作り手の想いを聞きながらいただく1杯。蔵前〈a drop . Kuramae〉の飲み比べコースを体験
Hanako.tokyo / 2021年11月30日 15時0分
みなさまこんにちは。木村ミサです。2021年も終わりに近づき、時間の流れが忙しなくなってきましたね。こんなときこそ、ゆっくりとした時間がほしくなってしまう…!そんな今回は、2021年のうちに絶対行きたかった〈a drop . Kuramae〉へ。お茶と向き合いながら、特別な時間を過ごしましょう。
近年、様々なジャンルのおもしろいお店が集まる街・蔵前。駅から少し歩くと、ちょっとレトロで雰囲気のある建物の2階に〈a drop . Kuramae〉はあります。以前、紹介した〈JINNAN HOUSE〉主催の日本茶イベントに出店していたときに出会い、お話を聞きながらいただくスタイルのお茶がとっても楽しい体験だったので、ぜひ行きたいと思っていた場所です。店主の田邉さんは、作り手との出会いを大切にしながら、お客さんと会話をする中でお茶を提供していく接客スタイル。役者やバックパッカー、ビール専門屋台など様々な経験を経て、「人を楽しませることをしたい」 と想ったからだそう。今回は「おまかせ飲み比べコース体験」(1,500円)を体験しました。
【本日の1杯目】「中井侍銘茶」
ちょうど取材日の前日、長野県の中井侍でお茶作りをしている方に会いに行っていたという店主。中井侍は約50年前からお茶作りが始まり、いまでもほとんどの農家さんが手摘みで茶葉を収穫しています。その日会いに行ったおばあちゃんは、1人で茶畑をきれいに管理していますが、飲む用にお茶は加工していないのだそう。
そんな日常にお茶が密着した地域でいただく中井侍のお茶は、日照時間が短いという地域性から、茶葉は柔らかく、なんと蒸し時間は20秒!蒸し時間が短いので、葉っぱの形状はそのまま。ピュアな味を楽しむことができます。一代でやっているお茶農家さんが多いため、なかなか出回らないお茶。私も初めていただくのがこの1杯ということで、とても楽しみ。
熱湯で1分。ひらひらと湯の中で茶葉が開いていきます。早速いただくと、お茶本来の葉っぱの味を感じる。なんだか自然に来たかのような感覚。そして中井侍の方々のお話を聞いたことによって広がる、現地にやって来たような気持ちになる青々とした味。ピュアな茶葉の中にも甘みや渋みのバランスが整っていて、ガブガブとずっと飲んでいたくなるような、いつまでも変わらないお茶の味でした。
【本日の2杯目】「川根茶」
続いては、静岡県で「川根茶」を作っている〈鈴木茶苑〉2代目・鈴木健二さんのお話を聞きながらいただくお茶。家の玄関を開けると、放置されてしまったお茶の木が生い茂っているような現実が広がるなか、「お茶って生命力がありますよね」と言える鈴木さんのお茶への愛は素敵だと語る店主。そんな〈鈴木茶苑〉さんは、お茶の魅力に惹かれお茶農家になったお父さんと、地元の茶工場で効率的なお茶作りを経験した息子さんの親子二代で経営しているそう。
そんな色々なお茶の環境を見てきた鈴木さんが「自分が本当に作りたいお茶って何だろう」 と考えた末にたどり着いたのが、「普通のお茶を作りたい」というシンプルな答え。テーブルの上にポットを置いて、じゃぶじゃぶとお湯を入れて飲めるようなお茶。私も祖母がお茶好きで、いつもポットから淹れたお茶を飲んでいた…そんな懐かしい記憶を思い出しつつ、鈴木さんの「川根茶」をいただきましょう。
香りも苦味も心地良い口当たり。そして、飲み終わったときの口に残る深みのある余韻がたまらない。日常的に飲めるお茶の定義は人それぞれだと思うけど、私の場合は“楽しい話をしながら何気なく飲んだとき、口の中に余韻が残るもの”が好きなのかもしれない。店主のお話を聞きながら、思い出を振り返りつついただく鈴木さんのお茶は、全てひっくるめて余韻が楽しい1杯でした。
【本日の3杯目】「政所茶」
次は、店主が摘んできた「佐藤さんの手摘み玉露」。在来種の茶樹を農薬を一切使用せず、菜種油の搾りかすなど無化学肥料のみを使って昔ながらの製法で丁寧に育てられた茶葉。店主が行った日は本来摘むことがない雨の日。しかし、この地域では1件の工場でしか製茶してないため、雨の日でも摘まないといけない環境なのだそう。
元々お父さんがやっていた茶農家を、サラリーマンをしながら引き継いだ佐藤さん。いまではお茶作りが楽しくなり続けているとか。そんな佐藤さんがつくる玉露。「昔ながらの玉露ってこんなだったな」っていうところを体験してほしいと、店主の想いも聞くと、さらに飲むのが楽しみになります。
青っぽさもありつつ、細く続く旨味。藁で日除けを作り、日光を遮って育てた茶葉なので、玉露らしい甘みもしっかり感じられるのがとても好みです。町全体で、農薬不使用、無化学肥料のみを使用して畑を管理し、ほとんどの畑がいまでも手摘み。実はこの「政所茶」の平番茶をいただいたことがきっかけで〈a drop . Kuramae〉に興味を持ち、お話を聞いて思わず平番茶を持ち帰りするくらい、「政所茶」の魅力に惹かれている私にとって、この玉露でも「政所茶」からお茶本来 の持つ味のかわいらしさを感じられました。
【本日の4杯目】「政所茶(萎凋煎茶)」
最後は「政所茶」の「萎凋(※)煎茶」を。こちらも在来種で農薬不使用、油かすや落ち葉など無化学肥料を使用し作られたもの。一晩、萎凋させる背景には、手摘みに疲れて休もう!と、摘んだ葉っぱが萎凋しないよう家屋の日陰に広げ、カラダを休めてから加工しており、いまでは技術の進歩によって早く製茶できるため、萎凋することはなくなってきたそう。ここでは一晩手間をかけ萎凋させることによって、萎凋ならではの花っぽい香りを感じられるのが楽しみです。
※萎凋(いちょう)…摘採後の茶の葉をしおらせる茶の製造工程のこと。
萎凋されることにより、花のような香りが感じられる。土草っぽさもありながら、渋みもまろやかでそよ風のような心地よさがあります。政所では、町の営みとしてのルーティンでお茶作りがある。四季の行事のひとつとして毎年茶摘みをする。そんな環境で作られる政所茶は、 いつでも変わらないお茶であり続けてくれることの良さを教えてくれました。
今回、こうして作り手に向き合いながらいただくお茶を体験させていただく中で、「“お茶を疑ってほしい”というテーマで淹れました」という店主。色々なお茶をいただく中で、私がずっと感じていた「作り手の想いを知りたい」という気持ちが昇華されてとても楽しい体験でした。中々、お茶農家さんに会いに行けないいまのご時世、都内でお話を聞きながら楽しめるのはとてもありがたい…!店主はこのお店を“お茶を好きになる2歩目として楽しんでほしい”そう。様々なスタンドで手軽にお茶が飲めるようになってきたいまだからこそ、入口でお茶がおもしろいと気づいたら、ぜひ〈a drop . Kuramae〉を2歩目にして、今度は作り手の想いや、店主のエピソードを聞きながら、心で飲むお茶の楽しさを体験したら、「お茶の沼にようこそ」の世界が広がっているでしょう。
【本日のお土産】「手摘み煎茶 峰」
「手摘み煎茶 峰」1,404円
帰りに〈しばきり園〉の手摘み煎茶をお持ち帰り。〈しばきり園〉は〈JINNAN HOUSE〉のイベントで知った、2000年生まれの若手茶農家さんによって作られた茶葉。そんな背景を思い出しつつ、80度くらいのお湯で1分。甘みも感じられながら、コクがしっかりあったりと、シンプルに好きな味だ。バランスがある中にも、若者の力強さが伝わる。これからもっと推していきたい1杯です。
お茶って色々な楽しみ方があるし、作り手の想いもそれぞれ。でも、どれもとっても魅力的で、共通して言えるのは「自分のお茶が好き」ということ。そんな歴史や想いが、店主 の語りによって愛おしく感じる。なんだか私も「このお茶ってね…!」と思わず誰かに話したい。誰かと語りたくなるようなお茶に出会えたこの体験を、ぜひ味わってみてほしいです。お茶って楽しいよね。それでは本日の一杯、召し上がれ!
〈a drop . Kuramae〉
東京都台東区蔵前4-14-11 204
https://bio.link/adropkuramae
※予約推奨
※営業時間は随時インスタグラムで更新中
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本日の至福、このお茶一杯より。一覧
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