センスのいい人に学ぶ、心地よい部屋の工夫。|〈Pasand by ne Quittez pas〉オーナー・神 真美『ヴィヴィッドカラーで彩られた家。』
Hanako.tokyo / 2022年6月23日 19時0分
物件そのものの良さだけでなく、素敵な部屋には家主の持つさまざまな“工夫”がちりばめられています。実例をお手本に、センスアップのヒントを学びます。今回は、〈Pasand by ne Quittez pas〉オーナー・神 真美さんのお部屋をご紹介します。
4LDKだった部屋を二度の改装を経て今の1LDKに。テーブルは真美さんがずっと欲しかったシャルロット・ペリアンのもの、椅子はジャン・プルーヴェのヴィンテージ。キリムをパッチワークにしたラグを敷いて。
インドの手仕事の美しさに共鳴して、エシカルでファッショナブルな服やプロダクツを発信している神真美さんは、昔からエスニックなものが好きだった。ヨーロッパに暮らしたときは、そうした国々のテキスタイルや手工芸品を、インテリアに上手に取り入れる「ミックスするセンスを学んだ」という。
椅子はインド・チャンディガールの都市計画に深く関わったピエール・ジャンヌレのデザイン。チャンディガールのある「パンジャブ地方のシーク教の人たちにお世話になっている」真美さんにとっても特別な存在。
仲のよい友人が来たときには、食事のあとに移動して「近況報告をする」コーナー。南向きの室内で元気に育ち続けている観葉植物も部屋のアクセントに。家具はビジネスパートナーでもある夫が選ぶものも多い。
閑静な住宅街。マンションの最上階に神真美さんの自宅はある。たっぷりと日差しの入る広々とした室内は、まさにテイストミックスの手本のようだ。時代も国も様式も、さまざまなものが集う。「エスニックなものをたくさん見てきたので、大胆な色を採り入れることにも抵抗がないかも」というように、色鮮やかなラグや小物が印象的だ。「インテリアに色を入れたいときは、ラグやクッションカバーなど取り替えられるものから始めるといいですよ」という。季節や気分で気軽に変えられるからだ。また、広いLDKをシーンごとに分けるのにも、鮮やかなラグは一役かっている。壁はなくても、ラグを敷くことで空間を自然に仕切ることができる。
【POINT 1】交換できるものから色柄を取り入れる。インテリアに色柄を入れたい場合、クッションカバーやベッドカバーなど、簡単に取り替えられるものなら冒険がしやすい。失敗したと思っても、やり直しがきく。エプロンやスリッパなど、自分が身につけるものでもいい。
【POINT 2】カラフルなラグで空間をゆるやかに仕切る。3つのシーン別に家具を配置したなかに、それぞれ違った色柄の鮮やかなラグを敷くことで、場の仕切りにもなっている。天然染料によるグリーンのラグは、モロッコの宿〈アルフィン〉で見て気に入り、生産者から購入した。
【POINT 3】旅に出たら、必ず何かを持ち帰る。写真中央、コーナーにピラミッドのように積み上げた籠はバリで購入した。ほかにもアボリジニの絵やケララの面など、旅先で気に入ったものを見つけて必ず買うようにしている。ミックステイストを取り入れる第一歩。
すべてのものは、この場所のために選ばれたかのようにしつらえられているが、「買い物をするときに、テーブルが欲しいとかラグが欲しいとか、リストアップして買うようなことはないですね」という。気に入ったものに出会ったら買う。家具はもちろん、窓際の壁に取り付けたピエール・ガーリッシュの照明器具などもそのひとつだ。
【POINT 4】 絵を飾るときは、フレームに入れる。有名な画家の作品でなくとも、気に入った絵や布などは額装して飾るとインテリアとしてなじみやすくなる。絵に合う額縁を考えてオーダーするのも楽しい。写真は素朴な宗教画の板絵を、オーダーした木の額に入れた。
【POINT 5】花で彩りを添える。「一本でも花を飾ると部屋のアクセントになります」と真美さん。小物で色を取り入れる勇気がなくても、花ならすぐにチャレンジできる。「ホテルの花の飾り方などは常にインプットして」。日頃からの勉強も大事。
旅先でいいなと思ったものがあれば「どこでつくっているの?」と生産者を聞いて出向いたり、作家に会いに行って購入することも少なくない。ものの大小を問わず、旅では必ず何かを買って帰る。「買わないと忘れちゃうし、好きだっていう気持ちも相手に伝わらないでしょう?」。そうした出会いを通して、真美さんはものや人を見る目を養ってきた。コーナーごとに置いた家具は、信頼するディーラーを通して購入したヴィンテージばかり。どこで使われて、どんな人の手を渡ってきたのか。ものが持つ背景をこそ大事にしたいという。
【POINT 6】棚にも色柄を入れてみる。造り付けの白い棚には、本だけでなくアクセサリーや小物なども置いている。さらにその下にイカットを敷くことで、グッと締まった印象に。立てかけてある本の上には、エルメスのハンカチーフをさりげなく。
【POINT 7】グラデーションでまとまりをつくる。寝室は、夫がよく眠れるようにと選んだ深い青色のカーペットに合わせて、コンフォーターケースや枕、ベッドカバーなどを同系色のグラデーションでまとめている。同系色なら刺繍などの柄ものも合わせやすく失敗がない。
そんな多様な物語や思い出のあるたくさんのものを、ごちゃごちゃせずにセンスよくまとめるコツを聞くと、「買ったものをただ置くのではなく、ひと手間かけること」だという。絵や布のようなものなら額装する。鉢植えの植物なら、気に入ったプランツカバーに入れ替える。日本の規格に合わない照明器具なら、業者を呼んで取り付け工事をしてもらう。そのひと手間から、また新しい物語が始まる。
【DATA & PROFILE】
【PROFILE】
じん・まみ/〈ルシファーリサーチ〉代表。ロンドンで出会ったインド産のドレスに惚れて2003年に〈ヌキテパ〉を創業。インドの生産者と協働しながらライフスタイルブランドを運営。
【DATA】
人数:2人暮らし
築年数:24年
居住歴:12年
所在地:東京23区 駅徒歩8分
(Hanako1209号掲載/photo : Keisuke Fukamizu text : Yuka Sano)
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