橋裕之さんのマンガ『音楽と漫画』が原作で、楽器を触ったこともない不良学生たちが、思いつきでバンドを組むことからストーリーが始まります。
岩井澤さんはなんと約7年半もの時間を費やして手描き作画にこだわり、実写映像を基に作画を行った野外フェスのシーンでは実際にステージを組んで観客を動員。
主人公に元ゆらゆら帝国の坂本慎太郎さん、駒井蓮さんや前野朋哉さんが脇を固めるなど豪華な声優陣の演技も見どころという作品です。岩井澤さんによる手書きの原画も展示されています。
会場にいた「OriHime」。パイロットは神奈川県海老名市にお住まいの方でした。
エンターテインメント部門でソーシャル・インパクト賞を受賞したのは『分⾝ロボットカフェ DAWN ver.β』。分⾝ロボット「OriHime」を寝たきりや移動が不自由な人がパイロットになって操作し、接客を行うカフェの試みです。会場にも「OriHime」がいてパイロットさんとお話もできます。会場に足を運んだら、ぜひお話してみましょう。
アニメーション部門の大賞は湯浅政明さんの『映像研には⼿を出すな!』。
湯浅政明さんの『映像研には⼿を出すな!』の展示ブース。
貴重な資料も展示されています。
アニメーション部門の大賞は湯浅政明さんの『映像研には⼿を出すな!』が受賞しました。熱狂的にアニメが好きな高校1年生、浅草みどりが仲間と3人で映像研究同好会(映像研)を設立し、「最強の世界」をつくるための奮闘を始めるというストーリー。漫画が原作の作品ですが、アニメ制作の裏側や演出論などアニメのおもしろさを手書きアニメーションの迫力ある映像で表現しているとして評価されました。
アニメーション部門で新人賞を受賞したHéloïse FERLAYさんの『À la mer poussière』の一場面。
アニメーション部門 新人賞は3作品が受賞していますが、そのうちHéloïse FERLAYさんの『À la mer poussière』はフェルト製のパペットを使ったストップモーションアニメーション。姉と弟、母という親子のスリリングな物語です。制作過程を交えた動画を見ることができます。
『3月のライオン』や『ゴールデンカムイ』の原画もならぶマンガ部門。
野⽥サトルさんの『ゴールデンカムイ』はマンガ部門でソーシャル・インパクト賞を受賞。
マンガ部門の大賞は⽻海野チカさんの『3月のライオン』、ソーシャル・インパクト賞には野⽥サトルさんの『ゴールデンカムイ』と誰もが知る有名な作品が並びます。
⼩⽇向まるこさん、桜井美奈さん原作による『塀の中の美容室』のブース。
カレー沢薫さんの『ひとりでしにたい』のブース。
坂本眞⼀さんの『イノサン Rouge ルージュ』の展示。
⼭本美希さんの『かしこくて勇気ある⼦ども』も。
優秀賞は4作品。坂本眞⼀さんの『イノサン Rouge ルージュ』、⼭本美希さんの『かしこくて勇気ある⼦ども』、カレー沢薫さんの『ひとりでしにたい』、⼩⽇向まるこさん、桜井美奈さん原作による『塀の中の美容室』が受賞しました。原画に加えて、制作過程が垣間見えるような資料も展示されていて、マンガファン以外でもワクワク楽しめる内容です。
メインの展示は〈日本科学未来館〉の1階ですが、7階にも作品が展示されています。特に体験できるVR作品が充実。またマンガ部門の受賞作品を自由に読むこともできるスペースも用意されています。
球体ディスプレイ「ジオ・コスモス」を使った作品にも注目。
フェスティバル・プラットフォーム賞のジオ・コスモスカテゴリーで受賞した秋山智哉さんの『ちぎる』。
フェスティバル・プラットフォーム賞のジオ・コスモスカテゴリーで受賞した秋山智哉さんの『ちぎる』です。ちぎり絵で展開するストップモーションアニメーションの作品です。
「ちぎる」という言葉には、細かく切り離す「千切る」と約束を結ぶ「契る」の相反する2つの意味があって、その言葉遊びとちぎり絵という表現の掛け合わせが魅力の作品です。見る人が温かみを感じられる作品に仕上がっていると贈賞理由に記載されています。
さまざまなメディア芸術に触れることができる『第24回文化庁メディア芸術祭受賞作品展』。最新のテクノロジーを使った作品と、さらに古くからある手法を掛け合わせた作品など興味深い作品が揃っています。コロナ禍だから生まれた作品も複数受賞していて、文化と芸術の今を感じることができそうです。
一部の映像作品は、〈池袋HUMAXシネマズ〉と〈CINEMA Chupki TABATA〉で予約制の上映会が開催されます。詳しくは公式サイトをチェックしてください。
『第24回文化庁メディア芸術祭受賞作品展』
東京都江東区青海2-3-6 日本科学未来館
2021年9月23日(木・祝)~10月3日(日)
10:00 ~17:00(最終入場16:30)
※ 火曜休館
入場無料・事前予約制
問い合わせ先 03-5459-4668
公式サイト
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