【日本酒】直火で熱々!冬にぴったりな燗酒「月波」シリーズ~『伊藤家の晩酌』第二十八夜1本目~
Hanako.tokyo / 2021年12月5日 17時50分
弱冠24歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入!酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは?今回は、寒い季節に飲みたくなる燗酒にぴったりな日本酒をご紹介。第二十八夜の1本目は、燗酒のために造られたという、お手頃な長野のお酒。
今宵1本目は、熱燗好きが、熱燗のために造ったという「月波ノ波」と「月波ノ月」から。
長野県大町市にある薄井商店の代表銘柄といえば「白馬錦」。「山と、水と、ともに生きる。」という蔵のコンセプト通り、北アルプスのふもとで酒造りを行う。長野県小谷村との共同開発で生まれた「月波」シリーズは、夏でも冬でも熱燗が大好き!という小谷村の方々の熱燗への熱い思いによって生まれたお酒。
左:普通酒「月波ノ波」990円 右:純米酒「月波ノ月」1,430円(各720ml、ひいな購入時価格)/株式会社薄井商店
娘・ひいな(以下、ひいな)「今回は何度目かの熱燗特集です!」
父・徹也(以下、テツヤ)「ウェ〜イ。さっき確認したら3回目だったよ」
ひいな「毎年やってるんだね(笑)。今回はね、いろんな熱燗のバリエーションを紹介したくて」
テツヤ「ぬる燗、熱燗とか温度によっていろいろあるけどさ、さらにバリーエーションがあるんだな」
ひいな「今回は、熱燗で遊び心を取り入れようっていうのがテーマ」
テツヤ「日本酒は、ちょっと真面目すぎるところがあるからな〜」
ひいな「そうだね。まだまだ固いところがあるからね」
長野県に取材に行ってきました〜!
有名な「白馬錦」を造っている蔵が手がけた新しいお酒です。
ひいな「ということで、熱燗1本目は〈薄井商店〉の『月波』というシリーズをご紹介します!」
テツヤ「このお酒はこの間、ひいなと一緒に長野の小谷村(おたりむら)に取材に行って飲んできた日本酒なんだよね」
ひいな「『白馬錦』っていうお酒を造っている薄井商店さんの蔵に伺ったんだよね。この『月波』シリーズは『月波ノ月』ってお酒と『月波ノ波』っていう2種類あって。『月』が純米酒で『波』が普通酒なんだけど」
〈薄井商店〉さんに伺いました!
タンク1本で「月波」シリーズを造っています。原酒は同じ。
テツヤ「普通酒ってなんだっけ?」
ひいな「原料とか精米歩合などが定められた特定名称酒(純米酒、本醸造酒、吟醸酒など)に属さないお酒のことを普通酒っていうんだけど」
テツヤ「なるほど」
ひいな「私は純米酒が好きだから『月』がいいかなと思ってたんだけどね…」
テツヤ「うんうん、ひいなは純米酒好きだからな」
ひいな「でもね、長野ではずっと『波』を飲んでたんだよねぇ」
テツヤ「そうそう」
ひいな「まずは普通に常温で飲んでみようか」
テツヤ「熱燗にしたらどんなふうに味が変わるのか比較しないとね」
まずは常温で。
いただきます!
ひいな「じゃ、まずは純米酒の『月』から」
テツヤ「じゃ、俺は普通酒の『波』から」
ひいな&テツヤ「いただきます!」
テツヤ「常温でも普通にうまいよ!」
ひいな「じゃ、今度は交換して私が『波』を」
テツヤ「じゃ、俺は『月』を」
ひいな&テツヤ「いただきます〜!」
テツヤ「あぁ、俺やっぱり『波』のほうが好きだわ」
ひいな「でしょう?私も」
テツヤ「何なんだろう。波のほうがスーッっと入ってくるよね」
ひいな「純米酒のほうがバランスがいいとか言われがちだけど、普通酒の『波』ほうが整ってる感じがするかな」
テツヤ「これ、絶対、熱燗したらうまいだろう!って酒だよな」
ひいな「小谷の人はさ、やかんで燗をつけるんだよね」
テツヤ「そうそう。やかんに直接入れてね」
ひいな「今日はそのやかん酒をぜひみなさんにもご紹介したくて、実践してみたいと思います!」
小谷村直伝!やかんで直接、火にかける燗酒の作り方。
やかんに直接日本酒を注いで火にかけます。
ひいな「今回は、普通酒の『波』を燗にしてみようか。まず日本酒をやかんに直接入れます」
テツヤ「湯煎じゃないんだよな」
ひいな「そう。やかんに入れて、直火で温めるんだよね」
テツヤ「しかもさ、やかんっていうのがいいよね」
ひいな「アルコールが飛んじゃわないように、必ずふたをしてください!小谷村の方曰く、ふたをするのがポイントだそうです!」
テツヤ「アルコールを余すことなくいただくためにも、ふたは忘れずに!」
ひいな「じゃ、火をつけるね」
テツヤ「火加減はどうするの?温度ってどうやって測るの?」
ひいな「鍋肌がふつふつしてきたな、っていうぐらいでいいみたい」
テツヤ「あぁ、沸騰する前のふつふつで止めるんだな」
ひいな「実は、〈薄井商店〉の社長さんにいただいたものがありまして…」
ひいな「その名も『おかんメーター』!」
テツヤ「すごいレトロだよな。どこで売ってんだろう(笑)」
ひいな「私も初めて見たよ」
編集・小倉「僕、〈東急ハンズ〉で見たことありますよ(ライター注:各ネットショップなどでも購入できるようです)」
ふつふつするまで火にかけたら、70度近くまでいきました!
ひいな「こんふうにやかんにそのまま入れて温度が計れます」
テツヤ「ぬる燗と熱燗の間ってなんていうか知ってた?」
ひいな「上燗?」
テツヤ「あたり!温度によって何燗なのか書いてくれてるのがありがたいね。今日はどのあたりにするの?」
ひいな「今日はかなり熱めで。とびきり燗って言われる温度かな」
テツヤ「おかんメーターには書いてないや。とびきり燗は何度なの?」
ひいな「55度以上かな」
テツヤ「熱々だな」
ひいな「今回は、繊細な温度のぬる燗とかじゃなくてガチガチのお燗を」
テツヤ「おぉ!温度ぐんぐん上がってきた!あっという間に60度超えた!」
ひいな「ふつふつしてくるぐらいが60度くらいなんだね。あ、70度までいっちゃった!」
テツヤ「もういいんじゃないの?」
ひいな「もういいね(笑)」
熱々のお酒を湯呑みに注いで…。
ふぅふぅしながら飲む熱燗、たまりませんね。(注:お茶ではありません)
テツヤ「わぁ、湯気が立ってる!」
ひいな「じゃあ、いただきましょう」
ひいな&テツヤ「あぁ、うまいよ。香りが全然変わったね」
ひいな「あぁ、これだ。これだね!」
テツヤ「さっきの常温よりぜんぜんうまいよな」
ひいな「余計なものが飛ぶんだろうね」
テツヤ「甘みがすごく残るよね。ぜんぜんいやな甘みじゃなくってさ。するっとお茶みたいに飲めちゃうな(笑)」
ひいな「そうそう。火を通すことでお酒の味が平坦になって、ずっと飲み続けられるお酒になるっていうか」
テツヤ「やっぱりさ、やかん酒は湯呑みだよな。おちょこより湯呑みが似合うよ」
ひいな「本当にお茶を飲んでるみたいな感覚だよね」
「月波ノ波」に合わせるのは、〈道の駅おたり〉で買った地元グルメセット!
左上から時計回りに。唐辛子が効いたピリッと辛い「こしょうみそ」、〈おたり生ハム工房〉の「熟成生ハムニンニクオリーブ」と「原木熟成プロシュートペースト」は止まらないおいしさ。酸味と食感が抜群の「野沢菜ふぶき」の4つ。
ひいな「これに合わせるおつまみは、小谷の道の駅で売ってる、地元名産品の数々です!」
テツヤ「絶対うまいだろ!ってやつばっかりセレクトしたもんな」
ひいな「このプロシュートペースト、気になるよね」
テツヤ「〈おたり生ハム工房〉は、小谷で豚を放し飼いで飼育してるところがあってね。その豚を加工してプロシュートを作ってて。栂池高原のゲレンデの上にある変電室みたいな小屋にぶら下がってるんだよね」
ひいな「そう。すごい数ぶら下がってたよね。その生ハムを使ったパテと、生ハムをにんにくオリーブオイルにつけこんだものと…あと、取材に同行してくれたカメラマンさんの米谷亨さんおすすめの野沢菜も」
テツヤ「そうそう。米ちゃんが『これすごくおいしいんですよぉ〜』って教えてくれたんだよね」
ひいな「モノマネすごい似てる(笑)。このこしょうみそは、いわゆる唐辛子味噌で『白馬錦』の〈薄井商店〉さんに行った時、『ちょっと待ってて』って社長がかばんの中から、こしょうみそを出してくれたんだよね」
テツヤ「そうそう。自家製のね」
ひいな「いつも持ち歩いてるんだ!ってびっくりした(笑)」
テツヤ「熱燗に合わせるつまみの定番なんだね」
じ
ひいな「じゃ、そろそろ、やかん酒に合わせてみようか!」
ひいな&テツヤ「いただきます!」
テツヤ「この野沢菜本当にうまいな!米ちゃん、ありがとう!」
ひいな「うん、本当においしいね、この野沢菜。日本酒も、燗冷ましになってきて、どのおつまみとも合う〜!」
テツヤ「全部ごはんのお供だよな」
ひいな「ごはんのお供ってことはお酒のお供だから(笑)」
テツヤ「プロシュートと小豆島のオリーブオイルのやつも最高だな。生ハムのうまみとやかん酒が合わさったら、口の中でスープになったよ。この〈おたり生ハム工房〉さん、ヤバいね」
ひいな「じゃ、そろそろ、あれを…」
〈おたり生ハム工房〉の小谷産原木熟成プロシュート買ってきてしまった伊藤家。やかん酒のいいつまみになります。
プロシュートを食べたいだけ削ります!なんと贅沢!
テツヤ「原木で買ってきちゃったね(笑)」
ひいな「食べ放題やりたい!」
テツヤ「あぁ、最高!日本酒にも最高に合うよ。ワインよりも合う気がする」
ひいな「やかん酒の味の平坦さに、プロシュートの味の盛り上がり方がすごいから合うんだよね。やかん酒がなんでも受け止めてくれる感じかな」
テツヤ「日本でプロシュート作ってるところって少ないんだって。温度管理がむずかしいのかな。これ24ヶ月熟成らしいんだけど」
ひいな「うまみがぎっしり詰まってる」
テツヤ「ちょっと発酵した香りもあって。クセになるよね」
ひいな「買ってきてよかった」
テツヤ「カメラ機材より、プロシュート2本のほうが重かったもんな(笑)」
ひいな「1本は誕生日プレゼントであげたんだよね」
テツヤ「ありがとう。自分で削ってつまんで。永遠に飲んでられる、最高のプレゼントです!」
熱燗のために開発された「月波」シリーズ。「月」と「波」どっちがお好き?
テツヤ「このさ、湯気が出た日本酒を湯呑みに入れて、ふぅふぅ言いながら飲む感じがいいんだよなぁ」
ひいな「冷めてきて飲むのもまたいいんだよねぇ。それが燗冷まし。どの温度帯でもおいしいのがやかん酒の特徴だなと思ってて」
テツヤ「確かに。沸かしたてより、少し冷めてきた今がうまいぞ。うまみが出てきた感じ。出汁っぽさもあるっていうか。ほんとにずっと飲めるよ。やかん酒、小谷村で初めて飲んだ時も最高だったもんな」
ひいな「そう!小谷村で行ったジンギスカン屋さんは大きいやかんで出してくれてね」
テツヤ「あれは大きかったよなぁ」
ひいな「朝10時からジンギスカン屋さんでやかん酒(笑)」
テツヤ「ジンギスカンみたいな濃いやつを合わせるのがすごいよかったんだよね」
ひいな「この『月波』シリーズは熱燗をつけるために造られたお酒なんだって」
テツヤ「それをコンセプトに開発されたんだよね。夏でも熱燗にするって言っててびっくりしたよね。夏は冷酒だとばっかり思ってたからさ。普段からやかん酒を飲むって言ってたけど、やっぱりお茶みたいな感覚なのかな」
ひいな「そうかもね。昔から飲んできた伝統があるんだろうね」
テツヤ「村の寄り合いがあれば、やかん酒を飲むんだろうな」
白馬錦もいただきました!
ひいな「〈薄井商店〉の代表銘柄の『白馬錦』もお燗にしておいしいお酒なんだけど、それで〈道の駅おたり〉の方から〈薄井商店〉さんに『お燗にしておいしいお酒を造ってください』っていう依頼がきて造ったんだって」
テツヤ「お燗好きな人たちからのオーダーだったんだな」
ひいな「小谷百姓七人衆っていう若手の生産者さんたちが造った地元の『ひとごこち』っていうお米だけを使って造ってるんだって」
一面、黄金色のたんぼ。『月波』のふるさとです。
テツヤ「『月』もおいしいんだけど『波』がほんとうにいい。おすすめ。これ、確か安いんだよな?」
ひいな「うん。普通酒の『波』は990円。純米の『月』が1430円」
テツヤ「安くてうまいとか最高だよ。気兼ねなくやかん酒にできるしね」
ひいな「うん、断然、やかん酒だよね」
テツヤ「なんか飲めば飲むほど、長野の酒って感じがするよな。魚じゃないっていうかさ」
ひいな「あぁ、分かる気がする!」
テツヤ「ほら、みそとか野沢菜とかと合わせるイメージ。雪深いところで熱々のやかん酒を飲むの。あったまるな〜。もうこれはやかん酒のチャンピオンだな」
ひいな「うん、チャンピオンだね!」
【ひいなのつぶやき】
奥の深いお燗酒ですが“やかん”で温めちゃうのも立派な楽しみ方のひとつ!難しいことはさて置おき、温める過程も楽しんじゃいましょう!
薄井商店を父娘で訪ねた蔵元レポートはこちら
ひいなインスタグラムでも日本酒情報を発信中
photo:Tetsuya Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita
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