1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

【日本酒】幻のお米を現代によみがえらせる!復刻米を使った日本酒3選~『伊藤家の晩酌』第三十夜~

Hanako.tokyo / 2022年3月6日 17時50分

【日本酒】幻のお米を現代によみがえらせる!復刻米を使った日本酒3選~『伊藤家の晩酌』第三十夜~

弱冠24歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入!酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは?今回は、2022年、新年にふさわしいしぼりたての新酒をご紹介。第三十夜は、かつて使われていた米を復刻して造られたという限定酒を3本ご紹介。

日本酒は米で選ぶ!?知る人ぞ知る、幻の復刻米を使った限定酒3本

(左から)「鳳凰美田 純米吟醸 亀の尾」「美田 山廃純米 古醸 2018」「産土 2021 穂増」

栃木県小山市美田地区にある小林酒造。マスカットのようなさわやかな飲み口で華やかな香り。復刻米「亀の尾」を使用。「鳳凰美田 純米吟醸 亀の尾」720ml 2,200円(ひいな購入時価格)/小林酒造株式会社

福岡県三井郡にある蔵元「三井の寿(みいのことぶき)」の「美田」は、福岡県糸島産の復刻米「穀良都(こくりょうみやこ)」を使用。「美田 山廃純米 古醸 2018」720ml 1,485円(ひいな購入時価格)/株式会社みいの寿

熊本県玉名郡「花の香酒造」は、熊本県に伝わる在来種「穂増(ほませ)」と呼ばれる復刻米を使用。2021年12月に発売されたばかりの「産土(うぶすな)」シリーズが日本酒好きな間で話題沸騰。「産土 2021 穂増」」720ml 2,530円(ひいな購入時価格)/花の香酒造株式会社



娘・ひいな(以下、ひいな)「今回はマニアックなテーマでやろうと思ってて。復刻米って知ってる?」


父・徹也(以下、テツヤ)「復刻米って、古代米みたいな感じ?」


ひいな「うん。昔、流行ったお米があって、一度、途絶えちゃったんだけど、最近そうしたお米を復活させてお酒を造ってる蔵があって。今回はその3本をご紹介します!」


テツヤ「へぇ〜。野菜もさ、在来種ってあるじゃない?そういうお米なのかな」


ひいな「うん。その土地のお米だね」


テツヤ「復刻米の日本酒って流行ってるの?」 


ひいな「うん。お米に関して今、2つの流れがあってね」


テツヤ「うんうん」


ひいな「『百万石乃白(ひゃくまんごくのしろ)』っていう石川県の品種とか、栃木県の『夢ささら』とか、最近、新しく品種改良されたお米ができている流れと、もうひとつは昔のお米を復活させる方向性と2つある気がしてて」


テツヤ「なるほど。昔ながらの米を復活させるのは酒造りの原点回帰なわけだな。でも、栽培が大変なイメージあるけど」


ひいな「そうなの。なぜなくなったのかっていう理由があるわけだからね」


テツヤ「そうだよね」



ひいな「栃木の『鳳凰美田』、福岡『美田』、熊本『産土(うぶすな)』の3本をご紹介します!」


テツヤ「ひいなは北関東好きだねぇ。九州から2本か!」


ひいな「今回の3本は〈住吉酒販〉で購入いたしました!」


テツヤ「いつもお世話になっています!復刻米っていうのはさ、ラベルでわかるものなの?記載があるの?」


ひいな「ラベルにお米の名前が書いてあるものもあるよ。この3本はラベルにお米の名前が書いてある」


テツヤ「どんな味なのか気になる!早く飲もうぜ!」

明治時代の復刻米「亀の尾」を使った「鳳凰美田 純米吟醸 亀の尾」



ひいな「1本目は『鳳凰美田』です!」


テツヤ「飲もう飲もう」


テツヤ&ひいな「乾杯!」

まずは「鳳凰美田」から。

いただきます!



テツヤ「うわ!うまいなこれ!吟醸?」


ひいな「うん。純米吟醸」


テツヤ「昼間に飲む純米吟醸っていいね。でも正直なところ、復刻米かどうかはよくわからないけど…」


ひいな「『鳳凰美田』って結構テンション高いお酒が多くて。全体的に甘さが際立つお酒なんだけど、その中でもこの『亀の尾』っていう復刻米を使ったこのお酒は落ち着いてる感じがするというか」


テツヤ「これで落ち着いてるんだ」


ひいな「うん。これは『鳳凰美田』のなかでは落ち着いてるほうだと思うよ」


テツヤ「そうなんだ。甘さのわりにあと口がキレるというかさ。これすごくうまいよ」


ひいな「甘ったるくはないよね。上品な甘さがある」


テツヤ「復刻米だから、そういう味わいになったのかな」


ひいな「うん。そうだと思うよ。この『亀の尾』っていうお米は明治のお米なの。『亀の尾』の亀は、阿部亀治さんという方が、冷害で被害を受けた田んぼのなかで元気に育ってる3本の稲穂を見つけたことで名づけられたんだって」


テツヤ「3本しかなかったんだ」


ひいな「そう。冷害を乗り越えた3本だったの」


テツヤ「丈夫に生きてたんだね」



ひいな「阿部亀治さんが山形で見つけたお米なんだけどね。1925年ごろは、“東の亀の尾、西の雄町”って呼ばれてくらい有名なお米だったんだって」


テツヤ「へぇ。あの雄町と!」


ひいな「そう。雄町に匹敵するお米っていわれてたの。でも『亀の尾』が廃れた理由は、冷害には強いんだけど、虫に弱かったり化学肥料や農薬を使うとお米が極端にもろくなっちゃうらしくて」


テツヤ「なるほど。それは育てるのが難しいお米なんだな」


ひいな「そっか。農業の現代化に向いてなかったんだね。『夏子の酒』って漫画あるでしょう?」


テツヤ「あるある」


ひいな「幻の米で造った吟醸酒が忘れられないっていう話を聞いて種もみを探し始めて復活させて、そのお米で鑑評会で金賞を取るっていう物語があるんだけど、その幻の酒米のモデルが『亀の尾』なの」


テツヤ「へぇ!いや、実に上品だね、このお酒。でもちゃんとジューシーさもあってうまい!これが『亀の尾』のうまさなんだろうな。復活させてくれてありがたいね」


ひいな「地元に愛されるお酒を目指そうとして、昔ながらのお米である『亀の尾』に着目したんだろうね」


テツヤ「原点に戻ったんだね」


ひいな「新しいお米じゃなくてね」


テツヤ「『亀の尾』で造ったほかのお酒も飲み比べてみたいな」


ひいな「いいね。すごい数になっちゃうと思うけど」


テツヤ「え、そうなの?結構、あるってこと?」


ひいな「『亀の尾』は、平成9年から11年間、亀の尾サミットっていうのがあったりするくらい、復活してからは『亀の尾』を使ったお酒がたくさんあるの。『亀の尾』ってね、実はコシヒカリとかササニシキ、あきたこまちの先祖なの。『亀の尾』がルーツなんだって」


テツヤ「へぇ。どれも寒いところの米だもんな」


ひいな「そうだね、冷害に強いからね。しかも収穫量が多いらしい。粒が大きいから吟醸造りで削っても残るんだって」


テツヤ「だけど、育てにくいんでしょう?」


ひいな「そう(笑)」


テツヤ「すごい手間ひまかけて育ててるっていうことなのかな。ということはお値段も張るんじゃないの?」


ひいな「2,200円です!」


テツヤ「ちょっと高めだけど、こだわりの米を使ってるんだから妥当だよね」


ひいな「だよね」


テツヤ「『亀の尾』だね。もう覚えた!」

知る人ぞ知る、復刻米「穀良都」を使用した「美田 山廃純米 古醸 2018」



テツヤ「あれ?さっきも『美田』じゃなかった?」


ひいな「さっきは『鳳凰美田』で、こっちは『美田』」


テツヤ「違うんだ?」


ひいな「違う蔵のお酒だよ。よく『鳳凰美田』が好きな人って『美田』って略していう人がいるんだけど、私は『美田』といえばこっちのお酒を思い浮かべる」


テツヤ「略しちゃダメだね(笑)。2018年って書いてあるけど熟成されてるの?」


ひいな「そう」


テツヤ「しかも糸島って書いてあるぞ。糸島の酒なの?」


ひいな「福岡のお酒なんだけど、糸島産のお米を使ってるの」


テツヤ「なるほど。復刻米を作ってるのが糸島なんだな」


ひいな「これは『穀良都』っていうお米を使ってるんだけど。明治の時に生まれたお米なんだけど、山口県の農民の伊藤さんによって品種改良されて誕生したのが『穀良都』なの。まず、飲んでみる?」


テツヤ「あぁ、そうだね。勝手に渋い感じを予想してるんだけど」


ひいな「ちょっと強烈かもしれない」


テツヤ「山廃で熟成酒だもんな」


ひいな「香りだけでも、濃厚さを感じるかも」


テツヤ「お?うまそうな匂いだぞ」


ひいな「香ばしい感じあるよね」


テツヤ「あ、色がついてるね。みりんみたい」

ほんのりと色づいておいしそう。

2本目いただきます!

香りをじっくりと味わう父。



テツヤ&ひいな「乾杯!」


テツヤ「うわぁ〜匂いがもう独特だねぇ。これめちゃくちゃ好きかも!」


ひいな「透明感のある熟成酒って感じがするよね、コクとか香ばしさもありながら」


テツヤ「そして土っぽい。ミネラル感もあって。穀物を飲んでる感じっていうか。『穀良都』っていうお米の名前らしい味わいっていうか、大地を飲んでるって大げさかもしれないけど、すごい感じるね」


ひいな「わかる。お米にフィーチャーしてる感じするよね。日本酒だから当たり前なんだけど」


テツヤ「これはうまいよ。さっきの『鳳凰美田』は俺にはおしゃれすぎたな」


ひいな「確かに(笑)。なんとこの『美田』、1,350円+税というお値打ち価格」


テツヤ「安くない?そんな貴重なお米使ってるのに?」


ひいな「申し訳ないよね。しかも熟成までしてるのに!」


テツヤ「ほんとだよ!」


ひいな「今日は冷やしちゃったけど、常温かお燗でもいいお酒だと思う」


テツヤ「うん。匂いのイメージより飲みやすいし、和食とも合いそう。飲み始めのインパクトと違って水っぽくも感じるし、するするいく感じ」


ひいな「今回、『穀良都』って私も初めて聞いたんだけど、相当めずらしいお米だと思う。山口で生まれたお米なんだけど、昭和初期、西日本で流行ってたらしくて、昭和天皇即位の時に献穀米になったくらい有名なメジャーなお米だったんだって。さっき紹介した『亀の尾』とか『山田錦』とかと同じくらい評価されたお米で、品質が高かったらしい。でも、稲穂の背が高くて、栽培に手間がかかるのが難点だったと」


テツヤ「倒れやすいからな」


ひいな「だから新しい品種がどんどん出てくると…」


テツヤ「そっちにいっちゃうよな」


ひいな「それで一度、衰退しちゃったんだけど、1996年に12粒の種もみから復刻に取り組み始めたんだって」


テツヤ「すごいね。奇跡の米だね」



ひいな「うん、裏にも幻の米って書いてある」


テツヤ「そんな貴重なお米のお酒がこんな安く飲めちゃうの?そんな苦労して復刻したのにこの価格は安すぎるよ。値付け間違ってるよ!そんな貴重なお米だったら、もうちょっと主張してもいいのにね。『穀良都』って知る人ぞ知る感じなのかな?」


ひいな「ほとんど知らないと思う。私も〈住吉酒販〉さんに教えていただいて初めて知ったの」


テツヤ「ラベルに『穀良都』って書いてあっても米の名前だってわからないよな」


ひいな「そうだよね。この『穀良都』は、精米時に砕けやすいらしくて大吟醸には向いてないんだって。だから昔ながらの純米造りがいいんじゃないかな」


テツヤ「なるほど」


ひいな「お米自体は、淡麗でキレのいいお酒になるらしいんだけど、もしかしたら熟成してるからこんな感じなのかもしれないね」


テツヤ「燗にしてみたら落ち着くねぇ。おつまみがあるとさらにうまく感じるんだろうな」


ひいな「住吉酒販だとチーズをおすすめしてくれるんだって」


テツヤ「え!俺もチーズだって思ってた!」


ひいな「え、ほんとに(笑)?」


テツヤ「マジで。クリームチーズとかどうかなと思ったんだけど」


ひいな「いいと思う。熟成系のチーズも合うと思うよきっと」


テツヤ「あ!いぶりがっことクリームチーズとか最高じゃない?」


ひいな「いいねぇ」

幻の復刻米「穂増」を使用した「産土 2021 穂増」は2022年2月の発売以来、入手困難!



ひいな「次のお酒は、2022年2月に発売になったばかりのお酒です!」


テツヤ「おぉ!それは気になるねぇ」


ひいな「第27回に、同じ蔵の『和水』ていう山田錦を使ったお酒をご紹介したんだけど、“ドメーヌ”がキーワードになっていて」(ライター注:ドメーヌとは水、米など、その土地のものでお酒を造ること)


テツヤ「これも?」


ひいな「そう。このお酒は『穂増(ほませ)』っていうお米を使っています。お酒は『産土』で、うぶすなと読みます」


テツヤ「へぇ!」


ひいな「2021年12月にこの産土シリーズが生まれたばっかりで、最近、すごく注目されてるお酒です!しかも、今日紹介するお米のなかで一番古いお米」」


テツヤ「へぇ。いつ?」


ひいな「穂増の元々の品種が江戸肥後米って名前なんだけど、江戸時代には九州全体で栽培されてたすごくメジャーなお米で、江戸末期には“天下第一”の米って呼ばれてたらしい」


テツヤ「へぇ、ってことは、酒米じゃなくて食米だったってこと?」


ひいな「そう。もともとは食米だったみたい」


テツヤ「聞いたことなかったよ」


ひいな「でね、このお米が復活したのは2017年で、なんとつい最近なの」


テツヤ「うわぁ、そんな昔の米を最近復活させたんだ」


ひいな「地元に根づいたお米で造りたい!ってなったんだろうね」


テツヤ「いいことだね。それぞれの蔵の地域性があらわれるところだもんね、米って」


ひいな「そうそう。飲んでみようか。13度だから、アルコール度数は低めかな」
(パコーン!)


ひいな「わっ!びっくりした(笑)」


テツヤ「すごい勢いで開いたね(笑)」


ひいな「生酒だから。発泡してるね」


テツヤ「初穂増いただきます!」


テツヤ&ひいな「乾杯!」

しゅわしゅわと発泡してるのがわかります。

「穂増」いただきます!



テツヤ「うわ、何これ?いいねぇ。春飛び越えて初夏って感じだな」


ひいな「おいしい!第27回で紹介した『和水』と共通点あるよね」


テツヤ「うん、あるある」


ひいな「最高に高揚感のあるお酒だな」


テツヤ「これいくら?」


ひいな「2,530円。自然栽培のお米を使ってるから」


テツヤ「自然栽培って?」


ひいな「肥料なし、農薬なしで育ててる」


テツヤ「なるほど」


ひいな「『穂増』自体、農薬が出る前の品種だから農薬を使うとうまく育てられないらしい」


テツヤ「そっか。昔は農薬も肥料もないもんね。復刻米って実は今のオーガニックな流れに合う品種ってことなのかもね」


ひいな「稲が倒れたり、脱粒(だつりゅう)って言って稲穂から種もみが落ちちゃうことが多かったらしくて。明治以降はもっと育てやすいお米に取って代わられちゃったんだって」


テツヤ「なるほど。そうなっちゃうよね」


ひいな「1970年くらいになると甘み、粘りがあるコシヒカリが主流になっていったんだけど、『穂増」の特性は粘りが少なくて、お米としての噛みごたえがあるというか」


テツヤ「まさに大地の恵みだね。『産土』って名前にぴったりじゃない」


テツヤ「ほんとに。産土シリーズはすごくこだわってるお酒だから、ぜひHPを見てほしい!」



テツヤ「いやぁ、3本とも個性があっておもしろかったな。俺、復刻米の酒好きかも。ナチュールワインにより近い気がする」


ひいな「ナチュールが好きな父にはぴったりかもしれないね」


テツヤ「それぞれの個性があって、ストーリーがあるじゃない」


ひいな「昔のお米を復刻させるってすごい大変なことだもんね」


テツヤ「うん、これは買いたいし語りたくなるかも。日本酒を選ぶ時、お米で選ぶようになったら通だよな」


ひいな「そうだね。これからはお米にも注目してほしいな」


テツヤ「今日の3本はかなりお値打ちだったね。日本酒好きな人に教えなくなる」


ひいな「どれを紹介しても、お土産で持っていっても喜ばれると思う」


テツヤ「語っちゃうよね。これはね…って。いやぁ、最後に飲んだ『産土』の13度が軽くてよかったな」


ひいな「次回(4月3日公開予定)は、まさにアルコール度数に着目した回なのでお楽しみに!」


テツヤ「次号予告まで(笑)。乞うご期待です!」

【ひいなのつぶやき】
蔵の歴史や地域の背景を知ると、味わいもより深みが増す気がします!ぜひ、お米に注目して日本酒を選んでみてください
ひいなインスタグラムでも日本酒情報を発信中

photo:Shu Yamamoto illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください