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エジプトに〝手工芸隊員〞として派遣された田原彩さんの場合

Hanako.tokyo / 2022年2月26日 18時0分

エジプトに〝手工芸隊員〞として派遣された田原彩さんの場合

JICA海外協力隊で活動した田原彩さん
参加したきっかけや、現地で得た“気づき”について話を聞いた。

たはら・あや/家庭科の非常勤講師、カタログのディレクターなどを経て、JICA海外協力隊の手工芸隊員としてエジプトへ派遣。帰国後は、倉敷本染手織研究所で染織と民藝を学ぶ。今年1月から、再びエジプトへ。

RESULT!:伝統柄の布を新たな商品に。仕事での経験が役立った。

ラマダンなどで使われるエジプトオリジナルの布「ハーヤメーヤ」を用いて、トートバッグやクラッチバッグなどをエジプトの紅海沿岸に住む女性たちが手作りするブランド〈OS RMONTEJA(オサルモンテガ)〉を立ち上げた。田原さんはアイテムの商品価値を上げ、販路開拓に尽力。オンラインショップで購入可。https://osrmonteja.thebase.in/

ラマダンなどで使われるエジプトオリジナルの布「ハーヤメーヤ」を用いて、トートバッグやクラッチバッグなどをエジプトの紅海沿岸に住む女性たちが手作りするブランド〈OS RMONTEJA(オサルモンテガ)〉を立ち上げた。田原さんはアイテムの商品価値を上げ、販路開拓に尽力。オンラインショップで購入可。https://osrmonteja.thebase.in/

田原さんの自宅には機織り機が所狭しと2台。ここで織った椅子敷きも販売する。

ハーヤメーヤを使ったピアス。

機織りの仕組みはどの国も同じ。扱えるようになったら、いろいろな国の織物が作れるそう。

予想しなかった力が現地で役立ちました



エジプトに〝手工芸隊員〞として派遣された田原彩さん。今年1月から再びエジプトで活動することを決意。彼女を駆り立てるものとは。

田原さんが海外協力隊を知ったのは高校生のとき。家庭科の先生が雑談の一つとして話した、海外協力隊に参加したエピソードが心に残っていた。「でも実際すぐに行動に移すということはなく、興味のあったモノづくりの道に進みました」(田原さん、以下同)
大学では被服を学び、印刷会社勤務、家庭科の非常勤講師、メーカーに勤務しカタログをディレクションするなどさまざまな職を経験。そのうちに妹が協力隊に合格し、頭の片隅にあった想いが芽吹いた。「妹に職種の説明などを受けるうち、自分も何かできるのではとイメージが湧くように。それまでは、協力隊=井戸を掘るという印象が強かったのですが、被服の勉強や家庭科教師としての経験があったので、手工芸の分野でならと思って応募しました。でも実際役立ったのは、働き出してからのディレクション能力で」
田原さんの前任者が現地の人と一緒に作っていたハーヤメーヤのトートバッグは、当時は受託製作で、販売するにも品質がもう一歩だった。そこで、試行錯誤の末、売れるクオリティに。「ハーヤメーヤはエジプトの伝統工芸の一つで、ハスや幾何学模様がアップリケで鮮やかに表現された布。この柄をプリントしたハーヤメーヤ柄の布が、現地ではラマダン時にテントやスーパーに飾られています。バッグやポーチなら、私たちのような外国人にウケがいいかと思ったんです」。注文書なども管理ができるように工夫した。「技術向上の支援をするうちに技術力の低さを痛感し、自分も教える前に学びたいと思いました。そこで、より求められていた、商品価値を上げたり、販売する場所を時には飛び込み営業で探したりと、ディレクター業にシフト。事前に決めた活動内容が変わっても大丈夫なんですよ」
 帰国して、技術を身につけるために染織を勉強。「コロナ下で染織の勉強を始め、エジプトの羊の毛から糸を紡ぎ、絨毯を作って現地の女性たちの雇用にもつなげたいという新たな目標ができました。いつかは現地で立ち上げたブランド〈OSRMONTEJA〉でハーヤメーヤのグッズと一緒に販売したい」。コロナ下には、貧困に陥ったエジプト人を支援するための農園設立へ向けたクラウドファンディングも行った田原さん。「遠い日本からではなく、現地で彼らに寄り添いたい」と、エジプトに再び旅立った。

“気づき”のきっかけは?:現地でモノづくりをする女性たち。

ハーヤメーヤの商品を作る女性以外にも、現地では素敵な出会いがあった。「バザーで出会った革製品を作る若い女性は、商品への愛着があり、売るのも一生懸命。彼女の応援をしたいと支援をするうち、自分ももっと学びたいと思うように」

影響を受けたモノは?:モノづくりのヒントになる民藝の考え。

柳宗悦『工藝文化』を読み、民藝の勉強をしたという田原さん。鑑賞のための工芸品ではなく、日用雑器の中に真の美を見出す「用の美」を謳った柳の考えは、自分が迷ったときに立ち返れる教科書であり、現地でのモノづくりの手がかりにも。

JICA海外協力隊で、“気づき”の種を。

日常の暮らし以上に“気づき”を得られるJICA海外協力隊は、思ったよりも身近。
どこで、どんな活動をするのか?
幅広い人が活躍する協力隊を紐解きます。

JICAが行う「JICAボランティア事業」の一環で、開発途上国からの要請に基づいて派遣されるJICA海外協力隊。幅広い経験・技能等で応募ができる「一般案件」と、一定以上の経験・技能等が求められる「シニア案件」に区分され、自分に合った案件や職種で応募をする。土木や下水道だけでなく、野菜栽培、防災・災害対策、食品加工、スポーツ教育、医療、社会福祉、観光、省エネなど、職種は190種以上も。

現地の経済や社会の発展・復興、異文化社会との相互理解のほか、参加した隊員が協力隊としての経験を日本の地域や世界の発展に役立てることも目的とする。原則2年間の任期で、約55年の間に世界98カ国に5万人以上の隊員が派遣されてきた。帰国後の進路も支援され、帰国後研修や進路開拓セミナー、進路相談カウンセリングが充実。協力隊として活動した経験を活かす仕事に、スムーズに就けるように支援する。

アフリカ諸国のほか、東南アジア、中東、北米・中南米など派遣提携先は世界91カ国。実際には、募集時期に要請のある地域に派遣されるが、自分に合った活動ができる派遣先なら3カ所まで希望を出すことができる。合格すると、現地で使う言語や危機管理能力等を身に付けるための派遣前訓練に参加。不安要素として多く声が上がる語学の問題は、クリアにして出発できそうだ。

 基本的な情報や活動内容を検討したらウェブサイトから応募。通常は年に2回応募のタイミングがあり(現在は期間外)、募集期間以外には説明会や協力隊経験者から直接話を聞けるイベントなどを行っている。日本国籍を持つ、20歳から69歳までの人であれば何度でもチャレンジすることが可能。現地での活動に必要な、現地生活費、住居、往復渡航費などはJICAが負担してくれる。

INFORMATION:活躍のチャンスを掴んで人生をカラフルに。

JICA海外協力隊は、近年は半数以上の参加者が女性で、派遣先ではサポート体制もあって安心。語学力は英語の場合、中学卒業程度に設定しており、やる気があれば誰にでもチャンスはあるという。まずは自分がどんな仕事で貢献できるか、関われる職種をJICA海外協力隊公式ウェブサイトでチェックして。

詳しくはこちら

photo : Satoko Imazu illustration : Yuki Takahashi text : Kahoko Nishimura

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