【私を創った音楽の歴史。】Awich『心の闇を吐き出し、それがアートになり、強さになる。』
Hanako.tokyo / 2022年8月7日 18時0分
令和の音楽シーンで活躍するミュージシャンたちは、どんな「日本の音楽」を聴いて育ってきたのか。記憶の最初にある音楽から、活動の原点まで、そのルーツに迫ります。今回は、Awichさんにお話を聞きました。7月28日(木)発売Hanako1211号「J SONGBOOK 日本の音楽を学ぼう!」よりお届けします。
最初に好きになったのはSPEEDとDAPUMP。世代が一緒だし、私も沖縄で生まれ育っているし。当時は沖縄アクターズスクールの全盛期。私もステージに上がりたくて、親に「アクターズスクールに入りたい!」と言ったら猛反対。父が厳しいんです。高校で生活指導の先生をやってるので。ラッパーになると決めたときも超激怒されましたから。
その後、小6の頃にCoccoにドハマリ。心の奥底を覗くような歌詞にめちゃくちゃ共感したんです。というのも、私は小3の頃からずっと詩を書いていて。何か得体の知れない不安がいつもあって、それを言葉にして綴っていたんです。吐き出した闇が、アートになり、強さになる、それを教えてくれたのがCoccoさんだったんです。
SPEED『Starting Over』/1997年発売のファーストアルバム。累計出荷250万枚の大ヒット。MAX や安室奈美恵に続く「沖縄ブーム」を盛りあげた。
Cocco『ブーゲンビリア』/1997年発売のファーストアルバム。心の奥底をえぐり出すような内省的でインパクトの強い詞が美しいサウンドと歌に乗った名作。
ラップに出会ったのは14歳の頃。当時、ヒップホップがブームになり、いろんなところでラップを聴くようになって。私は、小4の頃から米軍基地で英語を習っていたので、その頃には結構しゃべれるようになっていて。本場のラップを聴いてみたいと思ったとき、出会ったのが2Pac。のめり込みました。書きためた詩をもとに、英語と日本語を交ぜてラップをやるようになって。英語の先生の前でも披露して、「I’m a rapper!」って言ったら大ウケ。先生たち、全員クラブのセキュリティだったりするから(笑)、「そんなに好きならこのイベントに出ろ、このレコード屋へ行け」と教えられて。そこからラッパー人生が始まったんです。
いま、日本のヒップホップは沖縄勢がめちゃめちゃ熱い。OZworldとか唾つば奇きとか、本格派が多いんです。それはやっぱり、アメリカへの思いが強いからだと思う。いろんな問題をはらんでいても、フェンスの向こう側に憧れる気持ちは拭えない。私には14歳の娘がいますが、通っていた小学校の隣に普天間基地があって、校庭にヘリの部品が落ちたこともあるんです。でも、私は、被害者になりたくないし負けたくない。だからこそ、英語がしゃべれるようになろうと思ったし、アメリカの大学にも行ったんです。娘もそうやってポジティブに生きてほしい。私にソックリで勝ち気な子ですけどね。
【J SONG HISTORY】
10歳の頃、SPEEDとDA PUMPがデビュー。ステージで歌って踊ることに憧れる。
11歳の頃、Coccoの「強く儚い者たち」に衝撃。自分と近いものを感じ、アルバムを聴き倒す。
14歳の頃、TSUTAYAで2Pac『All Eyez on Me』をレンタルして衝撃。ラップにハマる。
Profile…Awich(エイウィッチ)
1986年、沖縄県生まれ。14歳でラップに開眼。芸名のAwichは本名の亜希子を「Asian Wish Child」と訳して命名。2006年、EPデビュー。その後、渡米しアメリカの大学へ。21歳で結婚・出産を経験、その後帰国。2016年より日本での活動を再開。2022年、一人娘をフィーチャリングしたシングル「TSUBASA」を発表。夢はグラミー賞受賞。
(Hanako1211号掲載/photo : MEGUMI styling : Masataka Hattori hair & make : Chihiro Yamada text : Izumi Karashima)
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