「ゼロカーボンアクション30」で暮らしやすさを損なわず、生活にエコな意識を持ってみませんか?
Hanako.tokyo / 2021年11月1日 9時30分
2050年までにカーボンニュートラルを実現すると表明した日本。その目標を達成するために、私たちが心がけるべき生活とは?環境省が推進する30項目のアクションについて話を聞きました。
左・ハナコラボSDGsレポーター・大場桃果(おおば・ももか)『私はまず食ロスや3Rから意識してみます!』/右・環境省 地球環境局地球温暖化対策課長・小笠原 靖(おがさわら・やすし)『私は自宅を省エネリフォームしたんですよ。』
大場桃果(以下、大場):これまでSDGsレポーターとしていろんな取材をする中で、ゼロカーボンが叫ばれている理由については理解ができたのですが、日本における危険性について明確にイメージすることができなくて……。このままだと、日本ではどんな問題が起こると予想されているのでしょうか?
小笠原靖(以下、小笠原):地球温暖化によって世界中でさまざまな異常気象が起こっていますが、日本でも、以前は何十年に一度だった大規模な風水害がたびたび起こるようになってきていますよね。例えば台風に関しては、海水面の温度が上がることでエネルギーや水分量が大きくなり、雨風の力が強くなってきているんです。そうすると今までは耐えられていた堤防が決壊してしまったりして、これまで以上に大きな被害を生むリスクが増えます。
大場:そういった危機的状況を避けるために、国としてはどんな目標を掲げているんですか?
小笠原:昨年、日本としても「2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする」という目標を表明しました。今年4月には「2030年46%削減」を表明し、現在はその実現のための計画づくりに取り組んでいるところです。
大場:そうなんですね。ただ、環境問題には難しい単語も多いので、専門知識のない方々にとっては、いきなり「カーボンニュートラル」といわれても、それが自分たちの暮らしとどう関係するのか、いまひとつピンとこないような気もしています。私自身も、カーボンニュートラルの実現のためどんな生活をしたらいいのか、イメージが湧かなくて……。
日々の選択が排出量に影響。だからこそ個人の行動が重要に。/日本の温室効果ガス排出量を消費ベースで計算すると、約6割が家計消費に起因。1人あたりの年間CO2排出量は7.6トン(2017年)で、一人一人のアクションが不可欠だとわかる。
小笠原:普段の暮らしとカーボンニュートラルのつながりはたしかに想像しにくいですよね。二酸化炭素の排出って、工場や発電所など企業の問題というイメージをお持ちの方も多いかもしれません。でも実は、日本の二酸化炭素排出量の約6割が、衣食住など家計消費に起因しているんです。
大場:えー!そんなに多いとは思いませんでした!
小笠原:私たちが普段購入している食品や服、家電などを作ったり廃棄したりする際に排出される二酸化炭素の量を含めてカウントすると、こうした計算になります。極端な話をすると、レジ袋を1枚使うかどうかでさえ排出量に関わってくるんです。大場なるほど!私たちの暮らしの些細な選択の積み重ねが、地球温暖化に大きく関係しているということですね。では、具体的にどんな行動を意識していったらいいのでしょうか?
小笠原:みなさんにぜひ取り入れてもらいたい脱炭素行動とそのメリットをまとめたのが、「ゼロカーボンアクション30」です。衣食住や移動、買い物など、なるべく誰にでもできそうなことをリストアップしてみました。
大場:「宅配サービスをできるだけ一回で受け取る」や「食事を食べ残さない」「今持っている服を長く大切に着る」など、小さなアクションがたくさんあるんですね。これだったら苦にならないし、すぐにできそうな気がします。
小笠原:電力を使う時間を無理やり減らしてほしいというわけではなく、省エネ家電を選んだり、家の断熱性を高めたり、再エネ電気を選んだりと、しっかり快適性を保ちながらもカーボンニュートラルな暮らしに切り替えてもらえたらと思っているんです。あまりにシビアなアクションだと、持続可能ではなくなってしまいますから。
大場:そう言っていただけて少し気が楽になると同時に、自分たちの些細な心がけ次第で状況が変わるという責任も感じました。まずはできるところから、すぐに取り入れてみようと思います!
Zero Carbon Action 30
1.エネルギーを節約・転換しよう!
CO2を排出することなく、さらに繰り返し利用できる、太陽光・風力・地熱・バイオマスなどの「再生可能エネルギー」に注目。ウェブサイトなどから簡単に切り替えることができ、地域によっては補助金や税制優遇が受けられる場合も。節電や節水、省エネ家電の導入といった気軽なアクションにも効果が。
【1】再エネ電気への切り替え
【2】 クールビズ・ウォームビズ
【3】 節電
【4】 節水
【5】省エネ家電の導入
【6】宅配サービスをできるだけ一回で受け取る
【7】消費エネルギーの見える化
2.太陽光パネル付き・省エネ住宅に住もう!
壁や窓などを断熱リフォームするだけでも、室内環境がより快適になり、大幅な省エネを実現できる。太陽光パネルを設置すれば、自宅に再生可能エネルギーの電源を持ち、災害時に停電を避けられるメリットも。また、住宅購入・新築の際はZEH(Net Zero Energy House)を検討してみよう。
【8】太陽光パネルの設置
【9】 ZEH(ゼッチ)
【10】省エネリフォーム
【11】蓄電池(車載の蓄電池)・蓄エネ給湯機の導入・設置
【12】暮らしに木を取り入れる
【13】分譲も賃貸も省エネ物件を選択
【14】働き方の工夫
3.CO2の少ない交通手段を選ぼう!
徒歩や自転車、公共交通機関を利用することで、移動時に排出するCO2の量を減らすことに繋がる。交通渋滞を気にする必要がなく、運動量が増えて健康的という点もうれしい。マイカーやカーシェア、レンタカーの車を選ぶ際は、電気自動車やプラグインハイブリッド車などの選択肢も考えてみよう。
【15】スマートムーブ
【16】ゼロカーボン・ドライブ
4.食ロスをなくそう!
一見ゼロカーボンと無関係のように思える「食」も、実は課題と深く結びついている。まずは、食べ切れる量だけを購入するように心がければ、食ロスを避けられるほか、食費の節約や、冷蔵庫の中をスッキリさせることで節電にも繋がる。それでも余った場合はフードバンクへの寄付についても調べてみて。
【17】食事を食べ残さない
【18】 食材の買い物や保存等での食品ロス削減の工夫
【19】旬の食材、地元の食材でつくった菜食を取り入れた健康な食生活
【20】自宅でコンポスト
5.サステナブルなファッションを!
日本の衣類廃棄量は年間約100万トンで、1人あたり1年に約26枚も捨ててしまっているという計算に!服の生産や輸送時にかかるエネルギーを減らすためにも、適切にケアして長く愛用したり、先のことを考えて服を購入したりと、ファッションとのサステナブルな付き合い方を考えていきたい。
【21】今持っている服を長く大切に着る
【22】長く着られる服をじっくり選ぶ
【23】環境に配慮した服を選ぶ
6. 3R(リデュース、リユース、リサイクル)
プラスチックごみの不適正な処理は、海を中心とした生態系にも影響を及ぼしている。ごみを減らすため、マイバッグやマイボトル、マイストローなどの繰り返し使える製品を持ち運ぶのがおすすめ。手元にあるものを修理・補修して長く使ったり、フリーマーケットなどで不用品を売買するのも。
【24】マイバッグ、マイボトル、マイ箸、マイストロー等を使う
【25】修理や補修をする
【26】フリマ・シェアリング
【27】ごみの分別処理
7. CO2の少ない製品・サービス等を選ぼう!
環境配慮のマークが付いたものや簡易的な包装のもの、詰め替え製品を意識的に選ぶことで、環境負荷削減に貢献。また、地球温暖化対策に積極的に取り組んでいる企業の商品・サービスを購入すれば、環境に配慮するライバル企業が増加し、業界全体としてゼロカーボンの実現に繋がることも期待できる。
【28】脱炭素型の製品・サービスの選択
【29】個人のESG投資
8.環境保全活動に積極的に参加しよう!
地球温暖化は決して他人事ではなく、地球上に暮らす一人一人の行動の上に起こっている。地域が主催する植林やごみ拾いなどの活動に参加してみることで、環境保護への心構えを行動で表してみよう。また、ゼロカーボンアクションの取り組みについてSNSなどでシェアすれば、行動の輪を広めることに!
【30】植林やごみ拾い等の活動
Navigators
環境省 地球環境局地球温暖化対策課長・小笠原 靖(おがさわら・やすし)
1995年環境庁入庁。環境省広報室長、同リサイクル推進室長、内閣官房内閣参事官などを経て、2020年7月より現職。
ハナコラボSDGsレポーター・大場桃果(おおば・ももか)
1994年生まれ。雑誌やWebを中心に活動するフリーランスの編集・ライター。SDGsレポーターとしてさまざまな取材を担当。
(Hanako1202号掲載/photo : Shu Yamamoto illustration : Maori Sakai text : Momoka Oba)
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